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【短期集中連載】ジャニーズカルテル(2)警察からの警告

割引あり

【短期集中連載】ジャニーズカルテル(2)

村西とおる監督がジャニーズ問題で干されていたようです。残念ながら、私は村西さんとはお会いしたことがなく、事実関係を確認していませんが、梨元勝さんからフォーリーブスの件に絡んで村西さんのことは聞いていたこともあり、きっとお話ししている通りなんだなと思います。

思えば、ジャニー喜多川氏本人に直接取材したのは、今日ではジャーナリストしては私、上杉隆だけになってしまったんではないでしょうか。だからこそ、これまでは黙していましたが、語らなくてはならない責務が生じたのだと思っています。

本題に入る前に、ジャニーズ取材の背景を解説したいと思います。この間、ノート、メルマガ、ホームページ 、あるいはTwitter(X)やFacebookなどに幾たびか経緯をアップしています。ちなみに、Instagramだけはですね、こうしたジャーナリスティックなことは触れないようにしています。私、上杉のインスタをフォローしている方からは、なぜ取材報告がないんだと言われますが、自分自身の人生の中で、仕事は抜きにした気楽なSNSとして使っているんでご海容いただきたいと思います。

さて、ジャニーズ事務所に取材し報じたことで、私は20年以上にわたって同事務所のタレントとの共演NGを余儀なくされてきました。その報復がどれほど苛烈で、仕事に影響を与えたかというと、やられていない人には絶対にわからないほど徹底したものでした。ひとことでいえば、組織的な業務妨害と社会的な報復行為による存在の抹殺ですね。

きっかけは1999年の終わりでした。 当時、週刊文春のみがジャニーズ問題を扱っていました。編集長の松井清人さん、デスクの木俣正剛さんを中心とした(途中で島田真さん)取材チームがニューヨークタイムズを訪ねてきてくれて、ジャニーズ問題についての報道を伝えてくれたんですね。

ちょうど、私自身も、週刊文春で政治関係の連載(不定期)を始めたばかりということもあって、信頼関係を結び始めた時期にあたりました。さっそく、東京支局長経由でニューヨーク本社に掛け合ってもらい、ジャニー喜多川さんの少年虐待の取材の是非についての判断を仰いでもらいました。

当時、ジャニーズ問題については、週刊文春のみが取り上げており、日本のメディアの中で孤立していました。唯一追随したのは東京スポーツ。しかし、メディアとしての信頼度からいえば圧倒的に低く、報道のひとつとしてカウントされていませんでした。もちろん、他のメディアやジャーナリストは、現在の状況からもわかるように完全に沈黙をしていた時期でした。

そのような中で、のぞみ法律事務所の矢田次男弁護士が暗躍し始めます。週刊文春がデマを流してる、それはもう二次被害であり、後追いをすれば訴訟も辞さないという脅しがなされるのでした。のぞみ法律事務所サイドに付いたのは、全テレビ局、全ラジオ局、全新聞社、全通信社に文春を除く全雑誌です。のちに文春も途中で離脱した時期があったので、まぁ、出版社っていうのは意外にご都合主義なのですが、それでも、この矢田弁護士はその後、TOKIOの山口さんが起こしたスキャンダルでの最初の謝罪会見で、みずからマイクを握って司会をして、自爆していくのですが、世の中の無常と因果を感じてざるを得ませんでした。

あとは東京スポーツでしょうか、実はもともとジャニーズ事務所から出入り禁止処分を受けていたゆえに、週刊文春の記事をそのまま載せるという形での報道が可能だったようです。ただ、東スポは積極的に取材をしたわけではなく、週刊文春やニューヨークタイムズの記事をそのまま載せるという形だったと記憶しています。当時の担当は延一臣さん、のちの私の連載の担当でもありましたが、正義感のある良い記者でした。週刊文春は、芸能担当の中村竜太郎さんが担当していたと思いますが、それでも何人かいる担当者のうちのひとりでしたね。

私が取材を開始した頃は、ちょうど週刊文春は、ジャニーズ事務所と裁判になることを想定し、補強材料が欲しかったのだと思います。当時の文春は日本社会では圧倒的に孤立し、同業のメディアからも、広告代理店の電通からも追い込まれていましたからね。島田真さん(のちの編集長)から助けてほしいと依頼され、そこで、木俣正剛さん(副編集長)や松井清人編集長と話をしたうえで、これは、ニューヨークタイムズの本社を口説いてでも、書かれるべき内容だと考えたのです。文藝春秋の顧問弁護士である喜田村洋一さんの誠実な姿勢もタイムズ本社に好感を与えたと思っています。

個人的には、シムズ特派員の語った言葉が印象的で、それが取材を遂行するにあたっての使命感のようなものになっていったのを思い出します。シムズ特派員曰く、「これは、ジャニー喜多川という人物による『個人的な犯罪』ではなくて、社会全体が許容している『組織的な児童虐待』だ。座視すべきではない」というのです。それは確かにその通りでした。

取材すればするほど、心の痛む事実が明らかになってきました。何十件もの児童虐待が行われ、誰もがそれに気づいているのに、まさか広告代理店やテレビ局が共犯となって、その後、20年以上もの報復が続くとは当時は微塵も考えませんでした。彼らのやり口は巧妙です。ジャニーズ問題とはまったく無関係のことを持ち出して私たちジャーナリストを攻撃し、弁護士や同業者からの信用棄損と人格攻撃によって、社会的に抹殺していくのです。この国のメディアの低俗な限界を知った瞬間でした。

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