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【探究の時間】地元高校生と観光まちづくりについて考える(後編)

前回は、SWOTとクロスSWOTでのワークについて記載しましたが、探求の時間に関するアンケートとワークの中でアイデアとして記入されたコンテンツについて書いてみようと思います。


クロスSWOTでコンテンツ造成と結果

-32個のコンテンツを造成!

140名27チームで5チームくらいはコンテンツを書けたらという目論見は、うれしい結果となって現れました。内容に濃淡はありますが、32個のコンテンツがシートに書かれたことは、この短い時間で大きな成果と言ってよいでしょう。大学生でも課題によっては頭を抱えるクロスSWOT分析ですが、躊躇しないところに学びの探究心の深さを見ることができました。

クロスSWOTにチャレンジ中

-クロス4パターンの組み合わせ

まず、クロスした4パターンを数で分けると以下の通りでした。

  • 強みx機会  11

  • 強みx恐れ  11

  • 弱みx機会   7

  • 弱みx恐れ   3

計32個ですが、強みかかわるコンテンツが多いのは一般的な傾向でもあり、竹原市のよさがより多くアイデアに含まれています。弱みにかかわるコンテンツは防御(守り)のプランが問われますが、逆転の発想ができるかどうかに関わってくるでしょう。

-テーマごとの仕分け

テーマを5つ(観光コンテンツ・情報伝達・受入態勢・移住定住・物販)に分けると以下の通りとなりました。

  • 観光コンテンツ  16

  • 情報伝達      8

  • 受入態勢      4

  • 移住定住      2

  • 物販        2

やはり、観光まちづくりなので、コンテンツ造成が一番アイデアが出まして、プロモーションやSNSを活用した情報発信が続きました。

-32個をご紹介します

地元の高校生が考えてくれたコンテンツ32個を以下で紹介いたします。

クロスSWOT 例1

観光コンテンツ 16案

学生主催の観光案内を行う        強みx機会
観光客に料理を振る舞うコンテンツ    強みx機会
空き家を使った観光スポットを開発    強みx機会
老人ホームで交流会           強みx恐れ
祭りで伝統料理を紹介する機会を設ける  強みx機会
自然と触れ合える施設を作る       強みx恐れ
酒まつりを開催             強みx機会
竹原の特産物を使ったレストランを開く  弱みx恐れ
観光スポットを増やす          強みx機会
シャッター商店街を娯楽施設にする    弱みx機会
星空観光ツアー             弱みx機会
新しい店を増やす            弱みx機会
おいしい海鮮料理を作る         強みx恐れ
吉名のジャガイモを使ったポテト     強みx恐れ
外国人向け観光ツアー          強みx機会
地域の人と交流を深めるイベント     弱みx機会

観光コンテンツでは、飲食にかかわるアイデアが多数でました。市内のレストランには、地産地消を謳い名産品を使ったメニューを用意していますが、まだ、もっと強いイメージのメニューが必要かもしれませんし、PRや情報発信が不足しているかもしれません。また、弱みを意識したコンテンツは、天候が良く晴天の日が多い感じのする竹原ならではの夜のアクティビティを意識する星空観光ツアー、人口減少や少子高齢化を意識し逆転の発想で地域の人と交流を深めるイベントがアイデアとして出されています。

情報伝達 8案

大久野島へ観光客を誘導する       強みx機会
大久野島のPRを増やす ①        強みx恐れ
大久野島のPRを増やす ②        強みx恐れ
有名人に観光スポットを広めてもらう   強みx機会
竹原の水をPRする            強みx恐れ
竹原新聞をつくる            強みx機会
竹原の風景の写真集を作る        強みx恐れ
新聞などで新しく引っ越しする人に宣伝  弱みx機会

竹原での人気観光地”大久野島”をよりPRするアイデアが多く観光客を増やすために強みを生かしたい気持ちが感じられました。弱み関連は唯一移住定住者向けへの情報提供で竹原での生活を楽しんでもらいたいやさしさが感じられます。

受入態勢 4案

クロスSWOT 例2

祭りを増やして電車の需要を増やす    弱みx機会
海の近くに宿泊施設を建てる       強みx恐れ
タクシー代行サービス          弱みx恐れ
免税店をいっぱい作る          強みx機会

受入態勢のアイデアは、外的要因をいかにしてうまく活用するかを表しています。人がたくさん集まる祭りの機会を増やすことにより、弱みである交通アクセスを改善するアイデアや、高齢者が多かったり観光客向けの移動手段で2次交通の重要性を理解しているグループもありました。

移住定住 2案

外国人に移住提案            強みx恐れ
移住者を呼び込む            弱みx恐れ

強みと弱みの両側面で同じようなアイデアがでましたが、外国人観光客の多さから移住地としてチョイスしてもらうという意識と空き家が多いという理由での移住者の呼び込みですが、どちらも人口減少の恐れを克服するための危機感からだと思われます。

物販 2案

クロスSWOT 例3

竹グッツをオンライン販売        強みx恐れ
外国人にきてもらって、         強みx機会
町並みの有名なものをいろいろ買ってもらう

物販に関してはどちらも町並み保存地区を想定したアイデアでした。
体験型店舗の竹細工商品をオンライン販売したり観光客が訪れる町並みや道の駅での物販販売の強化をすることで弱みである知名度の向上を克服したいことと、円安を利用して外国人に購入してもらい意識がありました。

アンケートの振り返り

-アンケート項目

終了後、学校の先生にお願いして生徒さんたちにアンケートを記入いただきました。お聞きした項目は3つ。

  • 今日の学びを教えてください。(新しい発見、いいなと思った意見など)

  • 今日から行動を変えようと思ったことを教えてください。(意識してみたいポイント、調べてみたいと思ったところなど)

  • DMOへの質問箱(今日の内容でよくわからなかったこと、発表したかったけどできなかった意見など)

上の2つの質問の回答からいくつかピックアップしてみました。

  • 竹原市内の観光スポットで意外と知らないところが多かった。

  • 思ったより竹原にはよい(強み)がたくさんあることを知った。

  • SWOT分析で、竹原の強みや弱みを知ることができた。

  • インターネットを使ってもっと竹原のことを調べたくなった。

  • SNSで、竹原についてたくさん発信したい。

  • 竹原だけではなく、自分の住んでいる地域の良さをみつけていきたい。

  • 今の竹原に足りないものが何か調べてみたい。

  • 竹原には強みもたくさんあるが、弱みもあることを知った。

  • 地域のために取り組んでいきたいと思った。

  • 自分の強みや弱みをみつけて行動に移したい。

短い間のSWOTとクロスSWOTの時間でしたが、多くの気づきがあり、チーム内で共有できたことが生徒さんたちお互いの刺激につながったのではないかと思いました。また、調べたい。発信したい。みつけたい。取り組みたい。など主体的に何か行動したいという気持ちが芽生えたところは、我々DMOとしても地元の高校生に寄り添いながら思いを実現できるように手助けできる機会があればと思っております。

-生徒さんからDMOへの質問

DMOへの質問箱には、質問以外も含め23件届きました。そのうち、いくつかをピックアップいたします。

  • 町を明るくするためになにを実施すればよいでしょうか。

  • どうすれば竹原を知ってもらえますか。

  • 今の仕事でのやりがい、うまくいかなかったことはなんですか。

  • 企業が竹原のために行っている取組とは?

  • 竹原が世界に広まったら何がしたいですか。

  • DMOの今後の活動計画について。

  • DMOが思う竹原の最大の魅力、課題を教えてください。

  • 何で竹原のためにそんなことしようと思ったのか。

  • DMOは竹原市を活性させるためどんな取り組みをしているのか知りたい。

  • 竹原の魅力の伝え方。

  • DMOが竹原を変えるためにしていることとは。

主体的に実行するためのアドバイスを求めているもののほか、魅力の伝え方や情報発信の方法などすぐにアクションできるようなことにも相談いただきました。特にDMOの業務内容についていくつか質問いただけたことは、とてもうれしいかぎりで、地元出身の若手が、将来、DMOで働いてみたい、一緒に行動してみたいと少しでも思いが芽生えてくれるのが我々の一つのミッションでもありましたので、まずは興味を持っていただいたのは前進したところであります。

最後に

今回、SWOTとクロスSWOTを高校生向けに1時限で、観光まちづくりに関する課題の抽出とコンテンツ造成による解決策を探ることまで行い、当初は140名以上27チーム相手にどれだけできるか、まとめられるか、という不安もありましたが、実際は、生徒それぞれがしっかり受け止めてすごく積極的なワークに発展することができました。アンケートの振り返りをひとつひとつ丁寧に見返しながら、チーム内で気づきを共有でき、学びへの関心やアクションへの意欲が沸いたことは一定の評価はできたかと思います。反省点としては、内的要因(環境)、外的要因(環境)についてよりじっくり考え、クロスSWOTで生徒たちにもっと寄り添えればよかったと感じました。
DMOの役割を理解してもらいながら竹原の未来を担う地元高校生の意見を幾度も修正と味付けを繰り返し具現化し、未来に夢と希望をもたらすことができるかが我々の最大のミッションのひとつであることを痛感した次第です。今回のワークショップの経験は、多くの気づきを与えてくれた参加された生徒さんたちの思いを日々忘れずに業務の中で大切にしていきたいと思っております。
最後に、県立竹原高校の校長先生や教頭先生、先生方と職員の皆様に温かく迎えていただき見守っていただきましたことを心より御礼申し上げます。