2年も飲まずにいられたら
一昨年の12月11日に最後のアルコールを飲んで以来、一滴も飲まない生活、気がついたら2年を経過していました。もうこのまま飲まずにいられる気がします。
いちおう、「出した本が重版(増刷)したら飲む」と決めていますが、ほぼ一年前に出た『シネシネナンデダ日記』が増刷されることはないので、次の一冊に賭けています。次はあるのか。ない気もする。
どちらにせよ、2年も飲まずにいられるというのは自分でも少し驚きです。この間、飲みたくなった日が無かったわけではないです。正直「もうやってらんねえんだよぉ」みたいな気分の日もありました。(元)妻が出ていって自暴自棄になる可能性もまったく無かったとは言えません。いや、無かったか。
それはともかく、夏の暑い日に「ああ、こんな日に枝豆と冷えた生ビール、たまんねえだろうなあ」とか、冬の寒い日に「ああ、こんな日に鍋と冷えた生ビール、たまんねえだろうなあ」とか、そういう気持ちがこれっぽっちも無かったと言えば嘘になります。今日ぐらい飲んでもいいんじゃねえか、そう思う日もありました。
ですが、飲みませんでした。
家でもそうです。この料理はワインが合うな、とか、この料理は日本酒が合うな、とか、これはチューハイでいけるだろ、とか、ハイボールもいいんじゃないか、とか、そういう日もありました。
ですが、やっぱり飲みませんでした。
たまに娘に飲ませてるのはコテンと寝てほしいからだけでなく、私が飲みたい気分の時に代打で飲んでもらっているのかも。いや、そういう気持ちもないです。これで寝てくれと念じて飲んでもらっています。
実は、飲まない理由は明確にあります。それは、飲みだしたら止まらなくなるんじゃないかという危惧です。そこまで酒が強いわけではありませんが、一緒に食べるものやチェイサーによってはそこそこの量を飲んでしまいます。若い頃は、いや、けっこうな年になっても、それで沢山失敗しています。
飲み過ぎて失敗が心配なのではなく、アルコールを飲み始めると依存してしまいそうな不安があるのです。なぜなら私にとって現実はあまりにツライので酒に逃避してしまうのではないかと、自分で自分が心配なのです。飲んだら気持ちが楽になってしまうのではないか。飲んで楽になりたくなってしまうのではないか。外出したら戻ってこれなくなるのではないかという心配と同類です。
そういう心配以前に、酔っ払ってしまうと日常の諸々が追いつかなくなってしまうのは単純に困ります。娘の薬の用意は面倒だからと言ってもサボるわけにもいきません。食事は弁当や惣菜を買ってくることでいくらでもサボれます。なので積極的に手を抜くようにしていますが、薬はそういうわけにはいきません。
それと、酔っ払って自分に歯止めが効かなくなるのも恐ろしいです。私自身が娘に腹を立てることはしょっちゅうです。酔って私が暴走したら、娘に危害を加える可能性もあります。人間の理性というのは酩酊によって簡単に破壊されます。そういう例は子供の頃から身近でした。私の父がそうだったので。
父はよく酔っ払って母や姉や私を殴っていました。酔わなくても怒りに火がつくと止まらなくなりました。やがて年をとり、駅からの帰り道にある自動販売機で買ったワンカップの酒を煽るように飲んで一瞬で酩酊し、家にたどり着く頃には呂律は回らず千鳥足で。ポケットの中の家の鍵が出せずにガラス戸を蹴り破って大怪我とか、そんなこともありました。情けない。
そういう姿を見ていると、自分もああなってしまうのではないかと、そういう危惧が常にあります。そして、残念なことに、仕事の一環だからと言って深酒していた頃の私は父とそれほど変わらぬ無様な姿でした。
もう、ああいうのはいいんじゃないかな。いいと思います。
もうひとつ、あとから取ってつけたような飲まない理由があります。趣味のWebサイト作りというかプログラミングですが、これは飲んでるとさすがに無理です。いや、私ごときの書くショボショボのプログラムなど酔っ払っても平気だぜというレベルではないかとも思いますが、それでもなあ、なんか細かいデバッグみたいな作業もそうだけど、英語のマニュアルとか必死で読むのは酔っ払ってると単純に無理です。
英語を読むで思い出しました。娘が文章を読んでも何も分からないあの不安な感じは、まったく読めない言語の文書を読まなければならない時の不安と似ている気がします。(元)妻はよく「わからないことは怖い(と思ってしまうんじゃないか)」と言っていました。怖いのもそうですが、私はもっと単純に全然分からない文字列を読んでいると頭がグルグルしてくる気がします。酔っ払って難しい文章を読んでいる時も似た感じです。何を読んでもあれだと思うと娘がかなり気の毒です。ツライだろうなあ。
2年も飲まずにいられたので、これから先も飲まずにいけそうです。忘年会や新年会も行かないぞ、えいえいおー。
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