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歌謡曲レコード その4  TIMELY!!(83)/杏里 世界を席巻!シティポップの代表格

「キャッツアイ」「悲しみがとまらない」の2曲の大ヒットを収録した83年の杏里の代表的なアルバム「TIMELY!!」。いま、これが世界中のアナログコレクターの間で大流行しているという事実。

2020年現在、世界の音楽ブームはいまだアナログレコードであり、日本産シティポップがダントツで高いニーズを誇っている。この流れはかれこれ数年続いており、勢いは衰えるどころかますます旧譜の復刻や再プレスがかかるなど毎月リリースラッシュというのをご存知だろうか。この事実に気づいていない人は、いったい音楽業界では何が起きているのかと、寝耳に水な驚きで興味が湧く切っ掛けになってくれたらなんか嬉しいな。

シティポップを語る上で外せない「名盤」といわれる作品がいくつかある。そのひとつが杏里のこのアルバムだ。すべてにわたって角松敏生が関わり、杏里の専売特許である夏のイメージと、角松敏生が得意とする都会派のプロダクションをシンクロさせたアダルト・コンテンポラリーなアルバムに仕上がっている。

このアルバムを聞いて改めて思ったのが杏里の歌唱力の高さだ。ときたま一本調子の時もあるのだが、抜群のリズム感、外さない安定した音程感、低音から高音まで伸びやかでスムーズな音運びができる喉のコントロール。小出しにする歌謡曲調の節回し(これが凄くすき!)。いずれも高いテクニックと、若さ故かもしれないが器用にこなし、角松氏の多彩なアレンジに負けじと応えている。

この作品のブームが、単にシティポップというジャンル的なものだけでなく、しっかり説得力のあるヴォーカルアルバムとして世界的に評価されているのだと確信できる。

さて最近韓国のDJ、NIGHT TEMPOなる人物が日本の歌謡曲をクラブミュージックで現在に蘇らせ若年層にその魅力を浸透させてきているのをご存知だろうか。一連のブームの立役者であり、その彼が手掛ける「NIGHT TEMPO PRESENTS ザ・昭和グルーヴ」というシリーズは特に世界中で人気のコンテンツになっている。さらに渋谷をはじめとする都内のクラブやフジロックなどのフェスで大好評だという話しも、昭和歌謡を現体験してきたわたしにとっては嬉しくあり、新たなリミックスで蘇った数々の好きな曲にあらためてクオリティの高さを感じる良い機会となったのは確かだ。

もちろんこのNIGHT TEMPOも杏里はチェック済み。「TIMELY!!」から「REMEMBER SUMMER DAYS」という曲を4つ打ちのクラブアレンジにしているのだが、オリジナルが良い曲だけにこのアレンジはオリジナルを超えてはいないけど、そんなのどうでもよく、杏里のこのマニアックな曲がヒットメイカーの手によって陽の目を浴びたということが大事だと言いたい。

「TIMELY!!」とタイトルされたこの作品は、当時もいまもタイムリーな瑞々しさと涼感溢れるサウンドプロダクションで色褪せない。聞く人それぞれのタイミングにマッチできる希有な作品であると感じた。

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