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第3章 毒の博物館 3-1 毒が招いた多様性と進化 3.警告色、4.ミューラー型擬態とベイツ型擬態、および、コラム08 魚も擬態する:「特別展「毒」」見聞録 その18

2023年04月27日、私は大阪市立自然史博物館を訪れ、一般客として、「特別展「毒」」(以下同展)に参加した([1])。

同展「第3章 毒の博物館 3-1 毒が招いた多様性と進化 3.警告色、4.ミューラー型擬態とベイツ型擬態、および、コラム08 魚も擬態する」([2],[3]のp.96-97)で、警告色が言及された。

毒を持つ生物は、しばしば特徴的な配色を持つことが知られており、これは警告色または危険色と呼ばれる。警告色は、捕食者に対して自らが害を及ぼす存在であることを警告する役割を持っていると言われる([4])。

スズメバチ([5])やゴンズイ([6])もまた、警告色を持つ。

アカハライモリは防御姿勢をとることで、腹面の警告色を見せている(図18.01,2)。

図18.01.アカハライモリの防御姿勢。

キオビヤドクガエルなどのヤドクガエルは世界で約200種類存在するが、その派手な体色は「警告色」で、外敵に「自分は毒を持っているから近づくな」と知らせるためだといわれている(図18.02,[7])。

図18.02.キオビヤドクガエル。

擬態は、隠蔽型擬態、ベイツ型擬態、ミューラー型擬態、および、攻撃型擬態(ペッカム型擬態)の4種類に分類される。

ミューラー型擬態は「不味い・危ない生き物同士で真似し合う」擬態である。海外では、複数種の毒蝶が、翅の模様を互いに似せる例が報告されている。

ベイツ型擬態は「危ない・不味いモデルを真似る」擬態である。毒をもつチョウを無毒なチョウが真似たり、毒針を持つハチをカミキリムシが真似たり、擬態したりするものは危険な生き物をモデルにしている。

「不味い・危ない」生き物をモデルにするので、ハチの黄色と黒色の縞々など、真似る側も目立つ色形になることが多い([8])。

実際、ナナホシテントウ、ヒメアカホシテントウ、および、ナミテントウはミューラー型擬態の典型例である一方、クロボシツツハムシ、ヘリグロテントウノミハムシ、および、ヨツボシケシキスイはベイツ型擬態の典型例である(図18.03)。

図18.03.①ナナホシテントウ Coccinella septempunctata,②ヒメアカホシテントウ Chilocorus kuwanae,③ナミテントウ Harmonia axyridis,④クロボシツツハムシ Cryptocephalus signaticeps,⑤ヘリグロテントウノミハムシ Argopistes coccinelliformis,⑥ヨツボシケシキスイGlischrochilus japonius。
国立科学博物館蔵。

また、毒針を持つハチは種間でミューラー型擬態を行う。一方、毒針を持たない虫はベイツ型擬態を行うことで、ハチに擬態し、捕食者から逃れる(図18.04)。

図18.04.しま模様は危険のしるし。

魚類では、ノコギリハギ(無毒)がシマキンチャクフグ(有毒)に擬態することもまた、ベイツ型擬態の事例の1つである(図18.05,[9],[10])。

図18.05.向かって左から、ノコギリハギとシマキンチャクフグ。

「第3章 毒の博物館 3-1 毒が招いた多様性と進化 3.警告色、4.ミューラー型擬態とベイツ型擬態、および、コラム08 魚も擬態する」の執筆時に、私はこう思った。

「生物における毒と警告色の関係は、我々人類が思っている以上に、奥が深い」!


参考文献

[1] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“特別展「毒」 ホームページ”.https://www.dokuten.jp/,(参照2023年07月21日).

[2] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“第3章 毒と進化”.特別展「毒」 ホームページ.展示構成.https://www.dokuten.jp/exhibition03.html,(参照2023年07月21日).

[3] 特別展「毒」公式図録,180 p.

[4] 国立研究開発法人 科学技術振興機構.“生物の気持ち悪い配色の特徴―ガウス過程順序回帰による検討―”.J-STAGE トップページ.人工知能学会 全国大会論文集.第34回(2020).書誌.2020年06月09~12日.https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjsai/JSAI2020/0/JSAI2020_4F3OS25b04/_pdf/-char/ja,(参照2023年07月22日).

[5] あきた森づくり活動サポートセンター.“昆虫シリーズ㉗ スズメバチQ&A”.森と水の郷あきた ホームページ.特集記事 昆虫シリーズ.http://www.forest-akita.jp/data/konchu/27-suzume02/suzume02.html,(参照2023年07月22日).

[6] 独立行政法人 国立科学博物館.“毒のとげ”.国立科学博物館 インターネット特別企画展「海に生きる-くうか・くわれるか」 ホームページ.第七章 食べられないための工夫.身を守る道具.https://www.kahaku.go.jp/research/db/zoology/kaisei/hp-7/miomamoru/toge.html,(参照2023年07月22日).

[7] 株式会社 男鹿水族館.“ザ・警告色”.男鹿水族館GAO ホームページ.GAOっと!ぶろぐ.2018年03月09日.https://www.gao-aqua.jp/blog/21495.html,(参照2023年07月22日).

[8] 浜松科学館.“冬が旬!擬態昆虫を探してみよう。”.浜松科学館 みらいーら note ホームページ.2020年11月27日.https://hamamatsu-sci-museum.note.jp/n/ndeee44ad529d#Sqaeq,(参照2023年07月21日).

[9] 公共財団法人 東京動物園協会.“どっちがどっち? ノコギリハギとシマキンチャクフグ 葛西臨海水族園”.東京ズーネット ホームページ.ニュース.2008年01月25日.https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&link_num=8298,(参照2023年07月22日).

[10] 長嶋祐成.“シマキンチャクフグ Canthigaster valentini”.魚の譜 uonofu ホームページ.2016年08月12日.http://uonofu.sblo.jp/article/176341174.html,(参照2023年07月22日).

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