男になりたい、躁なのかもね、帰りたくない夕暮れ時に

一昨日の夜中、娘の二度目のゲロで起こされた私はトランクスとＴシャツという格好で洗面所のゲロを掃除していました。その姿を見た娘が「それ、いいね」と言います。なんのことかと思ったらトランクスのことでした。

「そういうの買ってきて」

「え、トランクスってこと。いいけど、また男になりたいの？」

「そんなことないよ」

笑っていました。

「ワークマンで買ってきて」

「いや、ワークマンじゃなくてしまむらで買ってくるよ、土曜か日曜に」

そのあとにゲロ吐いてスッキリしたということでよく寝たのでした。

トランクスを買ってこいという話は昨日も覚えていて「買ってきて」と言われました。わかったよ、土日のどっちかにファッションセンターしまむらに行くから。

ここ最近、娘の機嫌がよくて、笑ったり歌ったりしています。部屋でひとりで急に笑ったりもします。

「怖いからやめて～」

誰もいないところでなんのきっかけもなく急に笑い出すのはいわゆる「空笑」と呼ばれるあれです。タイミングによりますが、怖かったり気持ち悪かったりすることが多いです。

昨日も歌ったり笑ったりしていました。よい状態と言えばよい状態なのですが、もしかすると「躁状態」なのかもという心配もあります。単に陽気になるぐらいなら全然問題ないのですが、統合失調症の病的な躁は例えば自傷行為などに結びついたりということもないわけではないのです。なんというか、悪い方向にポジティブになるというか、そういうことも考えられます。なので、けっこう心配です。

今日はお昼にブリの切り身や玉子焼き、サラダ等々でご飯をたっぷり食べてもらいました。ブリはバルサミコ酢と砂糖と醤油でてりやき風にするつもりでしたが、アルミホイルでくるんでグリルで焼いたら照り焼きのタレの部分がアルミホイルから吹き出してしまい、味が薄くなってしまいました。フライパンで焼けばよかった。玉子焼きは玉子三個に塩昆布入りです。こちらは大変美味しく焼き上がりました。

食後、満足げな娘が「しまむらで買ってきて」と言い出しました。病的な躁の時は他人に対しても要求がきつくなりがちです。

「行くよ、あとで」

「早く行ってきて」

「うるさいなあ、今すぐ行って来いとか、ママと一緒だよッ！」

（元）妻も厳しく私を急かすことが日常でした。あれ、腹立つんだよなあ。ママの悪いとこ真似しなくていいよ。

３時過ぎに出かけて用事を済ませて、帰る頃にはだいぶ時間が経っていました。急いでファッションセンターしまむらに向かいます。店内で男物のトランクスを探します。娘の場合は３Ｌだな。あとパジャマ代わりの薄手の半袖Ｔシャツ（メンズＬＬ）と、外にも出られる少し厚手の長袖Ｔシャツ（メンズ３Ｌ）を買いました。私が着るのよりでかいです。あとは私の靴下も。

娘に急かされていた買い物も済んだので、あとは帰るだけです。途中でスーパーに寄って夕飯の食材でも買うかなあ。炊飯器空っぽだから弁当にするか。でも娘、昼にたらふく食ってるから腹減ってないかもなあ。今日は風呂はいるのかなあ。アイス切らしてたな。

そんなことを考えながら自転車のペダルをキコキコと漕ぎ続けます。夕暮れ時になりました。

なんだか家に帰りたくない。

このままどこか遠くに行ってしまいたい。

あの橋を越えて行こうか。それとも大きな通りを家とは逆の方向に進んでいこうか。

でもなあ、なんか腹の調子がイマイチだから、途中でトイレに行きたくなると面倒かもなあ。橋を越えた先にはそこそこ大きいスーパーあったな。あそこでトイレに行けるな。大きな通りでスーパーはだいぶ先だなあ。跨線橋を越えたもっと先に大型のショッピングモールがあるけど、あそこまで行くのは遠いなあ。

キコキコと自転車を漕ぎながら、結局いつもより少しだけ遠回りして帰りました。途中でトイレに行きたくはなりませんでした。

娘が起きてきました。

「買ってきたよ」

「ありがとう」

めっちゃ嬉しそうだな。そんなに男物のトランクスが履きたかったのか。

かなり昔、生理がひどくてナプキンでかぶれそうになった時に娘はしばらく男物のトランクスを履いていた時期があります。でも、考えてみるとあれも男になりたかったとか、そういうことだったのかもなあ。

夕飯ややはり食べないそうです。ですが、風呂には入るそうです。なぜなら風呂に入ったら買ってきた男物のトランクスとＴシャツに着替えていいよと私が言ったからです。

それにしても嬉しそうだな。マジ躁状態？　大丈夫か？

風呂上がり、娘は新しいＴシャツとトランクス（その上からパジャマ代わりの男物のステテコを履いています）が嬉しいのか、声を出して笑っていました。いや、いい笑顔なんだよ、いい笑顔なんだけど、大丈夫か？

アイスも食べて、寝るそうです。

部屋の扉を閉めた瞬間から笑っていました。

大丈夫か？

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