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藤井聡太二冠とAIの共生からこれからのヒトの成長を考える

安藤 健/ロボット開発者

将棋にはあまり興味がないのですが、流石に最近はニュースになることも多く、たまに見たりもしています。

藤井聡太さんが二冠になったということで、彼のコメントの中でAIに関するものが目に止まりました。

少し前のインタビューの中で、『棋界はAIとの共存期にあるが』という質問に対して、彼は以下のように答えています。

「数年前にはソフトとの対局が大きな話題になりましたけど、今は対決の時代を超えて共存の時代に入ったのかなと思う。プレーヤーとしてはソフトを活用することで、より成長できる可能性がある。ファンの方も楽しみの一つにしていただけたら」

確かにAI搭載のコンピュータとプロ棋士が対戦し、コンピュータが勝ったみたいなニュースが割と多かった気がします。こんな本が出るくらいです。

藤井二冠自体はあまりコンピュータ将棋はおこなっていなかったようですが、世代的には子供の頃から周りにコンピュータ将棋があるようなネイティブ世代だと思います。そんな彼が「今」からAIとの共存の時代に入っていくと言っているのは非常に面白いことだなぁと思いました。その真意は私には図りかねますが、AIがヒトに勝つような機会がそれなりにあるということは、プロのTOP棋士にとっても十分自分を成長させるだけの能力がAIにあるのは間違いないのでしょうね。

AIによるヒトの学習・成長

AIによるヒトの成長という言葉で思い出す私自身の思い出があります。詳細は以下の論文に纏めたのですが、ヒト機械相互学習型車いすというのを作ったことがあります。

安藤他、複数動作の識別における人の学習戦略* (人・機械相互学習を用いた足制御型電動車いすの事例)、日本機械学会論文集、2013

自分の研究の中では思い入れも強く、好きな研究でもあります。ただし、全く引用されない悲しい研究でもあります。。。

この研究の中で目指したのはシンプルで、身体を自由に動かせない重度の障害があっても、動かせる動作から複数の動作を割り当ててあげれば、道具(この研究では車椅子)を自由に操れるようにできるはず、ということでした。

この『動かせる動作から複数の動作を割り当ててあげれば』というところに、今で言うAI、この研究では自己組織化マップ、を使っています。

更にもう一つ仕掛けを入れてあって、AIの認識結果が利用者にわかるようにしていました。もちろん、車椅子に乗っているときには認識結果は車椅子の動作に直結するので、車椅子の動きを見ればどのようなにAIが認識したかはわかりますし、車椅子に乗る前の練習段階でも認識結果を利用者に伝えることをしていました。専門的にはバイオフィードバックというものになります。

このバイオフィードバックを行うことで、自分がどういう動作をするとAIはどう認識するかがわかるので、自分で動作をこう変えると認識結果もこう変わるのか、少し動作を変えてこうするとこういう風に認識されやすくなるのか、ということを人間側が試行錯誤的に学習できるようになります。もちろん、AI側も必死にヒトの動作特徴を学習しようとします。ヒトもAIもどちらも学習しようとするので、相互学習と呼んでました。

学習の仕方は勝手に決めてはいけない

この相互学習の実験を行って最も勉強になったのは、ヒトの学習の仕方というか学習の方向性は周りが決めてしまわない方が良いんだなということでした。

上記のような車椅子の実験を行ったとき、ヒト側が取る戦略は大きく二つに分かれました。例えば、ヒトの動作を3つに分類しようとしたときには、

・3つの動作を出来るだけ違う動作にすることで識別しやすいような方向性にもっていく戦略(論文では独立戦略)
・3つの動作にそれほど大きな違いがなくても、それぞれの動作の再現性を高くして、バラツキをなくすことで識別しやすい方向性にもっていく戦略(論文では収束戦略)

の2つが存在していました。どちらの戦略を選ぶかはヒトそれぞれで健常者の場合は、だいたい半々でした。性格とかにも依存するのかもしれません。もちろん、どちらを選択するかは個人の性格といった心理的な要因だけでなく,関節の可動域,関節抵抗など動作のし易さといった身体的な要因やAI側のアルゴリズムや相性などの要因もあると思います。

一方、重度の障害(特に不随意な動作が生じる障害)がある方の場合には、「勝手に」独立戦略を選ぶ場合が多いんだろうなと思っていました。それは、不随意な動作が随意的な動作に混ざってしまうため、収束戦略のように動作を再現性高くすることは難しいだろうし、それだったら違う動作をする方向にもっていった方が容易ではないかという予想があったからです。

しかし、1名の重度脳性麻痺がある方に協力していただき、この実験を行った場合には、採用された戦略は「収束戦略」でした。そして、見事に車椅子をコントロールしました!

そのときにかなりハッとしたんですよね。何を勝手に決めつけていたんだと。もちろん研究なので仮説を持つこと自体は悪いことではないと思っています。ただし、そのような仮説はいつの間にか思い込み、先入観、そして固定観念に繋がっていた気もします。学習の仕方をこちらが勝手に決めつけて、可能性を狭めてしまっていたとしたら、申し訳なかったなとも思います。

これまでヒトがヒトに教える場合は、もちろんこれまでたくさんの知見が蓄積されて、ある程度パターン化することもできたかもしれません。それでも一人一人の対応が重要になっていたはずです。

ましてや、これからヒトとAIが共存する社会、ヒトとAIや機械がお互いに学び続ける時代において、新しい学習の仕方、考え方がドンドンとでてくるんだと思います。決して大人が勝手に学習や成長の決めつけることなく、みんなが思う存分成長していける社会になれば良いなぁと思います。

というわけで、少し脱線しましたが、藤井聡太さん、二冠おめでとうございます!!

では、また来週~。

安藤健@takecando

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安藤 健/ロボット開発者

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安藤 健/ロボット開発者
早大理工、阪大保健の教員経て、パナソニックロボ推進室室長。ヒトと機械の関係、Well-beingに興味有。AugLabリーダhttps://bit.ly/2YojcP1、日経クロステックやDIGITALXでロボット連載あり。ホントはロボよりヒトが好き。個人の意見です