眉間のシワをどうするか、娘にとっての思い出は、タイ米は当然タイカレーと合うわけで
早朝、ドンという揺れで目が覚めました。3月11日という日に地震、あまりいい気分ではありません。
ドスドスドス。
いつものように娘の足音。トイレです。そのあと、こっちに向かってきました。
「なになに」
「こっちで寝る」
そうですか。娘も地震で目が覚めたのでしょう。ベッドを明け渡します。
移動して二度寝。
朝の薬の時間です。朝食は近所のパン屋さんで買ってくるつもりです。娘もそれでいいと言います。
「なんか、これ買ってきてっていうのある?」
「ない」
「じゃ、いつもと違うの買ってくるね」
「んあ」
娘にはみっつ、私はふたつ。パンの値段はまた上がった気がします。焼き立てで美味しいのは間違いないのですが、頻繁に買う値段ではなくなりつつある気もします。土曜の朝なのに空いていたのも気になります。以前は行列でした。
パンを食べて薬を飲んで。なるべく今まで買ったことのないメニューにしましたが、どれも美味しくて、値段だけのことはあるなあと。しかし、歯周病で歯茎だけでなくアゴの調子もイマイチの私には噛みごたえのあるパンはやや厳しい面も。次は柔らかいのを中心にしよう。
娘の眉間のシワが気になります。娘、何も考えていない時は眉間にシワが寄るのです。(元)妻もリラックスしている時はちょっと怒っているような表情でした。似るんだな、そういうところ。
「眉間にシワ寄ってるよ。笑顔、笑顔」
娘はいつもだいたい何も考えていません。なので眉間にシワを寄せていることがほとんどです。
私に指摘されて娘が眉間に込められたチカラを抜こうとします。しかし、いつものようにうまくいきません。
「スマイル、スマイル」
私が口角を上げて笑顔を作って見せると娘も真似します。しかし、うまく真似できていません。いつものことです。それでも今日はいつもより少し笑顔に近かったかもなあ。発達障害の子供は作り笑顔が苦手で写真写りが極端に悪い子が多いそうです。娘もまさにといった感じです。
娘、お昼どきは寝ていました。2時半頃に起きてきたので、お昼はタイ風のランチでいいか確認してから買い物に向かいます。
と、その前に、今日が何月何日か聞いてみました。
娘はデジタル時計を確認します。日付の感覚はかなり前からあやしいです。
「3月11日」
「なんの日だか、わかる?」
娘はカレンダーに目を向けます。祝日かどうかを確認しているようです。
「12年前の2011年、3月11日の午後2時46分」
ヒントを出しました。
「わかんない」
まあ、そうだよな。
「東日本大震災の日だね。揺れたの覚えてる?」
「んあ」
「今朝も揺れたよね」
「揺れた」
地震については特に思い出すこともないようです。
地震と同じ年の9月、中学生の娘は「霊の声が聞こえる」と言って私と(元)妻に異常を訴えました。すぐに重大な事態だと気がついた私は、その日のうちにあちこち電話して病院を予約しました。
遅いランチは湯取り法で炊いたタイ米でタイカレー、鶏唐揚げとエビ唐揚げにレタスとキュウリを添えてスイートチリソースで。娘にはビールも。
「ビール、シンハービール買ってこようかと思ったんだけど売ってなかったからドイツのにした」
「んあ」
やっぱりタイカレーにはタイ米だなあ。カレーはイナバの缶詰です。タイ米を茹でる鍋で一緒に茹でました。カレーもスイートチリソースも辛くて、娘はビールが、私は水が進みます。私としては毎日タイ米でもいいぐらいですが、それだとさすがに高くつくので、そろそろ普通の米に切り替えます。
その食事の時も娘の眉間のシワを指摘しました。私に付き合って眉間のシワを取ろうとしてくれる娘ですが、やっぱりうまくいきません。娘が真剣に作り笑顔を作ろうとする表情を見てこちらが笑ってしまいました。そんなに難しいかなあ、口角を上げた作り笑顔。
まあ、難しいんだろうな。
◇ ◇ ◇
(元)妻が出ていく前の私と娘との三人の暮らしをつづったこのnoteの一部が本になっています。書店で見かけることはまずないレアなアイテムなので、お求めの場合はなるべくお早めに。
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