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【note30】学校における政治的中立を考える(暴力で社会は良くならない)

安倍元首相が凶弾に倒れ、命を落とすという衝撃的な事件から一夜が明けました。すでにFacebookではヘッドラインニュースとして紹介しましたが、多くのコメントの通り、「民主主義の根幹としての選挙」において暴力で言論を封殺するという暴挙は許されるものではありません。安倍元首相は8年余りの任期の中で地球儀を俯瞰する外交(結果的に国際的にも認知度の高い政治リーダーとなったことは事実です)、3本の矢に象徴される経済政策(アベノミクス)、安全保障、憲法改正等様々な争点を投げかけたと思います。その賛否は当然ながらあるべきであり、それこそが民主主義の大原則です。
最終的には森友問題、加計学園問題、桜を見る会など疑惑を追及されることもあり、ここは明瞭にすべきであったと思いますが、今回のことと、それらは別問題であり、白昼で背後から命を狙われたという事実(これは政治家のような公人あっても私人であっても同様です)を極めて重く受け止める必要があります。

参議院選挙が今週日曜日

政治論としてドライに見ると、今回の事件により正常な状態で選挙が実施されることが難しくなってしまいました。元首相の殺害という衝撃は政治に影響を及ぼすはずです。かつて大平正芳首相が選挙期間中に死去し、その影響もあり自民党が大勝した歴史があります。安倍首相が死去したことで有権者の心理と投票行動にはどんな変化が生まれるでしょうか。直近の選挙だからこそ、敢えてこうした提起をしています。これで誰が有利だとか、不利だとか言うことではなく、冷静な状況の下で有権者が投票する権利もまた奪われたということなのだと思います。願わくば、正当な選挙活動が平穏に行われ、有権者が自己の判断で選挙に向き合う状態であって欲しかったし、これまでの日本は基本的にはそうした状況で選挙が実施されてきました。それが覆されたことも大きな衝撃であると思います。

学校における政治的中立

こうした政治ニュースに関する個人的な論評も言い方を間違えると教育基本法が定める「政治的中立」に抵触する可能性があります。最後に、この件について少し考えてみようと思います。もう少しお付き合いください。
以下は2つの記事の抜粋です。

政治的中立<教師や生徒を交えた政治対話

以下のことは、法律論を置いた個人的見解の色彩が強いので、それを踏まえて読んでいただけると幸いです。
個人的な思いを述べると、あらかじめ過剰に「中立」を意識することで結局は当事者的な思考ではなく、自分事して政治を捉えることができないと考えます。難しい問題ですが、初めに取り組むべきは「中立」をひたすらに意識することではなく、政治を語る土壌を作ることではないでしょうか。
それは一朝一夕にできるものではありません。ただし、教員の意見もone of themであり全てではない。教師に対しても異論反論を述べることができる
そもそも授業で伝えられることが必ずしもすべて事実とは限らない時代です(基本的な概念や理屈の正しさは別として)。だからこそ、対話の中で政治のあり方、自分の意見、投票について考えていく必要があるのではないかと考えます。こうしたプロセスを飛ばしてしまうと、選挙制度の説明といった従来型の「選挙の仕組み」を扱う授業に終始することになると感じます。
主権者教育に距離を取ってきた日本の現場においては、これからも試行錯誤が続くべきであると思っています。

記事その①
高校3年のある女子生徒(17)が参院選の仕組みを説明するポスターを自作し、校内に張り出したところ教員から「政治的活動だ」と指摘されて剥がすことになった。この生徒は経緯をツイッターで発信。その後、学校側は掲示を認めた。教育基本法などが定める政治的活動の線引きはどこにあるのか。
★生徒は「選挙を自分事と考え、調べる同世代が増えてほしいからであり、選挙関連だから全てダメだというのは理不尽だと感じた」、「若者に選挙へ行けと言う前に、政治に敏感な学校の空気を変えた方が良いのでは?」と語る。最終的に学校側はポスター掲示を認め、生徒に謝罪しています。

記事その②
選挙権年齢が引き下げられて、3回目となる参院選の投開票日が近づく。高校3年生の一部は選挙権があり、主権者教育の充実が期待されるが、「政治的中立性」の観点から現場は時に難しい判断を迫られる。一部では、実際の選挙や政治情勢に触れるのを避ける傾向もある。主権者教育は、政治や選挙の知識を含め、社会で自立して生き抜く力の育成が目的で、2016年の選挙権年齢引き下げを機に注目された。一方、教育基本法は、特定の政党を支持・反対する政治教育を禁じており、生徒の一部が選挙権を持つ高校は、政治的中立性の確保を求められてきた。「中立って、何も言わないことではなくて、色んな意見に触れて、考えることではないでしょうか」
40代男性教諭は「中立性にこだわりすぎると生徒にとってデメリットが大きい」と感じる。中立性への配慮から架空の政党を用いて授業をする教師もいるが、男性教諭の現代社会や政治経済の授業では、実際の候補者や政党の主張を紹介する動画を見せる。「生徒の目の色が違う」。関心が高まり、投票に積極的になるという。

東大大学院の小玉重夫教授(教育学)の話 学校現場では政治を扱わないことが「中立」とされがちだ。教育基本法は、選挙運動や政党の宣伝活動は禁じているが、政治教育は推進するべきだという趣旨。教育の独立性は守られなければならず、行政や社会全体で学校を支える姿勢が重要だ。

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