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ミニマグライト 2AA|ハンディーライトの世界を変えた名品

 航空機と同じ素材で作られたハンディーライト。そう聞いて、ワクワクしない少年など世の中に存在するのだろうか——。というのはぼくのいささか偏った考えかもしれないが、アウトドア、ミリタリー分野に関心のある人が、ハンディーライトと聞いて真っ先に思い浮かべるのがマグライトである。

 ぼくが10代だった90年代後半から2000年代初頭、マグライトはタフに使えるハンディーライトの代名詞だった。航空機に使われるアルミ合金を削り出し、特殊コーティングにより耐腐食性を向上させた強靱なボディー。米粒大ほどの電球なのに、当時、革新的だったライトの明るさ。少し重く、高価だったそのライトは、ぼくにとっては憧れの存在だったのだ。何せ懐中電灯が数百円で買えた時代に、1984年に誕生した「ミニマグライト2AA」は、5,800円もしたのである。学生だったぼくはアウトドア雑誌でマグライトの記事をワクワクしながら読むのが関の山だった。

 そんなぼくが社会人になり、ミニマグライトを手に入れたのは当然の流れというものだろう。確か、シルバーのモデルを購入した記憶があるが、月日とともにマグライトへの憧憬は薄れ、気がつけばどこかへやってしまった。

 現在でもマグライトの信頼性はゆるぎない。電球からLEDへと進化し、さらなる性能アップが図られている。しかし、ぼくが再び手にしたミニマグライトは、昔と変わらない電球モデルだ。

 初めてのマグライトを手にした当時、その明るさにぼくも負けないほど目を輝かせたものである。しかし今となっては、14ルーメンは特段に明るいとは言えまい。500ルーメンや1000ルーメンを超えるハンディライトもある中、数字だけを見ると「暗いライト」と思われるかもしれないのだ。

 では、実際はどうだろう。

 試しに照明を落とした夜の室内で点灯してみた。

 なんだ、明るいじゃないか、というのがぼくの感想だ。昔から変わらない、ヘッド部分のロータリースイッチをひねる。緩めると点灯、締めるとOFF。暗闇を照らすだけの十分な明るさを有している。でなければ、世界各国の軍隊や法執行機関に採用されはしなかっただろうから、当然といえば当然か。

 ぼくのマグライトの用途は、ハイキングやキャンプでの灯りである。夜間行動時には200ルーメンのヘッドライトを使うが、日が落ちてから頭にずっと装着していると、けっこう煩わしいものでしょう? そこで手元や足下を照らせるだけの、予備のハンディーライトを探してしたのだ。

 夜のフィールドでは昼間のような明るさは要らない。真っ暗闇の山中は確かに怖いが、月明かりが少しでもあれば意外と周囲を見渡せるものだ。それに、必要以上に明るいライトは、自然を楽しむのに果たしてふさわしいものなのだろうか。

 明るさも点灯時間もLEDモデルには及ばないが、電球モデルでも連続点灯時間は5時間以上もある。断続的に使えば、その数倍は電池が持つだろう。日帰りハイキングの備えとしては、予備電池も必要ないぐらいではないか。

 それに、電球が放つ、白飛びせず眩しすぎない光も利点のひとつである。電球の、キャンドルに通じる優しい光は、例えばソムリエがワインの澱を確認したり、医者が診察に愛用していたりと、一部ではいまだに主流であるという。2007年にマグライトの主力モデルはLEDに切り替わったが、マグ・インスツルメント社は交換用バルブの生産を今でも続けているし、日本の輸入代理店であるA&Fも、電球の取り扱いを辞めてはいないのである。

 LEDモデルを選ぶか、電球モデルを選ぶかは個人の好みによるのだが、発売当時から変わらず、優しく暗闇を照らしてくれる電球モデルをぼくはチョイスした。それに「ミニマグライト 2AA」の誕生は1984年——ぼくと、同じ歳なのだ。

 こんな偶然もあって、ミニマグライトの電球モデルがぼくの山道具に加わることになった。夜間のランニングや枕元での読書の灯りと、活用範囲は広そうだ。

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