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革製品を洗える石けん「M.モゥブレィ・サドルソープ」

 実家の荷物を整理していて、懐かしいかばんを見つけた。厚みのある上質なヌメ革と帆布からなるブリーフケースだ。


 これはぼくがリーガルシューズに勤務していたときに通勤かばんとして使っていたものだから、購入からかれこれ15年以上は経過したことになる。当時まだ22歳で社会人に成り立てのころだから、だいぶ無理をして買ったはずだが、購入時のことは覚えていない。今となってはメーカーやブランド名もすり切れて分からなくなってしまった。が、放置していたにもかかわらずほとんど傷みがないところを見ると、素材や仕立ての良さがうかがえる。

 もう一度、このかばんを使いたくなった。

 となると、まずは手入れだ。傷みがないとはいえ、さすがに革が乾燥しているし、雨ジミも目立つ。こんなときは「M.モゥブレィ・サドルソープ」を使って、丸洗いするのが一番である。

 サドルソープとは、要するに皮革用の石けんのことだ。通常の石けんとは違い保革成分が含まれており、乾燥してもしっとりと仕上がる。普通の石けんで革を洗うと、油分が飛んで硬化してしまうのだ。

「そもそも、革製品って水で洗えるの?」と疑問に思うかもしれない。

 それが、洗えるのである。

 ”革”とは、食肉の副産物である”皮”に、なめし処理を施したものだ。そのなめし処理は水中で行うため、革が水にぬれたとしても、性能が大きく損なわれることはない。水も革の大事な栄養分であり、適切な油分や水分が必要なのは人の肌と同じである。

 ただし、注意して洗わないとシミや色落ち、風合いの変化を起こすこともあるから、多少のテクニックを必要とする。

 まずホコリをブラシで払い、クリーナーで表面の汚れを落とす。そしていよいよサドルソープを泡立ててジャブジャブと洗う。このとき、中途半端に革をぬらすのが一番良くない。ぬれた部分と乾いた部分があると、ぬれた部分だけシミになる。思い切って全体を均一にぬらすことが大切だ。


サドルソープをスポンジで泡立て洗う。今回はかばんだが、靴や財布、その他の革製品にも使える(ただし、爬虫類革など特殊なものを除く)。

 洗い終えたら、サドルソープの成分がうっすらと表面に残る程度にスポンジで泡を拭う。保革成分を残してやるのだ。

 そして乾燥は、日陰でゆっくりと自然乾燥させる。これが鉄則である。

 意外かもしれないが、革は水分を含むと耐熱性が落ちてしまう。ドライヤーや暖房器具で急速に乾かすと、革が熱収縮を起こし硬化してしまうのだ。熱収縮を起こした革は炎で焼け焦げたようになり、二度と元には戻らない。日陰で十分に乾燥させた後は、革の種類に応じたクリームで仕上げよう。

サドルソープで洗い終えた後、デリケートクリームで仕上げた。雨ジミが少し薄くなり、革がしっとりと潤った。

 10年近く放置していたかばんも、汚れを落とし栄養を補給してしっとりと仕上がった。かばんからはサドルソープの爽やかな香りがほんのりと漂う。これでまた、ぼくの愛用品として活躍してくれるだろう。できればこの先ずっと、手入れをしながら大切に使いたい。

 メンテナンスさえ適切にすれば、応えてくれるのが革の良さだ。それは人間には作り出すことのできない、天然素材の良さである。

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