【受験ノート】慶応大学(SFC)

 ビリギャルが、慶応のSFC (湘南藤沢キャンパス)に合格したのは、まぐれです。慶応のSFCは、まぐれありだと、塾関係者はみんな知っていました。ビリギャルブームは、そのことをより広く知らしめました。

 本気で勉強する生徒を集めて、藤沢の山奥で徹底的に鍛えると云う目的で、慶応はSFCを創設しました。三田は明らかに手狭なので、新学部を押し込むことは、不可能です。日吉は、正直、ちゃらくて、ガチンコで勉強する学部には不向きです。早稲田のように、「都の西北」じゃないと、キャンパスは創れないと云うしぼりは、別にないわけですし、三田からも、日吉からも遠く離れた神奈川の片田舎に、1990年に新学部を創設しました。SFCのSは、湘南の頭文字ですが、海からははるかに遠く、湘南台と云う最寄り駅からバスで15分走った、畑と養豚場に固まれた、田舎です。ICT環境を充実させ、やる気のある優秀な若手の先生を集める。あとは、慶応のブランド力があれば、日本全国から、優秀な生徒が、自ずと集まって来ると、目論んだわけです。やる気のある生徒は、創設して何年間かは、集まっていました。

 慶応のSFCの最大のネックは、入試科目が特殊すぎることです。入試のスタイルは、数学(数Ⅰ・数A・数Ⅱ ・数B)と小論文or英語と小論文の2パターンです。で、小論文の配点は、400点満点の200点。つまり半分。この危険なリスクのある入試科目と配点ですと、上智の外国語学部やICU、早稲田の文系を受験する生徒を、引っ張って来ることは、とてもできません。この入試スタイルは、他校を落ちて来た第2志望、第3志望の生徒を集めるのではなく、SFCを第一志望にするやる気のあふれた生徒のみ集めると云うコンセプトだと推定できます。が、受験生の基本のスタンスは、余分なchallenge精神を発揮する・・・ではなく、リスクを避けるです。

 早稲田は、間違いなく全国区の大学だと言えます。慶応は、どちらかと云うと、都会の優秀な生徒を集める大学です。私は四国の片田舎の高校出身ですが、慶応に進学した同級生は、ひとりもいません。慶応の名前は、田舎でも勿論、知れ渡っていますが(ちなみに成成国武独の5校とかは、ほとんど知られてません)慶応は、未だに都会のお金持ちのお坊ちゃん、お嬢さん大学だと思われていますから、地方の片田舎の高校生は、自分たちが進学する大学だとは想定してません。

 SFCは、創設した当初は、東京圏の優秀な生徒を、集めていました。入試は当然、三田の本部キャンパスで実施されます。SFCは、湘南の海の香りのする所だと思って進学したら、・養豚場の匂いがするキャンパスだったってことで、まあやっぱり、裏切られた気持ちにはなります。

 ITを重視する学部なので、結局、IT系のオタクが、メジャーなキャンパスになってしまいます。そうすると、女子の優秀な生徒は、なかなか集まって来ません。どこの大学も、優秀な女子学生を、どうやって集めるかと云うことに、腐心しています。早稲田の国際教養学部は、上智の外国語学部、ICU、慶応の文学部、あるいは東京外大を第一志望にしている優秀な女子生徒を集めると、はっきりとターゲットを絞って、創設したんです。で、狙い通り、優秀な女子が集まって来て、この所、慶応に押されがちだった早稲田全体に、活気を与えてくれました。

 慶応は、センター試験から、全面的に撤退しました。慶応の文系で、小論文がないのは、商学部のA 方式だけです(小論文がない代わりに数学が必修です)。小手先の受験のスキルとか、要領の良さとか、暗記力ではなく、小論文を課して、総合力を判断すると云う姿勢です。まあ、ある意味、正論だと思いますが、正論を貫けば、自ずと受験生が集まって来ると云う簡単な話ではありません。

 ビリギャルが、日本史の勉強を、マンガで仕上げたと云うことで、今、日本史のマンガが売れまくっています。かつて日本史のマンガは2社しか発売してなかったんですが、ビリギャルブーム以降、今、5、6社が、日本史マンガの新シリーズを出しています。ビリギャルが合格した慶応のSFCには、社会の入試はないと云う正論と云うか真実は、どっかに置き去りにされています。日本史を使って受験した、慶応の他の学部は、全部、落ちています。受験生は、正論とか真実とかではなく、ムードとイメージで動きます。

 早稲田ほどではないですが、慶応も給付型の奨学金が充実しています。お金持ちのお坊ちゃんやお嬢さんは、間違いなく早稲田より、はるかに多い学校です。本当に勉強する学生は、早稲田と同じように、そう多いとは言えません。慶応も早稲田同様、経済的に厳しい学生は、努力すれば、授業料分くらいは、給付型の奨学金をもらって、賄(まかな)うことができます。このあたりの宣伝は、早稲田も慶応も、一切してません。宣伝をすると、奨学金の申し込みが多くなって、本当に必要な学生が、受けられなくなったら困ると云う配慮なんだろうと、推察できます。ですから、進路に詳しい高校の教員が、伝えることになります。親に経済的な負担をかけたくないと本気で考えている生徒で、MARCHを目指しているとしたら、今すぐ早慶に志望校を上げるべきです。このプリントをいつ配布するのか解りませんが(もう結構、いっぱい書いてしまって、30回分くらいは、新しいプリントのストックがありますから、配らないまま授業が終わるのかもしれません)どの段階であっても、MARCHから早慶に志望校を上げるのは、全然、ありです。マイナス要素は、何ひとつありません。逆に、早慶からMARCHに下げるのはNGです。その後ろ向きの姿勢が、受験全体の足を引っぱってしまいます。

 慶応の最大の弱点は、グローバルじゃないとこです。藤沢のど田舎で、学生を徹底的に鍛えて、グローバルな世界に通用する人材を育てようと云う当初の計画は、残念ながら失敗しています。企業社会からは、SFCの学生は使いぬくいと、NGを出されています。確かに、自分を持っている小生意気なIT系は、使いぬくいだろうと推測できます(SFCが凋落した最大の原因は、企業社会からNGが出されたことです。自分を持っていることは、大切なことですが、たとえ自分を持っていても、上手に周囲と協調して行ける柔軟でcleverな知恵も必要です)。

 慶応の図書館の雰囲気は、アメリカの一流大学のそれです。ものすごく近代化されています。私は、司書教諭の資格を持っていますが、慶応の図書館で一度、研修を受けたことがあります。その著書の充実ぶり、使い勝手の良さに、正直、圧倒されました。アメリカの一流大学の学生は、図書館で真剣に勉強していますが、日本は、慶応であろうと、早稲田であろうと、図書館は、心地よくて、at homeなサロンのような居場所で、そこは本質が違います。

ちなみに、図書館学を専攻するのであれば、慶応の文学部の図書館情報学科か、筑波大学の知識情報図書館学類のどちらかです。他の選択はないと言い切れます。

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