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現代の暮らしの中で、火のありがたさを実感することは、なかなか難しいことなのかもしれない。ぼくは薪での風呂たきも、かまどでの飯炊きも経験がない世代で、ガスコンロのスイッチをひねれば簡単に火が得られる環境で育ってきた。いや、自宅はオール電化で、そもそも暮らしに火が必要ない家庭も今では珍しくないだろう。そんな現代人が、例えばキャンプやバーベキューで火を起こそうとして、なかなか思うようにいかず、そこで初めて火の尊さを思い知るのである。 少し前、仕事の関係で大内正伸先生宅に泊めさ
スマートフォンのカメラ性能は毎年のように進化する。もはや写真は「スマホのカメラで十分」という人も多いことだろう。 一方で、その手軽さからどんどん撮影を重ねた結果、どこで、何を撮った写真だか分からなくなることはないだろうか。もしかしたら撮影したらそれっきり、二度と開かない写真もあるかもしれない。 写真と同じく、山や旅の記録方法も随分と様変わりした。例えば登山なら、山地図アプリでログをとり、写真を添えてSNSに共有するのが、今どきの登山記録の在り方なのかもしれない。
山に出かけるときの、悩みのひとつが財布だった。日常に使うような大きな財布を持っていくわけにはいかないし、コンパクトな財布でも使いづらいとストレスになる。ならばいっそ財布を持たなければどうか。 電子マネーで全ての支払いを済ませられるといいのだが、山の施設ではまだまだ現金が主流だ。あれこれ試行錯誤して、たどり着いたのが「mont-bell (モンベル)トレールワレット」である。コンパクトで軽い財布ながら、紙幣や硬貨を使いやすく収納できる点が気に入った。 小さい 軽い
日本には古来より受け継がれてきた素晴らしい道具がある。漆器、金工、曲げわっぱ、足袋、扇子、日本刀……。ぱっと思いつくだけでもこれだけの道具を挙げられるが、その中から、ぼくが旅や日常で愛用しているのが手拭いだ。 山中でも街中でも、手を拭ったり額の汗を拭ったりするための布巾は欠かせない。多くの人はタオルやハンカチを利用していることだろう。だが手拭いの良さに気がついてからは、ぼくはすっかり虜になってしまった。手拭いは乾くのが速く、薄くかさばらない。魅力はこの点に尽きる。
10数年ぶりにポケットナイフを新しくした。 長年の使用に耐えてくれた「ビクトリノックス・トラベラー(現・クライマー)」は既に傷だらけだ。まだまだ現役で使えるのだが、そろそろ買い替えてもいい頃合いだろう。 ぼくが新しく選んだのは同じくビクトリノックスの「エクセルシオール」、旧称スーベニアだ。世界で初めて女性によるエベレスト登頂および七大陸最高峰登頂を果たした田部井 淳子さんが愛用したことで知られる、シンプルなポケットナイフである。 アウトドアナイフと聞くとどのよう
とある中古カメラ店の、2階へと続く階段を上がる。ライカ、ハッセル、ローライその他、高級舶来カメラが美しくディスプレイされるケースの奥に、大小さまざまな三脚がところ狭しと並べられていた。その中からひとつ、大型の三脚を選び出し、雲台を操作し足を伸ばし、状態をまじまじと観察した。レジに向かうまで、さして時間はかからなかった。 ベルボンマーク7DSV。今はもう廃盤になった、プロユースの三脚だ。総重量は5㎏に迫る本格的な大型三脚である。 言うまでもないが、三脚はカメラを固定す
航空機と同じ素材で作られたハンディーライト。そう聞いて、ワクワクしない少年など世の中に存在するのだろうか——。というのはぼくのいささか偏った考えかもしれないが、アウトドア、ミリタリー分野に関心のある人が、ハンディーライトと聞いて真っ先に思い浮かべるのがマグライトである。 ぼくが10代だった90年代後半から2000年代初頭、マグライトはタフに使えるハンディーライトの代名詞だった。航空機に使われるアルミ合金を削り出し、特殊コーティングにより耐腐食性を向上させた強靱なボディー
旅のお供に文庫本を1冊選ぶとするならば——。 この難問に応えうる愛読書をいくつかピックアップしてみると、『旅をする木』/星野道夫、『つむじ風食堂の夜』/吉田篤弘、『思考の整理学』/外山滋比古、『風の歌を聴け』/村上春樹などが思い浮かぶ。いずれも一度だけでは飽き足らず、何度も読み返しているぼくの一軍リストである。 ここにもう一冊加えたいのが、ぼくの読書の原点『緋色の研究』/コナン・ドイル——顧問探偵シャーロック・ホームズとその友人ワトスン博士が主人公の、シャーロック・
実家の荷物を整理していて、懐かしいかばんを見つけた。厚みのある上質なヌメ革と帆布からなるブリーフケースだ。 これはぼくがリーガルシューズに勤務していたときに通勤かばんとして使っていたものだから、購入からかれこれ15年以上は経過したことになる。当時まだ22歳で社会人に成り立てのころだから、だいぶ無理をして買ったはずだが、購入時のことは覚えていない。今となってはメーカーやブランド名もすり切れて分からなくなってしまった。が、放置していたにもかかわらずほとんど傷みがないところを
ある日、鏡に映った自分の姿が、子供服を着た大人のように見えて嫌になってしまった。『日々の100』の著者・松浦弥太郎氏が同書で語っていたことは、こういうことだったのかと、しみじみと腑に落ちたのだ。 夏はだいたいTシャツとジーパン、それにスニーカーで過ごしてきた。が、40歳を目前に控えた大人が、それらを相応に上品に着こなそうと思えば、実は難しいスタイルだと思い知ったのだった。 そこで久しぶりに靴を新調した。リーガルの定番商品「No.2504」である。 ぼくがリーガル
ナイフがアウトドアの象徴であった時代は、もうとっくに過ぎ去ってしまった。 現代のアウトドアは凝った料理や焚き火をしないのであればナイフの出番はない。 それでも、多くのサバイバルテクニックが刃物の携帯を前提としていることから、緊急時の装備として、小型のナイフを携帯している人は少なくないことだろう。そして今、広く普及しているのは西洋式のスポーツナイフである。 肥後守は純日本製のナイフだ。 ある世代にとってはとても懐かしい、当時の日本の生活に密着していた、和式折り
日本光学のニコマート 大阪の地下街にある、とあるレンタルボックス店の片隅で、鈍い輝きを放つ金属の塊を見つけた。ボックスにところ狭しと並べられたカメラやレンズ群の中から、「Nikomat(ニコマート)」のロゴがキラリと光るのを感じたのだ。 あっ、コンビニじゃありませんよ、念のため。 1965(昭和40)年に、日本光学工業(現・ニコン)から発売された、中級機マニュアルフォーカス一眼レフである。 タグを見ると〈動作○、モルト交換済み、露出計1段アンダー|2,980円〉と
ある年の春、大阪府の五月山を歩いていて、ツツジに似た大きな花を見つけた。 4〜5月はたしかにツツジの見頃だが、それにしては花も木も大きいようだ。それに、花をつける枝の先にはぼくのコブシ大もあるつぼみをつけているのである。 この花はなんだろう。 そんな素朴な疑問を感じたぼくは、大きな花とつぼみを脳裏に焼き付け、フィールドノートにメモを取る。一緒にいた妻はカメラで撮影した。 昼食をとりながら、バックパックに持参していた図鑑を取り出す。 『葉で見分ける樹木』
普段、当たり前のように使っている食器洗いスポンジと合成洗剤に、僕はふと疑問を抱いた。これらは本当に、生活になくてはならないものなのだろうか。要は食器を衛生的に保てればいいのだろう……と。このモヤモヤを、「びわこふきん」が解決してくれた。 びわこふきん びわこふきんとは、洗剤を必要とせず、お湯で食器がきれいに洗えるふきんのことだ。「がら紡績」で紡がれたふきんで、愛知県・豊橋の「朝光テープ有限会社」が製造している。 1875年に日本で発明された「がら紡績」は、愛知県を中心