Vol.5 古川孝敏 水も滴るイイ男
筋骨隆々の鍛えあげられた肉体に
煌びやかに光る汗の輝き、
竹野内 豊を彷彿とさせるたくましい髭。
仲間への鼓舞には一段と熱がほとばしり、
危険な激しい接触も厭わない勇敢なソルジャー。
バスケット選手としての古川孝敏には、
このようなイメージが浮かぶ。
コート上で「強い古川」が際立つ一方で、
ひとたび戦いの鎧を脱いでしまえば
初対面のファンやメディアにも
どこまでも気さくで、
包み込んでくれるような優しさを併せ持つ。
会場で声援を送り続ける人の中には
そんな古川の「ギャップ」にやられたファンも
少なくないだろう。
リーグ屈指のシューター、連想させるのはあの人
プレーの特徴で言えば、
何といっても正確無比な外角シュート。
2016年のBリーグ開幕以降、
3P成功率は毎年30%以上をキープしている。
【3P 成功率】
2016-17 37.4%
2017-18 36.2%
2018-19 35.6%
2019-20 30.1%
稀代のスコアラーは
Bリーグ初年度に所属した栃木ブレックスを
初代王者に導き、
ファイナルではMVPにも選出された。
いかにして毎シーズン、
高確率のシュートは生み出されているのか。
それを裏付ける一端を
2年前の代表合宿中に垣間見た気がする。
基本的に代表に招集された選手は
一同ナショナルトレーニングセンターに集結し
寝食をそこで共にする。
一日の大部分がバスケ漬けの環境になる。
言い方を変えれば、
選手達に与えられる時間は皆同じ条件だ。
そんな状況下で練習を密着した二週間、
毎朝体育館に一番乗りで姿を現し、
毎日最後の一人になるまで
シュート練習に明け暮れる選手がいた。
それが古川だった。
その事について本人に投げかけてみると
あたかも当然のように振舞っていたが、
毎日、毎日のことである。
誰にでもそう簡単に出来る事ではないはずだ。
「己の下手さを知りて上達の一歩」
スラムダンクに出てくる安西先生の言葉に
こんな一節があるが、
古川の姿勢に見る飽くなき向上心は
この言葉が根幹にある気がしてならなかった。
そしてそんな姿を、必ず見ている人はいる。
もう一つ、圧倒的な努力に加え、
「シュートを打つまでの動き」にも
他にはない魅力を感じる。
リーグが選定した古川の昨シーズンTOP5 Plays。
特に第4位のシュートの動きをご覧頂きたい。
フェイクでDFを交わしてから
シュートモーションに入るまでがかなり速い。
他のプレーを見ていても、
大きく動きながらボールをもらい
そのままクイックで打つ事もあれば、
1対1を仕掛けるような間合いを見せてから
クイックモーションで打つ事もある。
どのプレーにも共通しているのは
シュート体勢に持っていくまでのスピードが
異常に速いことだろう。
それも軸をブラさずに。
この感覚が合っているかは分からないが、
中村和雄さんが古川のプレーを
解説してくれている映像がある。
この解説を聞いて
真っ先に日本バスケ界屈指のシューター、
折茂 武彦を連想した。
チーム意識に憑依させるディフェンス力
ここまで古川のシュート力に
フォーカスしてきたが、
泥臭く献身的なDFも大きな魅力の一つである。
決して、身体能力に任せるわけではなく、
チームの戦術を深く理解し
100%、コートの上で遂行していく。
そんな力が人一倍
長けているのではないかと思う。
【1:13~ディフェンスへの意識】
Bリーグ開幕から4年が経ち
これまで3チームを渡り歩いてきた古川。
どのチームに行ってもスタメンに名を連ね
高いパフォーマンスを維持し続けられるのは、
チームに求められている事を
高いレベルで遂行し、
その上で自身の
飛び道具を磨き続けているからだろう。
そこに持ち前の
闘志溢れるパッションも加われば
相手にとってこれほど嫌な選手はいない。
こちらのプレーには
そんな古川のエナジー溢れる魅力が
凝縮されている。
【0:50~危険を恐れない決死のダイブ】
ムードメーカー以上に必要なパッションメーカー
しかし、トップ選手が集う日本代表では
古川の能力を持ってしても
レギュラーの座は約束されていない。
近年は国内外で活躍する
有望な若手の才能がどんどん育ち
さらに競争が増してる印象さえある。
実際にW杯予選を見てても
古川の出番は限定され
サポートに回る印象も大きかった。
それでも毎日練習を取材してると
「Let's go」という
誰よりも大きな古川のかけ声が
体育館中に響き渡っている事に気づく。
みんながチームとして一つになれるように、
声を掛けていかなければいけない。
前はそこまで意識してなかったですが、
今は年齢も上の方で、
それをやらなければいけない立場です。
また自分の良さはそういったところなので、
みんなに良い刺激を与えていきたいです
年齢や能力差に関係なく、
チームが苦しい時や負けが込んでいる時ほど
声を出して精神的に引っ張れる選手が
どれだけチーム内にいるか。
それが大舞台を勝ち抜いていく上で
極めて重要な事だと、W杯では痛感した。
ムードメーカーではなく、
闘志を奮い立たせるパッションメーカー。
奥底にある反骨心を引っ張り出し、
その情熱を伝播させていく。
それができる古川の存在は貴重だ。
古川が秋田にもたらすものとは
この夏、
秋田ノーザンハピネッツは
古川との契約更新を発表した。
昨年結んだ3年契約の2シーズン目に入る。
もっと上に行けるチームだと思う
強豪ひしめく東地区にあって、
古川のこの言葉は頼もしいかぎりだ。
3年という契約年数からも、
その覚悟が見て取れる。
初年度所属した栃木では日本一に、
2-3年目を過ごした琉球では西地区の王者に。
「勝てるチーム」を知る男が加わった意味は
まるで計り知れないし、
その答えを知るのはまだ先かもしれない。
古川が見せるプレーが
クレイジーピンクに染まるアリーナを、
5000人近い熱狂で埋まる大観衆を
最高潮に痺れさせる。
いつの日か
そんな瞬間を現地で目の当たりにし、
秋田の酒に酔いしれたい。
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