見出し画像

新入社員オンボーディングで大切にしていること(5つの壁について)

新入社員のオンボーディングや研修(特に入社直後のフェーズ)の設計において、大切になるのは関係性向上や知識の吸収を促進するための下地作りです。

そこで、今回はより良い下地を作るために受け入れる側と受け入れられる側が一緒に越えていく必要のある「」について書きたいと思います。


そもそも、オンボーディングとは何か

オンボーディングとは、乗り物に乗っていることを意味する「on-board」を由来とし、新しい仲間の順応を促進する取り組みです。人事用語では、新しく会社・組織に加わった人材にいち早く職場に慣れてもらうことで、組織への定着・戦力化を促進するための取り組みのことを指します。

オンボーディングとは? 目的・導入方法・実施のポイント・事例


オンボーディングを阻害する「5つの壁」

① コミュニケーションの壁
② 移行の壁
③ ルールの壁
④ スキルの壁
⑤ リアリティの壁

越えていかなければならない壁の優先順位は「①コミュニケーション②移行③ルール④スキル⑤リアリティ」となります。

それでは、それぞれの壁について見ていきましょう。


① コミュニケーションの壁
ここではコミュニケーションコストの高さを壁としています。
特に関係が深くない人に対してのコミュニケーション(とりわけ伝えにくいことを報告・相談するとき)はコストが高くなります。

受け入れる側にも受け入れられる側にも「積極的にコミュニケーションを取ってね」と声をかけてしまうこともあると思いますが、それができるならお互いに言われるまでもなく実行しているのではないでしょうか。

大切なのは入社直後に確実にコミュニケーションを取れる機会を設定してしまうこと。とりあえず飲み会などのイベントを企画すれば良いというわけではなく、双方向のコミュニケーションが発生するように場をデザインする必要があります。また、やりっぱなしにせずに一定のペースで継続することも重要です。

新入社員に過去に所属した組織へのオンボーディング経験を聞いてみて、「こういうことに困った(るかもしれない)」といった内容を開示してもらうのは有効です。その際は一方的なヒアリングにならないように、受け入れ側も「自分も社会人になったばかりの時はこういうこと困って…」と開示するようにしましょう。

研修ではこのようなワークを行いました。

コミュニケーションコストを低くしていくことは、残りの4つの壁を乗り越えていくためにも必要となります。


② 移行の壁
ここでは学生から社会人への生活リズムやマインドの移行(アップデート)を壁としています。

生活リズムは受け入れ側で直接コントロールをすることはできませんが、面談などの機会を通じて、「学生時代はどのような生活をしてきたのか」「(就職とともに一人暮らしを始めた方は特に)生活するうえでの悩みや配慮すべきことはないか」を差し支えのない範囲で聞いていきます。双方で共通の課題として認識できるようになることを目標にします。

マインドについての最終的なゴールは「自ら気付いてもらうこと」となりますが、そのための前提となる知識は研修などを通じて養っていきます。よく「学生気分(が抜けていない)」という言葉を耳にしますが、こちらは言葉の定義を自分たちで行なったうえで、マナーとして扱うことができると思います。

ちなみに僕の思う「学生気分」とは、「本来わざわざ指摘する価値の行動全般」のことを指しています。指摘している時間にもそれぞれにコストは発生しますが、それは「今後より良くなる」という前提があってのこと。

例えば居眠りを注意して、改善されたとしても、本来就業中に寝ないのは当たり前のことなので、お互いにとって何かがプラスになることはないです。

(個人差はありますが)昼休みに炭水化物を明らかにたくさん摂取すれば、休憩終了後に眠くなることは予想できます。コストの話をしたうえで、マナーとして「事前に回避できることについては意識して行動しようね」と事前に合意を取るようにしています。


③ ルールの壁
ここでは社内ルールにおけるOK・NGと暗黙の了解の存在を壁としています。

何をして良くて、何をしてはいけないかがわからないと、ポジティブなアクションの発生も阻害してしまうことになります。まずは社内規定の読み合わせを行い、解釈についてすり合わせをするところがスタートとなります。

大切なことは後出しジャンケンにならないこと(暗黙の了解についても同様)。「実はルールで決まっていて」と後から言われたら「最初に言ってもらえたら、そんなことしなかったんだけど…」とモヤモヤしませんか。

そのようなことになってしまった場合は、事前に伝えられていなかったことの落ち度を認めたうえで、どのように行動して欲しかったかを伝えましょう。


④スキルの壁
ここでは自己効力感の低下を壁としています。

オンボーディングや研修期間は、どうしても受け入れられる側への情報量が多くなりがちです。特にスキルの面において「いつまでに」「どれくらい」習得する必要があるのかわからないと、「自分はできていないのではないか」と不安を生じさせる原因になります。

情報を伝える際に達成基準を明確化すること、サポートを惜しまないことを伝えることが大切ですが、それ以上に重要なのは「自己評価をさせないこと」です。

個人差はあると思いますが、基準が身に付いていない状態で自己評価をさせてしまうと、不必要に出来ていないと落ち込む、あるいは出来ていると勘違いしてしまうケースにつながります。フィードバックのスキルや、受け入れ側との関係性も大切ですが「この人に言われたなら」と相手に納得感があるかが一番のポイントになります。


⑤ リタリティの壁
ここでは入社前の期待感と入社後の現実のズレを壁としています。

選考において、どれだけすり合わせられたかという前提はありますが、新卒・中途関係なく程度の差はあれど、新しい環境において「こんなはずじゃなかった」と感じることは誰にでも起こりうることです。

ヒアリングを通じて、「モヤモヤしていること」の有無や、「自身がモチベーションを感じる要素」を活かせているか(そうか)といったポイントを押さえたうえで、あらためて期待値の調整をしていくことが大事です。


おわりに

今回の5つの壁について、受け入れ側のポイントを中心に見てきましたが、オンボーディングを促進するためには受け入れられる側の主体的なアクションも必要となります。オンボーディングの成功を目指すためにも、お互いが動きやすい環境を一緒に作るという視点を大切にしていきたいですね。


この記事が参加している募集

#人事の仕事

4,059件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?