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デジタル時代、経営者や企業のために「編集者」ができること

ぼくはこれまで主に紙の本の編集に携わってきたわけですが、ここ数年、経営者や企業の情報整理、コンテンツ制作、SNS等での発信をお手伝いする仕事が増えてきています。

経営者や企業のすぐ隣で「顧問」をやる「編集者」なので、その仕事を「顧問編集者」と呼んでいます。

今日はデジタル時代に編集者ができることは何か? ということについてあらためて考えてみたいと思います。

デジタル時代、言葉も「D2C」になった

デジタル時代になって、経営者や企業が直接消費者にものごとを伝えられるようになりました。

「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」とよく言われますが、言葉という商品においても「D2C」が可能になったと言えるかもしれません。

いまは発信しようと思えば、企業のサイト、TwitterなどのSNS、noteやWantedlyなどのプラットフォームなどを使って、企業が直接言葉を届けることができます。

経営者や企業自体が「メディア」になったということかもしれません。

編集者=コンテンツの世界におけるマーケター

というわけで、経営者や企業が直接「伝える」ことはできるようになったのですが、きちんと「伝わっているかどうか」はまた別の話です。

ここに「編集者」が価値を出せるポイントがあります。

編集者は作家や著者など「発信する側が言いたいこと」と、読者や消費者など「受信側が聞きたいこと」をつなぐのが仕事です。

言葉や情報の需要と供給を一致させる。いわばコンテンツの世界におけるマーケターのような仕事なのですが、そういった役回りをする人が意外とビジネスの世界には少ないと感じています。

・経営者や企業が発信したいことをわかりやすく正確に伝える
・無機質な情報ではなくおもしろいコンテンツにまで仕上げる

そんな役回りが、これからまだまだ求められていくような気がしています。

DXにおいて重要な「テキストコミュニケーション力」

デジタル時代になって「テキストのコミュニケーション」はかなり増えました。DX(デジタルトランスフォーメーション)というと、テクノロジーが注目されがちなのですが、インターフェイスの部分ではやはり「言葉」が重要になってきます。

「DX」というとなんだか難しそうですが、結局ひとりのビジネスパーソンが身につけるべきことは、

・言葉で伝える力を磨きましょう
・テキストでのコミュニケーション力を上げましょう

というシンプルなことなんじゃないかなと思うわけです。

ここにも編集者の出番はありそうです。

テキストでのコミュニケーションが増え続けるなかで「正しく伝わっているか?」「きちんと伝わっているか?」を客観的に見て、アドバイスしたり改善を促す。

そうやってコミュニケーションをディレクションしていくことも、これからの編集者の仕事なのかなと思います。

デジタルでどうやって「体温」を伝えるか

デジタル時代に難しくなったのは、ニュアンスや空気感、感情的なものを伝えるということです。

リアルで対話していれば、阿吽の呼吸が使えました。リアルで会議をすれば、その場の空気で伝えることができました。しかしデジタルになった途端、そういった身体的な感覚は伝わりにくくなりました。

そこで重要になってくるのが「いかにテキストで感情を伝えるか?」「体温のある言葉を届けるか?」ということです。

たとえば企業のサイトで魅力を伝えようとしても、冷たい言葉だといい印象を持ってもらえません。

「我社はDX時代を牽引してまいります」「輝く未来を創造するソリューションカンパニーです」などと書いても伝わらない。

そこで感情のこもった言葉、体重の乗った言葉、温度感のある言葉で伝える必要性が出てくるわけです。編集者の仕事は、この部分でも生きてくるはずです。

「人」にフォーカスする編集者の仕事

ぼくが編集者としていちばん興味があるのは「人」です。

その人がこれまでどういう人生を歩んできたのか? その人が何を考えているか? 「事象」よりも「人」に興味がある。

人の魅力を発見して、多くの人に伝える。そんな仕事が好きだし、得意です。そしてその性質はビジネスの場面でも活きている気がします。

ぼくはビジネスの専門家でも、経営の専門家でもありません。「人」を見て、対話し、寄り添い、その人の強みやおもしろさを見つけて、伝える。それしかできません。

ただ、経営者といってもひとりの人間なのです。組織といっても、ひとりの人間の集まりです。その「人間」に焦点を当て、その魅力を引き出し、伝える。そういう仕事をしている人が、ビジネスのシーンではあまり見当たらないのです。

ぼくが経営者に会うと、たいてい幼少期から今にいたるまでの話を伺います。どういう子どもだったのか? 親はどういう人だったのか? どういう育てられ方をしたのか? そういったところから、その人の人生を深く聞いていく。

社員であっても同じです。表面上のビジネスの話ではなく(そこも伺いますが)、その人が何を考えているのか? その人の肉声は何なのか? どういう思いでその仕事をしているのか? 一人ひとりの思考の海に潜っていって魅力を探っていく。

デジタル時代において、いかに人の魅力を伝えられるか? 体温のあるコミュニケーションを生むことができるか? そこがビジネスでも重要になってくるはずです。

「人」から始まる編集者の仕事が、デジタル時代においてますます重要になってくる気がするのです。


「顧問編集者」については、こちらでも書いています!


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