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(小説集) 剣鬼悪辣

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よく分からん奇行短編小説と、連載長編小説です。 暴挙とも思われる事を書いてしまうが、それすら誰かの救いになるのなら、我悪辣の名の下に、太刀を振るう事鬼の如し、そういう事です。
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2019年6月の記事一覧

すべての花を焼き捨てて(3)

すべての花を焼き捨てて(3)

良い時間というのは、あっという間に終わっていた。でなければこんな、名前も知らない灰色の町で、鉄という鉄がすべて錆び切って黒ずんだ公園で、僕は佇んでいない。僕は始めてすらいない。

五十嵐さんと買い物を終えたあと、業務スーパーに行って買い出しをした。道具を選ぶ時は慎重なのに、どう考えてもいらないだろうという食品をバンバンカゴにぶち込む五十嵐さんは、ちょっと面白かった。
店に帰って厨房に並び、夜のお客

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すべての花を焼き捨てて(2)

すべての花を焼き捨てて(2)

ディオール、シャネル、グッチ、あとはよく分からないし知りたくもない。僕はむせ返りそうな匂いに押し込められて、息を殺してエレベーターの壁に寄りかかった。
僕は女性が嫌いだ。男性が好きとか、そういう意味じゃない。とにかく、この空間から一刻も早く逃げたかった。小花柄のワンピース、大きく肩を出した知らない服、どぎつい色のリップ、パフスリーブ。彼女たちはこちらに聞こえるように響く声で下卑た話をしている。僕の

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すべての花を焼き捨てて(1)

すべての花を焼き捨てて(1)

無心になって小葱を刻む、玉ねぎをスライスする、ざるをかませたボールに刻んだ玉ねぎを投入、シンクに置いて冷水でさらす。
五十嵐さんは横で何種類かのソースのボトルを並べ、それぞれの味を確かめる。
僕は割合ここが好きで、給料が出るわけではないけど、学校が休みの日は昼の12時からここに来て、五十嵐さんの手伝いをする。
普段五十嵐さんは滅多に喋らない人で、僕も最初は怖かった。顔立ちは面長で、くっきりした目鼻

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