【ギルガメシュ】私は死を恐れ荒野を彷徨う...最愛の親友を失い不死を求めた古代オリエントの英雄【メソポタミア神話】
どーも、たかしーのです。
今回は、『ギルガメシュ』について、書いていきたいと思います!
「ファイナルファンタジー」にも登場するので、名前だけは聞いたことがあるかもしれません。
そんなギルガメシュですが、前回「シュメール人」でも軽く紹介しました。
今回は、彼の英雄譚である『ギルガメシュ叙事詩』にも触れながら、もう少し詳しく書いていきます。
※実在した人物ではありますが、神話的エピソードが多いので、神話だと思ってお読みください。
ギルガメシュを知るために抑えておきたい用語
ウルク(Uruk)
メソポタミア文明を生み出した謎の民族シュメール人によって、最初に作られた都市国家。すでに約6000年前(紀元前4000年)には、この都市に居住が始まっていたことが確認されています。
また、世界最古の文字であるウルク古拙文字が見つかったのも、この都市であり、これがのちの楔形文字の原型となりました。
ギルガメシュは、このウルクで最初に興ったとされる『ウルク第1王朝』の第5代の王として、この地を支配していました。
シュメール王名表
古代メソポタミアにおける王朝の王を列記した名簿のことです。
内容はシュメール語で記録されています。
ギルガメシュもウルクを治めた王として、その名が刻まれていますが、在位期間は、なんと126年間と記録されています(えっ…)。
なお、ギルガメシュと同時代で、実在した人物とされるウル第1王朝の王メスアンネパダの在位期間も80年間と、結構な長さを誇っていました(やはり盛っているな、これは…)。
ちなみに、この名簿の中には「5つの都市に8人の王がいて、彼らは合わせて24万1200年に渡って統治をしたが、その後、大洪水が全てを洗い流された」という記述があります。
そんな8人の王たちが治めた都市国家と在位期間が、こちらです。
アルリム(エリドゥ/在位28800年間)
アラルンガル(エリドゥ/在位36000年間)
エン・メン・ル・アナ(バド・ティビラ/在位43200年間)
エン・メン・ガル・アナ(バド・ティビラ/在位28800年間)
ドゥムジ(バド・ティビラ/在位36000年間)
エン・シパド・ジッド・アナ(ララク/在位28800年間)
エン・メン・ドゥル・アナ(シッパル/在位21000年間)
ウバラ・ツツ(シュルッパク/在位18600年間)
あまりに在位期間が長すぎるため、神話上の人物と考えられていますが、中には考古学的な見地によって、実在した王も混じっているようです(盛りすぎにもほどがあるぞ…)。
ギルガメッシュ叙事詩
ギルガメシュを主人公とする叙事詩。「標準版」とされるものは、約3300〜3200年頃にまとめられたとされています。※年代については諸説あります。
叙事詩とは、伝説的な英雄についての壮大な物語詩のことを指します。
この叙事詩で、ギルガメシュは伝説の英雄として語られており、12枚の粘土板に楔形文字で記されていました。
※なお、11枚の粘土板が本編。残り1枚の粘土版が外伝となっています。なんだが連載が終了した漫画みたいですね。
また、メソポタミア文明を代表する文学作品であると同時に、現時点では世界最古の物語とされています。
ちなみに、この中には「旧約聖書」にあるノアの箱舟の元ネタとなった話も書かれており、聖書を世界最古の物語と信じていたキリスト教徒にとっては、この叙事詩の内容はとても衝撃的だったそうです。
わかりやすく音楽で例えてみると、ある大ヒットした楽曲があり、それがきっかけでファンになったアーティストがいたとして、あとあと実は調べてみたら、昔のアーティストが歌っていた楽曲で、実は公表していなかったけど、カバーソングでしたとなると、まあショックは受けますよね。
そんな「ギルガメシュ叙事詩」ですが、その内容については、後ほどじっくりと触れていきます。
ギルガメシュとはどういう人物か?
シュメール・アッカド語で「祖先の英雄」
「ギルガメシュ(Gilgameš)」という名前ですが、アッカド語での呼び方で「祖先の英雄」を意味します。シュメール語では「ビルガメスまたはビルガメッシュ(Bilgameš)」と呼びますが、意味は同じであり、シュメール語からアッカド語へ翻訳をした際、そのまま意味を受け継いだものと思われます。
なお、ギルガメシュは死後まもなく神格化され、冥界神(死後の世界にいる神)として崇められるようになりますが、「祖先の英雄」と呼ばれていることから、これは祖先崇拝を示唆しているとして、そもそもギルガメシュは実在せず、元から冥界神だったという説も唱えられています。(確かに在位期間が126年間と記録されていたので、実在性を疑いたくなる気持ちはわからんでもない…)
3分の2が神、3分の1が人間という半神半人
ギルガメシュは、ウルク第1王朝の第3代の王であったルガルバンダを父に、女神リトマ・ニンスンを母に持つ半神半人で、3分の2が神、3分の1が人間であったとされています(ほぅ…)。
ですが、シュメール王名表によると、父ルガルバンダが王として在位した期間は、ギルガメシュよりもはるかに長い1200年間となっていました(絶対人間じゃないだろ…)。
また、ギルガメシュの出自は、母である女神ニンスンのお腹から産まれたのではなく、シュメール人が祭る神によって、その体や容姿が生成されました。諸説ありますが、ギルガメシュは女神ベレト・イリによって手掛けられ「完璧に形作った」と記されているので、容姿端麗であったと思われます。
ちなみに、シュメール神話には、人間は「土」から創造されたとあるので、ギルガメシュも、血統は神と人間のハイブリットですが、成分は「土」と考えられます。
強靭すぎる肉体とパワーの持ち主
「ギルガメシュ叙事詩」には、森の番人フンババや、聖牛グガランナと戦うシーンが記されていますが、その中で使われる武器や防具があまり重いにも関わらず、どうやら難なく取り扱えているようです。
フンババ戦では、黄金の短剣(15kg)と斧(90kg)の武器を装備し、さらには巨大な弓を携えつつ、300kg相当の武装をして挑み、グガランナ戦では、弓と剣(211.5kg)と斧(210kg)を扱ったと記されています。
また、別のパートでは、素手による掴み合いや殴り合いといった戦闘スタイルもみせており、武器がなくとも強さを誇った武人だったようです。さすがは、女神が「完璧に形作った」だけのことはありますね。笑
ただ、この圧倒的すぎる強さゆえ、己の力と権力に溺れていたのか「ギルガメシュ叙事詩」の冒頭では英雄ではなく暴君として、描かれています。
叙事詩に描かれたギルガメシュ
さて、ここからは「ギルガメシュ叙事詩」の内容に沿って、ギルガメシュとう人物を見ていきます。
※登場人物の名前は、アッカド語とシュメール語で異なりますが、今回はギルガメシュと同じアッカド語で書いていきます。
世界最古のプロローグ
冒頭ですが、なんとプロローグから始まり、ギルガメシュは『全てを見たる人』として紹介されています。そして、自分が治める国であるウルクの城壁を作らせるシーンから、物語が始まります。
実は時系列でいうと、これが最後のシーンとなります。
なので、ここから読み進めることで、なぜギルガメシュは『全てを見たる人』なのか?なぜウルクの城壁を作らせているのか?が、明らかとなっていくわけです。
暴君ギルガメシュ
最初は、ギルガメシュは人々に対し思うがままに振る舞う暴君であったと紹介がされています。これはおそらく彼が神から創造されたパーフェクトヒューマンであったので、その力に溺れ、やりたい放題やっていたということだと思います。
また、叙事詩には「神々によりすすめられた」「夫はそのあと」という記述があり、これはギルガメシュが初夜権を行使したのではないかという見方もされています。
初夜権とは、権力者が統治する地域において、新婚夫婦の初夜に、新郎よりも先に新婦とセックスすることができたとする権利のことです。
ただ、主に中世ヨーロッパをはじめ、世界各地でこのような権利を行使する権力者がいたようですが、あくまで伝説や伝承レベルであり、このような権利が実在していたのかは定かではないようです。ですが、かなり恐ろしい権利ですよね…。
別の解釈としては、これは初夜権を行使したのではなく、単に女癖が悪かったという見方もあります。
最高神アヌ「ゆけ!エンキドゥ」
こうしたギルガメシュの横暴ぶりを嘆いたウルク市民は、ギルガメシュをなんとかしてほしいと神々に訴えます。
この訴えを聞いた最高神アヌは、ギルガメシュを諫めるべく、大地の女神アルルに命じ、彼に匹敵する存在として、粘土からエンキドゥという野獣のような猛者を作らせ、ギルガメシュのもとへと送ることになります。
ギルガメシュとエンキドゥは出会うなり、激しい戦いとなり、つかみ合って格闘するようになります。
しかしながら、次第に互いの力を認めるようになり、2人は固い絆で結ばれるようになります。
これは、不良マンガとかでよくある、胸アツシーンですね!
ギルガメシュ「ひと狩りいこうぜ!」
互角の力を持つとはいえ、ギルガメシュは王、エンキドゥはその従者として、2人は行動を共にします。
あるとき、ギルガメシュは杉を得るために、杉の森へと向かい、そこに棲む森の番人フンババを討伐することをエンキドゥに提案します。
なぜ、ギルガメシュが杉を欲したかというと、神権政治を行っていた王の務めとして、神殿の建設をする必要があったが、ウルクが位置する南部メソポタミアでは森が枯渇してしまっており、資材が不足していたことが理由のようです。
しかし、この提案に、エンキドゥは涙し、森への遠征を強く反対します。
エンキドゥが涙した理由は、ギルガメシュの欲望により、フンババが授かった天命を変えてしまうことに対し、強い罪悪感を覚えたからとされています。このギルガメシュは驚き、動揺したそうです。
ですが、ギルガメシュの意思は変わらず、
ギルガメシュ「エンキドゥは後ろに付いて励ましてくれるだけでええで!」
となだめ、結果、2人でフンババが棲む杉の森へと向かうことになります。
森の番人フンババ「フンガー!」
ギルガメシュは、杉の森が太陽神シャマシュの所轄地であることから、事前に許可をもらって、2人で森へと向かいます(つまりは、神の私有地…)。
ウルクから1,500キロにも及ぶ距離をたった3日間で(!)歩いた2人は、無事に杉の森に到着し、まずはフンババの手下と戦い、勝利します(なんだかRPGっぽい展開ですね)。
ちなみに、太陽神シャマシュは、森の案内役として、合成獣と思われる遣い魔を与えるなど、この2人をサポートもしていました(なんか厨二心がくすぐられるぅ~)。
そして、いよいよ森の中から駆けつけてきたフンババとのバトル!
激しい戦いになるも、太陽神シャマシュが北風や南風など全部で8つの風を起こし(!)て、2人を援護した甲斐もあり、フンババを降参させることに成功させます。
すると、ここでフンババは命乞いをするので、ギルガメシュは聞き入れようとするのですが、これを逆にエンキドゥが却下。
結果、当初の目的どおり、フンババを殺害し、欲しかった杉とフンババの首を持って、ウルクへと帰還することになります。
女神イシュタル「ゆけ!グガランナ」
ウルクに帰還したギルガメシュですが、その勇姿に魅せられた愛と美の女神イシュタルに求婚を迫られます。
ですが、ギルガメシュは女神イシュタルの愛人に選ばれた男たちが不遇の死を遂げていることをすでに知っていたため、彼はその誘いを断ります。
すると、女神イシュタルは激怒し、父である最高神アヌに対して、ギルガメシュを殺害し、ウルクごと滅亡させることを訴えます。
しかしながら、アヌもイシュタルの気まぐれと愚かな行いの数々を知っていたため、これを拒否したのですが、イシュタルはこれに激昂し、冥界から多数の死者を蘇らせ、地上に生ける者を喰わせるとアヌを脅して、「天の牡牛」と呼ばれる巨大な獣グガランナを作らせ、地上に送ります(怖すぎだろ、イシュタル…)。
グガランナは、ウルクに降りるやいなや、地面は割れ、川の水は干上がり、国を荒らしにあらして、多くのウルク市民の命を奪いました。
この一大事に、ギルガメシュとエンキドゥは立ち上がり、グガランナを討伐します。
しかし、これにまた激昂したイシュタルは、ギルガメシュに向かって呪いを吐きましたが、これを聞いたエンキドゥは、グガランナの死骸を投げつけ、イシュタルの顔面を汚します。
※ちなみに、投げつけたのは、グガランナの牛もも肉だそうです。
これにショックを受けたイシュタルは、恨み節を言い放ったのち、泣く泣くウルクを退くこととなります。
こうして、ウルクを救った2人に、市民は歓喜し、英雄として称賛されるようになります。
エンキドゥ「アカン、ワイ死ぬみたいやわ…」
ですが、森の番人フンババと天の牡牛グガランナを倒した罪は重く、エンキドゥは不吉な夢を見るようになります。
エンキドゥが語るには、シュメールにおける神々が会議を開き、
最高神アヌ「フンババとグガランナを倒した2人のうち、1人が死んでもらわなアカンなぁ…」
と言い、これに対して、
風神エンリル「エンキドゥが死ぬべきや!」
と訴えます。これに対して、2人をサポートしてきた太陽神シャマシュは異議を唱えますが、この訴えは退けられ、エンキドゥの死が宣告されます。
ちなみに、なぜシュメールの神々によって、エンキドゥが殺さねばならなかったかというと、2人が協力しあうことで、神を超越する力を得てしまうことを恐れたからだと考えられます。
また、なぜ風神エンリルがエンキドゥの死を宣告したかですが、実はフンババを森の番人として差し向けたのは、どうもエンリルだったようです。つまり、フンババの命乞いをエンキドゥが拒否して殺害することになりましたが、これが理由で、エンリルはエンキドゥに死の宣告をしたようです。
しかも、作中からはエンキドゥはフンババはエンリルが差し向けたことを知っていたようなので、フンババの命乞いを拒否したという行為は、実は親友であるギルガメシュをかばった行為とも捉えることができます。
語り終えると、たちまちエンキドゥは体調を崩し、熱病に侵されます。
そして、熱病に倒れた12日目、共に冒険し寄り添った親友ギルガメシュに看取られながら、エンキドゥは息を引き取ります。
最愛の友であったエンキドゥを失ったギルガメシュは、夜が明けるまで激しく泣いたといいます。そして、翌日、ウルク市民に呼びかけ、金やラピスラズリでできた立派なエンキドゥの像を作らせます。また、亡くなったエンキドゥが冥界の神々に受け入れられるようにと、ギルガメシュは様々な供物を用意して、祈願をしたそうです。
ギルガメシュ「ワイもいつかは死ぬんや…」
そんな日が何日も続いたあと、シーンは変わり、ギルガメシュは泣きながら荒野をさまっていました。そして、こうつぶやきます。
ギルガメシュ「ワイもいつかは死ぬんや…エンキドゥのようではないか。悲しみがワイの心に入ってきた。ワイは死ぬんが怖くなり、荒野をさまよう。はよ、ウトナピシュティムのもとへと行かな。」
ウトナピシュティムとは誰かというと、かつての大洪水を生き残り、妻とともに不死身となった人物です。ちなみに、この大洪水のエピソードは、のちの「旧約聖書」のノアの箱舟の元ネタとされています。
ギルガメシュは、自分は神から与えられたパーフェクトヒューマンであると自負していたからか、同じく神によって作られたエンキドゥが死んだことで、心が折れてしまい、その結果、不死を求めるようになりました。
しかしながら、ひたすらさまよい続けるギルガメシュに対して、太陽神シャマシュ、また海辺で立ち寄った酒屋の女将シドゥリは、そろって「あなたが求める生命を見つけることは出来ないでしょう」と諭されてますが、それでも考えは変えずに、ついにウトナピシュティムに会うことに成功します。
ウトナピシュティムが不死になったワケ
そして、なぜ不死になることができたのか?ギルガメシュは問いかけます。
ですが、ウトナピシュティムの答えは、大洪水のときに、神から例外的に与えられたものであり、人間の手に入らないものであることを諭されます。
↓ シュメール神話における「大洪水伝説」は、こちらからどうぞ。
しかし、ギルガメシュをそれを聞いても諦めなかったため、大洪水があった時と同じ6日6晩の間を「眠らずにいてみよ」と告げ、試練を与えますが、ギルガメシュはすぐに眠ってしまい、これを乗り越えることはできませんでした。
ウトナピシュティム「若返りの植物やったらあるでぇ!」
ガッカリしたギルガメシュは不死を諦め、ウルクへ帰ろうとすると、ウトナピシュティムの妻の説得により、若返りの植物「シーブ・イッサヒル・アメル」が海の底にあることを、土産話として教えてもらいます。
これを聞き、足に石の重りをつけ、海底を歩き、その植物を手に入れることに成功します。
ですが、帰還途中、泉で水浴びをしている間に、ヘビがその植物を取って行ってしまい、ギルガメシュは泣きながら、ウルクへと帰ることになりました。
そして、物語は冒頭に戻り『全てを見たる人』として、ギルガメシュは市民に城壁を作らせたのでした。
おわりに
以上が「ギルガメシュ」について、でした。
記事の半分近くが「ギルガメシュ叙事詩」の内容になりましたね。
ただ、世界最古の物語であるこの叙事詩が、あらすじレベルでしか読めていませんが、これほどまでに面白く胸を打つ内容だとは思ってもいませんでした。
なお、私がこの叙事詩で、特に心に残ったのは、本編では書けていませんが、不死を求めたギルガメシュを酒屋の女将シドゥリが諭したときの言葉でした。
正直、死ぬことを恐れても仕方ないよなぁと思わせてくれる、そんな言葉だと思いました(最後のほうは、若干エロいですが…)。
あと読んでわかる通り、ほぼほぼ神話チックな内容なので、これぐらい偉大な王だったのだよとストーリー理解させるための話だとは思いますが、3分の2が神であるとはいえ、かなり人間味のある人物で、私は好きですね!
少なくとも、スサノオよりは、サイコパスじゃなくて、とても共感が持てました。笑
他にも、この歴史上の人物や神話などをベースに、記事を書いていく予定ですので、是非フォローなどしてもらえるとありがたいです!
それでは!