たかてぃん

北海道でワインを造っています。 勉強したことや日頃考えていることを整理のために記事にし…

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北海道でワインを造っています。 勉強したことや日頃考えていることを整理のために記事にしています。 記事が面白かったらスキやコメントをもらえると、次に活かせるので嬉しいです。

最近の記事

造り手の会行ってきた

先週末、造り手の会と一般向けのシンポジウムに行ってきました。シンポジウムは手伝い。⇩な感じの内容。 久しぶりの大きめなイベントで、たくさんの人とたくさんのワインを飲むことができ、色々と思うことがあったので、あまり推敲もせずメモ的に残しておく。 まず、日本ワインってうまいよなって素直に思った。そりゃ、下を見ればいろいろあるけど、総合的に見るとどういう造りをしていたとしてもうまいものはちゃんとうまい。昨今の海外ワインの値上げを考えると、これだったら日本でいいやみたいなこともよ

    • ワインの香り物質~ピノ・ノワール編~

      はじめに ワイン愛好家にとっては言わずもがなの品種、ピノ・ノワールの香りを構成する化合物をまとめていきます。  ピノ・ノワールは霜害を受けやすく、果皮も薄いので病気になりやすい、機械収穫に向かない、低収量など、栽培者泣かせの品種です。一方で優れたピノ・ノワールのワインは他と一線を画す幻想的な香りを生み出します。  ピノ・ノワールに対して一般的に使われるテイスティング表現として、”赤系果実”、”花のような”、”ジャム”、”なめし皮”、”スパイシー”、”腐葉土”などが挙げられると

      • メトキシピラジンの結構詳しい話

        1.MPとは皆さんご存じメトキシピラジン(MP)。ワイン中に過剰に含まれているとカベルネ・ソーヴィニョン(CS)やカベルネ・フラン(CF)、ややマイナーどころでいくとカルメネールなどに特有の青臭さ(green note)を呈する化合物ですね。なんといっても閾値がとても低い。食物香気成分の中でも最も低いものの一つ。ng/Lオーダーの濃度でも感じ取れてしまう。欠陥臭になり得る、かつ人間が感知しやすいということで、MPをコントロールすることは非常に重要です。(MPは適量であれば果

        • 銘醸地は動くのか?【麻井宇介】【ワイン】

           浅井昭吾という人物がいた。1974年からメルシャンのワイン製造に携わり、日本ワイン全体の発展を支え、全国のワイン生産者に多大な影響を及ぼした人物である。言うなれば、「現代日本ワインの父」とも呼べる人物ではなかろうか。  浅井氏は私個人の出生にも多少関わっているものの、すでに亡くなってしまっているし、直接会話をしたことはないと思う。多くの人と同じように、私にとっても、浅井昭吾という名よりむしろ、彼がペンネームとして使っていた麻井宇介という名の方が馴染み深い。  とりわけそ

        造り手の会行ってきた

          【解説】マロラクティック発酵ってなに?

           ワインにおいて発酵と言えば、通常は糖からアルコールが発生するプロセスのことを指しますが、実はワインには「第二の発酵」があるのです。  それがマロラクティック発酵(MLF)です。  MLFはリンゴ酸を乳酸に変える発酵であり、MLFを行う主な目的は ①酸を減少させる ②微生物的に安定させる ③香りや味わいに複雑さを与える です。 また、アルコール発酵の主人公は酵母菌(saccaromyces cerevisiaeなど)ですが、MLFでは乳酸菌が主人公です。ワインに乳酸菌が

          【解説】マロラクティック発酵ってなに?

          自然派ワインを理解する取り組み①生体アミンについて

          はじめに 近年、自然派ワインが隆盛を極めています。環境云々や品質云々など賛否や考え方はいろいろあるでしょうが、今回はそういった話は銀河系の片隅に置いておきます。  私自身の関心の1つとして、有機農法や自然発酵はこれまで科学が取りこぼしてきた事実を拾い上げるチャンスだと思っています。そのために栽培や醸造を注意深く観察し知見を貯めていくことはエキサイティングでエキセントリックでワンダフルな作業に他なりません。  ただ、経験的事実だけでは不十分で、同時に科学的に分かっていること

          自然派ワインを理解する取り組み①生体アミンについて

          ワインの香りをちょっぴり科学的にまとめました

           ワインを飲んでいると、到底ブドウからできたとは思えないような様々な香りを感じることがあります。そのあまりの不思議さから、私たちは自分を納得させるためにより科学的な根拠を求めます。 今日はそんなあなたの一助になれば幸いです。 今回紹介する論文です。私のお気に入りのレビュー論文の1つです。ブドウやワインの香りに寄与する化合物群をまとめてくれています。この論文のフォーマットに則って、めちゃくちゃ噛み砕きながらブドウとワインの香り成分の話をしようと思います。         ↓

          ワインの香りをちょっぴり科学的にまとめました