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天文仮想研究所(Virtual Space Program:VSP)創立5周年記念イベント訪問記 2日目 02

天文仮想研究所(Virtual Space Program:VSP)は、仮想現実(Virtual Reality:VR)空間で活動する宇宙同好会(任意団体)である。

VR技術を用いて天文学や宇宙開発等に関する活動を行い、参加者の興味・関心を高めるとともに、天文学や宇宙開発を楽しむことを目的としている([1])。


2024年10月12~14日、VSPはVSP創立5周年記念イベント(以下同イベント)を開催した([2])。私も一般客として参加した。


2日目(10月13日)には、「VSPライトニング トーク会」、「望遠鏡超基本入門編」、および、「プラネタリウム特別投影会~秋の星空~」の3つのプログラムが催された。

いずれの内容も興味深く、かつ、魅了させるものであった。もっとも、「プラネタリウム特別投影会~秋の星空~」には、定員オーバーにより参加できなかった(泣)。

 

以下に、各プログラムの報告を示す。

 

01.「VSPライトニング トーク会」([3])

この中でのトークは以下に示す通りである。

1. コスモ長明(以下敬称略)/八翼重工―超音速機の小説設定 妄想集。

この小説では、高度10~100 kmを超音速で飛ぶ飛行機である「凌空機(りょうくうき)」(図02.01)、「全日本凌空選手権大会:ETHER-FORMULA」(図02.02)、凌空システム統合実験機「FTB-0」(図02.03)、および、全日本凌空選手権大会に出場する大学が使用するジェットエンジン(図02.04,図02.05)が言及されている。

図02.01.舞台設定。
図02.02.「全日本凌空選手権大会:ETHER-FORMULA」。
図02.03.凌空システム統合実験機「FTB-0」。
図02.04.皇都大学:予冷ターボ ジェット エンジン。
図02.05.アサネバナ工科大学:モータ・ラム ジェット エンジン。


2.とろっと―事例紹介:SORA-Q Thank You アンバサダー参加報告。

これは、株式会社タカラトミーが実施するイベントにおいて、秩父ミューズパークがアンバサダーとして選出され、08月12日19時00分にSORA-Qを展示できるようになった顛末の報告である(図02.06,図02.07,[4])。そのイベントの来訪者は無記名者を含めて100人超で(図02.08)、現在では第2、4土曜日にミニ操作体験が催されている(図02.09)。

図02.06.SORA-Q。 「クレジット:JAXA/タカラトミー/ソニーグループ/同志社大学」。
図02.07.SORA-Q flagship model。
図02.08.リザルト。
図02.09.現状。


3.ぐま―オパーリン「生命の起源」 発表100周年!なぜ我々は血眼になってハビタブル ゾーンにある惑星を探しているのか?

これは、アレクサンドル・オパーリンの「生命の起源」発表100周年を祝うもので、最初に、オパーリンの化学進化仮説(図02.10,図02.11,[5]のp.36-42)、ユーリー-ミラーの実験(図02.12,5のp.50-55)、および、プロテノイドミクロスフィア(プロテノイド微小球)(図02.13,5のp.58-61とp.71-72)が紹介された。また、最近の化学進化説(図02.14)も紹介された(5のp.75-77,p.121-126,p.127-143,[6],[7],[8])。

図02.10.オパーリンの化学進化仮説。
図02.11.「化学進化仮説とは?」。
図02.12.化学進化説を支持する実験結果(1)。 
図02.13.化学進化説を支持する実験結果(2)。
図02.14.最近の化学進化説。

ハビタブル ゾーン(生命居住可能領域)にある地球の様な岩石型惑星に生命が存在するとされる(図02.15,[9])が、エウロパ、エンセラダス、および、タイタンの様のハビタブル ゾーン外に生命がいると思われる衛星もある(図02.16,5のp.202-219,[10])。

図02.15.ハビタブル ゾーンにある惑星。
図02.16.例外:ハビタブル ゾーン外の生命が居そうな場所。

ハビタブル ゾーンの研究は移住先の研究や地球の気候・環境の研究としても役立つ(図02.17)。

図02.17.「役立つ」ハビタブル ゾーン。

4.kizta―5decades -50年前の宇宙といま-。

これは、以下の1974年における宇宙関連の出来事と2022年以降におけるそれらを比較したものである。

a.1974年01月 コホーテク彗星 地球接近と2024年10月 紫金山・アトラス彗星 地球接近(図02.18)。

図02.18.1974年01月コホーテク彗星 地球接近と2024年10月紫金山・アトラス彗星 地球接近。

b.1974年02月08日 スカイラブ4号帰還と2031年X月X日 ISS大気圏突入(図02.19,[11])。

図02.19.1974年02月08日 スカイラブ4号帰還と2031年X月X日 ISS大気圏突入。

c.1974年02月13日 いて座A*発見と2022年05月12日 EHTによる直接撮影(図02.20,[12])。

図02.20.1974年02月13日 いて座A*発見と2022年05月12日 EHTによる直接撮影。

d.1974年08月30日 オランダ初の人工衛星Astronomische Nederlandse Satelliet打ち上げと2022年09月07日~ X線天文衛星XRISM(図02.21,[13])。

図02.21.1974年08月30日 オランダ初の人工衛星Astronomische Nederlandse Satelliet打ち上げと2022年09月07日~ X線天文衛星XRISM。

e.1974年11月16日 アレシボ メッセージ送信とXXXXX年XX月XX日~ 返信が届く…?(図02.22,[14])。

図02.22.1974年11月16日 アレシボ メッセージ送信とXXXXX年XX月XX日~ 返信が届く…?。


02.「望遠鏡 超基本入門編」([15])

このイベントは、天体観測初心者向けの天体望遠鏡超基本入門であるが、お勧めの観測対象として、月、土星、木星、および、オリオン大星雲が推奨された(図02.23)。

図02.23.オススメの観測対象。


星の探し方として、「今日のほしぞら」([16])、「SkySafari」、および、「Stellarium」([17])が紹介された(図02.24)。

図02.24.星の探し方。


そして、お勧めの初心者向け天体望遠鏡として、コルキットKT-5cm(図02.25,[18])と国立天文台望遠鏡キット(図02.26,[19])が紹介された。

図02.25.コルキットKT-5cm。
図02.26.国立天文台望遠鏡キット。


いずれのプログラムも興味深いものであった。

以下の拙マガジンが示す通り、私の得意分野は生命科学、特に医学・薬学である(但し、大学院修士課程の専攻は微生物科学である)。

しかし、プログラム「オパーリン「生命の起源」 発表100周年!なぜ我々は血眼になってハビタブル ゾーンにある惑星を探しているのか?」を介して、地球46億年の歴史と生命進化、そして、その結果である現在の自然環境に関して更に関心を抱くようになった(私は環境科学にも関心がある)。この意味では、このプログラムに非常に感謝している。

一方で、「望遠鏡 超基本入門編」は興味深い内容であった。但し、欲を言えば、天体観測にお勧めのデジタル望遠鏡・双眼鏡も紹介して欲しかった。

関連マガジン



参考文献

[1] 任意団体 天文仮想研究所(Virtual Space Program:VSP).“概要”.VSP トップページ.天文仮想研究所について.https://virtualspaceprogram.org/about/overview,(参照2024年10月19日).

[2] 任意団体 天文仮想研究所(Virtual Space Program:VSP).“【イベント告知】VSP創立5周年記念イベント(以下略)”.天文仮想研究所 VSP トップページ.2024年10月05日.https://x.com/vsp_vrc/status/1842399316725596371,(参照2024年10月19日).

[3] 任意団体 天文仮想研究所(Virtual Space Program:VSP).“【イベント告知】VSP ライトニングトーク会”.天文仮想研究所 VSP トップページ.2024年10月05日.https://x.com/vsp_vrc/status/1842399562595532906,(参照2024年10月19日).

[4] 秩父ミューズパーク.“月面探査ロボットがやってくる。”.秩父ミューズパーク ホームページ.お知らせ.その他.2024年08月02日.https://www.muse-park.com/other/%E6%9C%88%E9%9D%A2%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%8C%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%80%82.html,(参照2024年10月20日).

[5] 小林憲正 著.生命と非生命のあいだ:地球で「奇跡」は起きたのか.第1刷,株式会社 講談社,2024年04月20日,304 p.(ブルーバックス).

[6] 特定非営利活動法人 科学カフェ京都.“講演資料”.科学カフェ京都(特定非営利活動法人) トップページ.定例会記録(第161回~第170回).池原 健二(生命科学) 科学カフェ京都 第164回定例会 日時: 2019年7月20日(土) 2時~4時30分 話題:『生命起源の謎を解く“三つの鍵”』―GADVタンパク質ワールド仮説―.2019年07月20日.http://kagakucafe.org/ikehara190720.pdf,(参照2024年10月22日).

[7] 国立大学法人 神戸大学 統合研究拠点 惑星科学研究センター.“講演資料1”.惑星科学研究センター トップページ.mosir(動画・資料アーカイブ).2012.宇宙での生命の起原と進化(2).2012年02月19日.https://www.cps-jp.org/~mosir/pub/2012/2012-02-19/01_yamagishi/pub-web/20120219_yamagishi_02.pdf,(参照2024年10月21日).

[8] 日本惑星科学会.“1日目”.日本惑星科学会 ホームページ.惑星科学フロンティアセミナー.これまでに開催された惑星科学フロンティアセミナー.惑星科学フロンティアセミナー2018.講演資料.講義ノート.2019年02月18、19日.https://www.wakusei.jp/meetings/fs/2018/2019-02-18/惑星科学フロンティアセミナー2018“生命の起源”ノート1日目.pdf,(参照2024年10月22日).

[9] 国立大学法人 東京科学大学 地球生命研究所.“ハビタブル ゾーンの包括的な理解:系外惑星で生命の兆候を探すために”.地球生命研究所 ホームページ.ニュース・イベント.研究ハイライト.2018.2018年08月08日.https://wpi.elsi.jp/ja-JP/news_events/highlights/2018/20180808_rramirez.html,(参照2024年10月22日).

[10] シュプリンガー ネイチャー・ジャパン株式会社.“土星の潮汐力が、衛星エンケラドスのプルームを制御”.Nature Japan ホームページ.Nature ダイジェスト.Vol. 10 No. 11.News & Views.https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v10/n11/%E5%9C%9F%E6%98%9F%E3%81%AE%E6%BD%AE%E6%B1%90%E5%8A%9B%E3%81%8C%E3%80%81%E8%A1%9B%E6%98%9F%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%89%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%92%E5%88%B6%E5%BE%A1/48351,(参照2024年10月23日).

[11] 株式会社Tellus.“ISSを2031年に太平洋に落下させる計画をNASAが発表。商用宇宙ステーションへの移行により予算2000億円を削減【宇宙ビジネス ニュース】”.宙畑 ホームページ.ニュース.2022年02月07日.https://sorabatake.jp/25388/,(参照2024年10月23日).

[12] 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台.“天の川銀河中心のブラック ホールの撮影に初めて成功”.国立天文台 ホームページ.ニュース.アーカイブ.研究成果.研究成果:2022年.2022年05月12日.https://www.nao.ac.jp/news/science/2022/20220512-eht.html,(参照2024年10月23日).

[13] 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA).“X線分光撮像衛星XRISM ホームページ”.https://www.xrism.jaxa.jp/,(参照2024年10月23日).

[14] 公益社団法人 日本天文学会.“アレシボ天文台”.天文学辞典 ホームページ.装置・施設・データベース.天文台・研究所・大学.https://astro-dic.jp/arecibo-observatory/,(参照2024年10月23日).

[15] 任意団体 天文仮想研究所(Virtual Space Program:VSP).“「望遠鏡 超基本入門編」VSP設立5周年記念”.天文仮想研究所 Virtual Space Program ホームページ.ライブ.2024年10月13日.https://www.youtube.com/watch?v=0fT4B3gE6ao&t=3s,(参照2024年10月23日).

[16] 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台.“今日のほしぞら”.国立天文台 ホームページ.暦計算室.https://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/skymap.cgi,(参照2024年10月24日).

[17] Stellarium development team.“stellarium ホームページ”.https://stellarium.org/ja/,(参照2024年10月24日).

[18] オルビィス株式会社.“コルキット KT-5cm・KT-6cm”.コルキット スピカ ホームページ.http://www.orbys.co.jp/kolkit-jp/kt5cm6cm.html,(参照2024年10月24日).

[19] 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台.“国立天文台望遠鏡キット”.国立天文台 ホームページ.教育関係.教育関係の方向け.https://www.nao.ac.jp/study/naoj-tel-kit/,(参照2024年10月24日).

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