【受験ノート】日本大学(日芸)

 日本大学(日大)は、16の学部が、それぞれ別の場所にあります。学部同士の交流はまったくなくて、それぞれの学部が、ひとつのまとまった単科大学のような、形式的な総合大学です。日大は、日芸(日本大学芸術学部)だけが特殊で、あとの学部は、ほぼほぼ平均点と云っても過言ではない学校です。偏差値的にも、各学部の教育の質も、学生のやる気も、すべてが平均点です。普通に勉強した生徒が、普通に進学する、可もなく不可もなしと云う評価がぴたっと当てはまる、いたって普通の大学です。

 ですが、日芸は普通ではなく、明らかに特殊です。東洋の東洋思想文化学科とは、また別の意味で、人生を棒にふる学部です。日大の他の学部は、卒業生は普通に就職しますが、日芸では、まともに就職しない人もけっこういます。普通に就職して、まっとうな人生を歩むことを、入学時点で、すぱっと諦め、覚悟を決めて進学すべき学校だと、個人的には思っています。

 前の学校に勤めていた頃、私の部活から、毎年、誰か一人くらいは、日芸の写真学科に進学していました。日芸の中でも、写真学科と映画学科には、crazyでヤバい学生が集まっています。東所沢キャンパスで開催されている学園祭には、毎年、行ってました。「こういう写真、本当にありなの?」と、こちらが引いてしまうようなeccentricで、coreな写真が、そこら中に展示されていました。大学時代だからこそ、許される疾風怒濤(しつぶうどとう)だと感じていました。

 学園祭の前は、暗室の奪い合いになるので、所沢の居酒屋でオールで飲んで、AM5:00頃、タクシーで、学校に駆けつけて、暗室の順番待ちをすると言ってました。
「酔っぱらっていて、ちゃんとした現像ができるのか?」と聞くと
「暗室待ちの時間が長くて寒いので、飲んでないと無理です」と言ってました。

 卒業制作の写真は、六本木のミッドタウンのカメラ屋のopen spaceに展示されます。sophisticated された、六本木の雰囲気にコラボした、こじゃれたヤワな写真です。卒業制作の写真が、ordinaly な普通のそれだとすると、東所沢の学園祭の写真は、明らかにchaosだと言えます。

「大学卒業後の保証は全然ない。キャンパスライフをとことんenjoy したくて、写真が死ぬほど好きな生徒だったら、日芸の写真学科もありかな」と、生徒にはぶっちゃけなアドバイスをしていました。ちなみに日芸の写真学科には、7、8人進学しましたが、プロになったのは一人だけです。半数くらいは、行方不明です。

 写真学科よりも、さらにスゴイのは、映画学科。各学年の終わりには、学年末制作の映画を撮らなきゃいけません。資金集めのためにバイトに明け暮れ、すぐれたチームを作るために人脈作りも必須です。映画そのものも、膨大な量、見ておかなければいけません。いったい、いつ寝てるんだろうと、こちらが心配してしまうくらい、慌ただしく、忙しい生活をしています。まあ、ですが、世の中を生き抜いていくための人間力は、まず間違いなくつきます。人間力さえつけば、ヤサぐれようと、フリーターになろうと、人生は何とでもなります。

3番目は、おそらく放送学科です(演劇学科と、どっこいかもしれませんが)。が、放送系に行くなら理系の大学(東京理科大とか芝浦とか)の電子電気系に行けと、私は昔からアドバイスしています。放送の現場は、文系と言うよりは、理系の世界です。ただ、スゴい人間と出会いたいのであれば、日芸に行くのがbestです。

 日芸の3、4年は江古田キャンパスです。私が前の学校に勤めていた頃に改築していました。現在は、ぴかぴかの新校舎が完成しています。江古田のあの昭和的なひなびたミニ学生街の雰囲気とは、ちょっと合ってない感じですが、メカニズムは、日々、進化しているわけですから、最新式の機材がそろっているぴかぴかの新校舎の方が、もちろん、望ましいです。

 私が前の学校にいた頃は、1個くらいは、超ド級のすごいバンドが、日芸にはありました。まあ、超ド級のすごいバンドが、プロになれるわけではありませんが、ここまでやり切れば、悔いはないだろうと納得させてくれるようなバンドでした。前任校を異動してから日芸の学園祭に出向くと、もう超ド級のすごいバンドはなくなっていました。ケータイやネットが普及して、バンドだけにひたむきに打ち込むことは、価値観が多様化しすぎて、できなくなったんだろうと想像しました。逆に高校生のバンドは、明らかにレベルアップしました。東京都軽音連盟が発足し、他校のバンドと日常的に出会えるようになって、切礎琢磨できる環境が整ったことが、レベルアップした、大きな要因です。

 日芸に限りませんが、日大の文系の各学部は、おおむね放任主義です。ですから、昔ながらの自由で気ままなキャンパスライフを、保証してくれています。ただ、あまりにも自由すぎると、学生自身が不安になり、Identityの危機を感じてしまうのかもしれません。

 日大第一高校と親しくしています。外側から見る限り、校則は厳しいです。結構、ガチガチに縛られている感じはします。高校時代は、ガチガチに縛っておいて、大学時代になって放任すると云う仕組みなんだろうと理解しています。東海大附属浦安高校とも、親しくしていますが、東海大も、ほぼほぼ同じ仕組みです。厳しい指導を、保護者が望んでいるってとこも、まあ今の時代ですから、当然、あります。日大一高も、東海大浦安も、学校内の施設は充実しています。そこは、やはり私立って感じです。たとえば視聴覚ホールなどは、この学校の10倍以上、立派な施設です。ボンベイのスラム街と、高層摩天楼建築くらいの差は普通にあります。大学の施設も、もちろんそれなりに充実しています。大学生になると、高校時代以上に、積極的に動いたもの勝ちなんです。水道橋の日大法学部に見学に行った時、50万冊の蔵書を揃えた地下2階地上7階建築の図書館を見て、圧倒されました。正直、これを使える学生が、本当にいるのかよって、突っ込みたくなりました。MARCHに落ちて、日大に進学したとしても、本人にやる気があれば、revegeできる環境は整っています。revengeする気概を持てる生徒にとっては、日大の学習環境は、充分に整えられていると言えます。

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