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(小説集) 剣鬼悪辣

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よく分からん奇行短編小説と、連載長編小説です。 暴挙とも思われる事を書いてしまうが、それすら誰かの救いになるのなら、我悪辣の名の下に、太刀を振るう事鬼の如し、そういう事です。
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2019年5月の記事一覧

短編とか言いつつ、長くなりました。全ての黒を打ち据えて。公開します。今これを書く理由は衝動。動機は悪意、お読みいただければ幸いです。
明日から大変だぁ。
#小説 #短編 #雑文

全ての黒を打ち据えて 下

康樹はそれから何度かうちに来た。大体はバイトで遅くなって、終電で止まる時に泊まりにくるパターンだが、最近は多くなった。
「姉ちゃん、棒でも拳でも、足でもそうなんだけどさ、突きって難しいんだ。こういうのがあればそれなりに分かるんだけど、型とか、シャドーとかじゃ、感覚が分からない。抵抗のないものだと、すり抜けてる感じだし、逆に凄い抵抗があるものだと、こっちが壊れてる、多分ね、刃物とかだともっと分からな

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全ての黒を打ち据えて 上

「男と別れたからって、これはないよ姉ちゃん」
康樹は首から下げたタオルで額を拭いながら言う。私は傍に甘い缶コーヒーを置いた。
「形から入るのは姉ちゃんの悪い癖だよ。絶対使わなくなるから、こんなの」
「お駄賃あげるから、ぐちぐち言わないでよ。助かった、ありがとう」
エアコンのない部屋で、朝の10時から作業を始め、16時になってようやく終わった。窓を全部開け放って風を通して、ようやく部屋の中の鬱屈した

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