チョイス間違えたわ…って気まずそうなカップルがいた映画
「ルナシー」
2005年。チェコ。ヤンシュヴァンクマイエル監督。
ヤンシュヴァンクマイエルはチェコを代表する作家でアニメーションが有名。シュルレアリスムの芸術性が高い作品が多い。
「ルナシー」はまず監督自身が冒頭に出演し、
これはただのホラー映画だ。芸術を期待してるなら帰れ!
と本当に言う。細かい部分は異なるが 要するにこういうことを言っていた。
カップルはこの時点で帰るべきだった。でも暗くなった静寂に沈む映画館で「…帰る?」「うーんどうしよう?」みたいなやり取りはしづらい。
ヤンシュヴァ(長いから略す)ももっと明るいうちにBGM代わりにいまの発言を流してくれていれば良かったのに。
帰れ、帰れ、帰れ…と流れ続ける映画館。めっちゃ怖い。
チェコ映画、ということでミニシアター系のおしゃれ映画を想像していたのだろうか。
だが国の政治主義の影響が色濃く残るような重くシュールな作品が多いイメージだ。もしかしたら日本に輸入されるものは意図的に選ばれているのかもしれないが。
私と友人は ヤンシュヴァの作品を観て愛情を込めて「わ~やっぱり映画館で観なきゃ良かったね~!」と盛り上がりたいがために映画館に赴いていたので(歪んだ愛情)冒頭のヤンシュヴァさんの帰れコールには一層盛り上がったのだが。
内容は宣言どおりホラー。
主人公は精神病院に入っていた母の死をきっかけに同じ入院患者である男と出会い、引き起こされる幻覚と狂気に翻弄される…
幻覚の映像表現は美しさすらあり、ホラー映画(サスペンスといってもいいかも)としても面白かったのだが、私はカップルが気になって仕方なかった。20代前半か、10代でもおかしくないような若いカップル。
初デートだったら…?どちらかが、チェコだしおしゃれそう!みたいな理由で誘ったものだとしたら…?
上映後、私は思わずカップルを見やった。
一言も話さず目も合わせていない。
まずい。これは「おしゃれそう」でリサーチせず来てしまったパターンだ!!
まずい。なんて私が思っても知り合いではないから何のフォローもできない。ただただカップルの背中を見送ることしかできなかった。
せめて「映画館で観なきゃ良かったね~!」と私と友人のように盛り上がってくれていたことを願う。
※ヤンシュヴァンクマイエルをディスりたいわけではございません。映画史及び芸術史に残る偉大な作家です。
つけヒゲに憧れているのでつけヒゲ資金に充てたいです。購入の暁には最高のつけヒゲ写真を撮る所存です。