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❨820❩1973.11.27.火.晴/モロッコ・タンジールの町とハッシシ/タンジール:モロッコ

アルジェシラスより、フェリー(98ペセタ)に乗り、スペイン領 セウタまで渡る。
ジブラルタ海峽は、波もおだやかだった。
北アフリカ、モロッコに入る。暑くなった。

3時半のタンジール行きのバスに乗る。大型 56ペセタ。
ここのバスは、おとなしくしていると、 荷物代をボラれる。荷を上へ上げたというだけで、25ペセタ要求してきやがった。
人間56pstで荷物が25pstとは、頭に来た。
5ペセタ値切るのがやっとだった。

国境ではしばらく待たされ(パスポートに判を押すのみ)、やっと抜ける。
狭い舗装の道を、ガタガタバスは走る。途中1時間半、止まった。

4時間程のバスの旅の間、何度ポリの検問があっただろう?全く、俺達にとって迷惑以外にないことをする。

バスが止まる度に、子供が食物やマリワナ、ハッシッシを売りに入って来る。全く商売上手には、感心する。

器用な子供は、英語、仏語、西語、モロッコ語を使い分ける。態度やしゃべり具合を見ていると、もう立派な大人と変わらない。
下手すると、逆にからかわれ、バカにされそうになる。

タンジールへ夜入り、バスを降りると、5人ホテルの客引きが寄って来た。
どこも5ダラハムだったが、一番値切れる男の所へ行く。

7人一緒に(船で一人加わる)、レストランで食事する。スープとヒツジ肉のスパゲッチ、サラダ(4.5.ダラハム)。


<タンジールの町>

もうスペインのムードはない。人間が変わった。浮浪者と子供が目に付く。ゴチャゴチャと並べて民芸品を売る店が多い事。

老人はターバンを巻き、ジュラバ(袖付き、帽子付きの、足首までもある長いコート)を着ている。女性も同じような服装に、マスクをしている。

道を歩くと「コンバンワ」とか「チノ」 (中国人のこと)とか、声がかかる。中南米に似たところがある。実に騒々しいが、これが俺は面白いのだ。

メイン・ストリートを外れ、路地へ入ると、まるで迷路、上下左右、2m半位の石畳の道が続く。方角などサッパリ分からなくなってしまう。 一人ではとても入れない所だ。

<ハッシシの中で>

皆んながハッシシを買おうと云い出し、子供の案内について行く。約3〜4g位を、20ダラハムで買う。

タバコの粉と半々位に混ぜ、巻き直して吸う。害はあまりないというが、どうだろう?
この辺でも禁じられてはいるが、半分公みたいなものだ。スグに手に入る。

一本を一服ずつ、回しながら吸う。
約15分ぐらいから、酔いが来るー一常連は、それを「とぶ」と云うーー全員静かで、殆ど、話さない。

俺はとぶと、体が動かなくなり、重くなる。しゃべりたいと思っても舌がもつれたり、チンプンカンプンなことばかり話すようになる。そして話しながら、スグ忘れていく。
他人の話す事が、つまらない事でもおかしくなり、ケラケラ笑い出す。

始終、自分が二人いて、各々別の事をやっているようだ。仲間の中に居る事さえ忘れてしまい、誰かが音を立てたり(咳でも)、話したりしない限り、一人ぼっちの、スゴク静かな、寂しい思いをする。

沢山の夢を、目を醒まし座ったままで、見る。目を閉じていると、深い幻覚の世界に入って行き、暗い窓のない空間の中へ、吸い込まれて行きそうになる。その時、目を開く事に、大変に(妙な)勇気がいる。
頭だけが涼しく冴えていて、体は石のように重くて立つ事も出来なくなってしまう。
カラの中から懸命に手を伸ばそうとしたり、 立ってみたい、立とう、と考えるが出来ず、すぐに諦めてしまう。全く面白い。

ある男は、演劇のような言葉になったり、悪 魔が見えると云ったり、目をひきつりながら訳の分からない事ばかり話しておいて、醒めた後は、ケロッとしておとなしい男に変わっていた。

ちょっと、俺も驚いてしまった。自分でも、かなり効いている事が分かった。
不思議な世界で、一人座っているみたいで、奇妙な感じだった。

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