「初めてのオンナ達」─♯青春と人生の交差点
生まれて初めて女性誌を買った。24歳の秋のコトだ。
ファッション系というよりは"オンナ"という生き物の生態を知りたくて、一般女性は何を考えて生きているのか? といった特集やそんなアンケートが載っている雑誌を積極的に探して買い漁っていた。
その期間で何かを得られたかは自分でも解らない。ただただその頃の自分自身をどんな方向からでも良いから納得させてくれる文章や言葉を求めていただけだった気がしている。
「貴方がいなくても、もう大丈夫になりました」
彼女に浮気をされ、別れを告げられた24歳の秋のコト。
生まれて初めて弁護士事務所へ行った。27歳の秋のコトだ。
想い人が何やら"オトコ"の問題で困りごとを抱えていて、それに対してのお節介だった。手に入れた情報を整理し、彼女へ伝えると、「ありがとうございます。でもこれは私が解決しなければならないコトなので」と切り捨てられてしまう。冷静になってみれば結婚してもいない、そもそも付き合ってもいない間柄でするようなお節介ではなかったと思う。
その後、僕は無事にキチンとフラれ、彼女自身は未だにダメンズウォーカーを続けていると風の噂に聞く。
マジメなイイヒトを演じていても、得れないものは多いのだと知った27歳の秋のコト。
生まれて初めてモテ期を感じた。28歳の秋のコトだ。
バーテンダーという様々なヒトと毎日話せる仕事環境や過去の暗い体験もあり、どんな事をしてあげたら女性は喜んでくれるんだとなんとなく解り始めてしまった時期だった。好意を寄せてくれた3人のお相手は皆様自分より年上でいらっしゃったが、短いオトナの交際の後、どの方とも一緒にならない事を自ら選んだ。
今に思い返してみても贅沢な選択だったが、片想い、もしくは両想いという関係性。こちらから好きになった相手でないとお付き合いしたくないのだと、自身の癖を認識してしまったのだ。
こんな一方的に好きになられる体験は、オトコよりもオンナの方が日常茶飯事だろう。身を持って過去の自分を恥じた28歳の秋のコト。
いまや数々の経験を糧として僕はバーカウンターへ立っている。お酒への探究心はもとより、未だニンゲン、ひいてはオンナという生き物への興味は尽きない。
そういえばしばらく女性誌を買っていないな。あらためて今の自分が納得する文章や言葉を探してみようかしら……
〈こちらの企画への参加noteになります。〉
『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。