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015:水処理の領域にAIを! メタアクアプロジェクト始まる|クレイジーで行こう!第2章

連結売上高2,600億円のテーブルをひっくり返せ!

イノベーションを起こすには、不確実性に身を投じる必要がある。

僕たちは世界の水処理大手企業である「栗田工業」とともに、あるイノベーションを起こそうと奮闘している。連結売上高2,600億円を誇る栗田グループのコア技術(プロセス)を、ソフトウェアによって抜本的に進化させる。教科書に書いてあることを勉強するのではなく、不断の挑戦によって、10年後、20年後に教科書に載ることを、世界で最初にやる。

栗田工業がフラクタの発行済株式数の過半数を買収(M&A)し、連結子会社化したのは、2018年5月のこと。書籍『クレイジーで行こう!』にも書いた通り、当時の飯岡会長(現上席執行役員)や門田社長、伊藤専務が強くリードしてくれたことで、この資本業務提携が実現した。

栗田工業の事業の中心は「水処理」で、専業としては国内最大手だ。僕たち日本人は、処理した水によって作られたものを、生活のそこかしこで無意識に使っている。例えば、普段飲んでいる炭酸飲料などの清涼飲料水も、安定した味を提供するために、水道水などから更に不純物を除去した、より純粋な水を使用している。電子部品メーカーの製造プロセスにおける部品の洗浄などにも、極めて純度の高い水が必要とされるケースが多い。さらには、工場排水から有害物質を除去してきれいにしたり、再利用(リサイクル)したりする場合にも、水処理技術が使われている。栗田工業は、1949年に創業されてから、水処理のための薬品や装置を開発、製造販売し、メンテナンスサービスを提供してきた。

そんな栗田工業が、フラクタの買収により期待していたことのひとつに、同社内でのイノベーションの創出があった。2019年の夏ごろから、書籍『クレイジーで行こう!』でも活躍したヒロと僕、栗田工業の飯岡会長、門田社長で、イノベーションの在り方やフラクタの役割について何度も議論してきたのだった。

ただ、2018年提携当時のフラクタは10名ほどの会社で、本業以外の分野ですぐに動き出す余裕がなかった。現在、フラクタは全体で40人規模にまで成長し、日本を拠点としたチームもできた。念願の体制が整ったと言える。

研究重視の創業者精神は、意志を引き継ぐ者たちのイノベーション重視経営へ

第三次AIブームと言われてずいぶん経つ。2度のブームが終焉したのは人々の落胆があったわけだが、今回に限っては、ディープラーニングを皮切りに、AIを実用的に使える機運が高まっている。栗田工業でも、AIやIoTを積極的に活用しないと競争優位性を失うではないかという危機感を持つようになっていた。

フラクタは栗田工業と協力して、水処理でAI・IoTが生かせそうな分野の調査をした。目星をつけたのは、水処理プラントを設計・建設するプロセスと、プラントの建設後の運転管理という2分野。AI・IoTを使うことで自動化や効率化を極限まで進めることができれば、大きなコスト削減になる。

ただし、AIの開発は複雑性が高く、実用性があいまいになりやすい。一般的なシステム開発はプロセスが明確で、さほど大きなズレはなく進んでいくが、AIの開発はそうはいかない。「やってみたがうまくいかなかった。理由はよくわからない」という結果になりがちだ。思いきった投資をして、早く、そして多くの失敗をしながら、辛抱強く進めていかなくてはならない。

多くの日本企業でイノベーションが生まれにくいのは、ダイナミックに、かつ辛抱強く投資するのが苦手だからだろう。「すぐに投資対効果が上がらないのではないか」「うまくいっていないじゃないか」「プロジェクトは解散した方がいい」と早すぎる判断を下してしまう。イノベーション、特にAIの分野では、そういった姿勢では成功しない。

『クレイジーで行こう!』(日経BP刊)でも紹介したが、元々栗田工業という会社は、苛烈な性格と挑戦の魂だけを頼りに、創業者の栗田春生が描いた壮大な夢だ。かつて花盛りだった一高・東大礼賛の学歴主義、また口先ばかりのサラリーマン主義を排し、田舎者だろうが地頭が良くて根性のある人材を重用し、行動ベースの「アメリカ型」組織を好んだ。

強気しかない男、栗田春生。創業当初、物やサービスが売れなかろうと、ちょっとしたゲームに勝てなかった程度だ、明日はまた別の手でやってみれば良いといった感じで意に介さなかったそうだ。頭がよく、トンチの効いた、本質論者。現実的研究重視の社風は、この頃に培われた。

時代は変わり、栗田工業は連結売上高2,600億円の巨大企業になった。ハードウェアを中心とした現実的研究重視の姿勢は、いまソフトウェア、さらにはビジネスモデルを組み合わせた形で、イノベーションとして昇華する。門田社長、飯岡会長(現上席執行役員)、伊藤専務は、フラクタとの合弁プロジェクトによって、時代に合わせた形で、創業精神に回帰したのだ。

今回、栗田工業は思い切った投資をし、フラクタ側はエース級の人材を投入した。僕と一緒に話を進めてきたヒロや、日本の技術チームを引っ張ってきた主任データ・サイエンティストである羽鳥君をはじめとして、フラクタ内でも主要なメンバーを集めてFracta Leap株式会社を立ち上げ、数年がかりの「メタアクアプロジェクト」をスタートさせた。

社会への温かな眼差しも忘れず

水資源の不足は、世界的な社会課題のひとつだ。

水資源が豊富な日本では強く実感することがないため当事者意識が低いかもしれないが、日本の生活の多くは輸入されたもので成り立っている。商品を製造する過程で、現地の工場や農場ではたくさんの水が使われている。そのため、そこに住む周囲の人々が深刻な水不足に悩まされている、というケースがあるのだ。

水処理は、特に先進国以外の自治体や企業から見れば、まだまだ設備コストや運転コストが高いという問題がある。AI・IoTで安く効率的に安全な水処理ができれば、世界中できれいな水を容易に作れるようになり、最終的には水不足の解消に貢献できるだろう。Fracta LeapはAIの会社だが、ただ単に最先端だからAIを扱うのではない、こうした社会課題に対してアプローチしていくことがミッションとなるのだ。

そのためには、水処理の専門家である栗田工業と、AI・IoTの技術に長けたFracta Leapで強力なタッグを組むことが不可欠になる。

イノベーションを起こすには、スタートアップ的なカルチャーが必要だ。それには、早い決断や、「とりあえずやってみる」という姿勢、すぐに変更する朝令暮改といった側面がある。栗田工業とは、コミュニケーションの量と質を高め、カルチャーギャップをフィットさせていかなくてはならない。その点も、本プロジェクトの難しさのひとつだろう。

始まったばかりのFracta Leapの挑戦。僕たちは世界規模の社会課題に立ち向かい、サステナビリティな社会インフラを実現すべく進んでいる。

この記事で書いた栗田工業との取り組みが日経新聞にも掲載されました。興味のある方は、以下のリンクをご覧ください↓↓↓↓

(記事終わり)

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