レポート「Trio Rizzle meets」2/16トッパンホール
トリオ・リズルがイリア・グリンゴルツと共演
「その音楽がまさにその場で生み出されているかのような新鮮さがありました」毛利文香(Vn)
トリオ・リズル
毛利文香(ヴァイオリン) 田原綾子(ヴィオラ) 笹沼 樹(チェロ)
圧倒的な技術力と高い音楽性
2月13日、トッパンホールにて無伴奏作品を集めたリサイタルを行い、ため息が漏れるような演奏を聴かせたイリア・グリンゴルツ。圧倒的な技術力と高い音楽性。けれどもそれらはすべてが自然で心地良く、作品それぞれの魅力を引き出し、存分に楽しませてくれた。
2月13日に行われたイリア・グリンゴルツ「無伴奏」のプログラムhttps://www.toppanhall.com/concert/detail/202402131900.html
その3日後、同ホールにて行われたのが毛利文香、田原綾子、笹沼樹によるトリオ・リズルとの共演の「Trio Rizzle meets」だ。グリンゴルツがトリオ・リズルとどのように融合し、どんな音楽を奏でるのか、期待を高めた。
トリオ〜クァルテットのプログラム
プログラム前半はトリオ・リズルでシューベルトの弦楽三重奏曲第2番、ヴェレシュの弦楽三重奏曲。毛利が旋律を伸びやかに奏で、笹沼が低音を支え、田原が音楽的な深みを加える。ヴェレシュは3人の緻密な音楽作りが演奏に表れていた。
後半はグリンゴルツが加わり、シルヴェストロフの弦楽四重奏曲第1番、プロコフィエフの弦楽四重奏曲第2番《カバルダの主題による》が取り上げられた。カラーがガラッと変わるのかと思いきや、トリオ・リズルの持ち味を活かしつつ、色彩が豊かに、そして演奏に奥行きが加わったような印象。「無伴奏」同様、誇張することなくどこまでも自然だ。各々が演奏を楽しんでいる様子がうかがえた。
2月16日に行われた「Trio Rizzle meets」のプログラム
https://www.toppanhall.com/concert/detail/202402161900.html
イリア・グリンゴルツとの共演について〜毛利文香にメールインタビュー
コンサートの後日、イリア・グリンゴルツとの共演について毛利にメールインタビュー。リハーサルやコンサートで感じたことなどを聞いた。
Q イリア・グリンゴルツの演奏を聴き、どのような印象を受けましたか?
毛利 音楽的にも技術的にも非常にハードルの高い作品が並んでいましたが、プログラムが進めば進むほどますます集中力が高まっていき、グリンゴルツさんのものすごいスタミナと圧倒的な技術力に改めて驚愕しました。また、彼はそれらを派手に見せびらかすようなことは絶対にせず、どの作品とも真摯に向き合い、その本質をストレートに伝えるストイックな演奏で、聴衆の集中力も吸い寄せられるように高まっていたのがとても印象的でした。
Q リハーサルはどのように進められたのですか?
毛利 グリンゴルツさんも含めて全員初めて演奏するプロコフィエフのクァルテットからリハーサルを始めたのですが、グリンゴルツさんの音の求心力がとても高く、自然と私たちの音の濃度も上がる感覚がありました。彼は大きく動いたりアイコンタクトをたくさん取るタイプではないのですが、やりたいことは音色や呼吸からして明白かつ自然で、最初から他三人もそこへ容易に集まることができたように思います。
シルヴェストロフの作品は即興的な部分もあり慣れるまで少し大変でしたが、すでに演奏経験のあるグリンゴルツさんからアイディアをいただきながら、作品に対する四人のイメージの方向性を揃えていくことができました。
Q グリンゴルツと共演し、感じたことは?
毛利 グリンゴルツさんの演奏には、本番においても良い意味でリハーサルと変わらず安定感があり、さらにそれと同時に、その音楽がまさにその場で生み出されているかのような新鮮さもありました。
彼はどの作品もスコアを見ながら演奏されていて、いつも他のパートや楽曲全体の構成をよく把握していらっしゃるのですが、そのようなしっかりとしたベースと緻密さがあるからこそ、本番でのインスピレーションや共演者との化学反応を逃さない敏感さを持つことができるのだと感じました。
イリア・グリンゴルツ
https://www.toppanhall.com/concert/artist/GRINGOLTS_Ilya.html
トリオ・リズル
取材協力/トッパンホール
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