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就活を何から始めたらいいのか分からないという学生さんへ

0.就活のマインドセットについて書いてみる

現在、就活エージェントで相談対応や求人紹介などをしているのですが、このところ「就活を始めようと思ったけど、何から始めたらいいか分からないので相談に来ました」という学生が増えてきました(時節柄?)。そのため、一旦自分自身の思考整理も兼ねてここに書いてみることにします。
※こちらに書く内容については、所属組織とは一切関連ありません。あくまで個人の見解です。ご了承ください。

1.そろそろ就活始めなくちゃと思ったら

就活相談に乗るようになってから、以前働いていた学習塾業界との相違点を意識することが増えました。例えば、中学受験なら小4からカリキュラムがスタートするのでそこから始めて、小6の2月初旬に受験日が集中、結果もすぐ出る。大学受験なら共通テストという一つの目安があるし、私立・国公立含め概ね1月〜3月中に試験と合格発表が集中する。受験だと対策を開始する時期も終わる時期も大方想定できるんです。

一方、就活は本選考だの早期選考の実施も企業によって異なるし、その前段階でインターンが行われていたり、OBOG訪問をしたり、説明会に行ったりで、とにかく活動しようと思ったら期間がとめどなく長い。就活は皆が横一線で同時期に選考を受けて同時期に結果が出るというような性質のものではないということ。つまり、かなり個人差があるし、本人の意識次第による部分が大きい。まずは学生さんにとって馴染みのある受験と就活はやり方が異なるということを認識しておくのがよいと思っています。

結論として、始めたその時があなたにとってのタイミングということ。他の人と比べて遅かろうが早かろうがそんなことは気にしても仕方がないので、そろそろ始めなくちゃと思ったならひとまず始めましょう。とはいえ、入学して即就活だけに邁進するのは私はあまりお勧めしません。大学4年間を就活に捧げるなんてつまらない。大学生だから出来ることや味わえることがありますから。

2.自分の「好き」から始めてもいいけれど

私の学生の頃(20年前!)とは比べ物にならないくらい、今は大学の就活支援は手厚いので、誰もがまず第一歩を踏み出しやすい環境といえそうです。ただ、大学だって万人に最適な支援を提供できるはずもないので、あくまで既存の支援を活用しつつも、自らに合った就活を模索し行っていくことになります。

ちなみに「業界地図に載っていない非営利分野に就職したい学生さんへ(環境・国際・地域活性・まちづくり等)」にも書いた通り、私自身は新卒で環境教育分野に就いたので一般的な就活を経ていません。業界地図に環境教育なんてないし、新卒を募集するような分野でもないので、全くの別ルートでその道に進んでいます。もしそのような就活に関心ありましたら、そちらの記事も参考にされてください。

さて、実は環境教育への就職の前に、映像関連企業の採用をいくつか受けていて映像編集会社さんに内定をいただいていました(あまり人に言ったことがないので新情報!笑)。何故、映像関連なのか?−それは映画が好きだったからです。大学4年間の半分は、映画学校通学と映画制作に明け暮れていたくらい。そして性格的にこだわりが強く、仕事として就きたい分野といえば環境系か映像系しかありませんでした。きっと似たような学生さんは一定数いるはず。興味のあることを仕事にしたいのに選択肢が無いし、かといって就職しないわけにもいかない、興味のない仕事の中から就職先を探さなければいけないという状況は相当苦しいと思います。今尚そういう状況にある皆さんには同情する一方、世の中には知れば知るほど自分の知らない仕事があって、どれも面白いなぁなんて思える日もやってくるはず。だからこそ、1ミリでもいいから視野を広げてほしいと願っています。

ということで、私自身がっつり「好き」から就職活動を始めていましたし、今も多くの学生さんが就活を始める時に「好きなこと」という観点から考え始めるのもごくごく自然なことだと思います。とっかかりとしては全然OK。ただ「●●が好きだから●●業界に行く」だけではいつかどこかで行き詰まるとも思っています。これも大学選びと企業選びの大きな違いです。「●●に興味があるから●●学部のある大学に行く」はOKなんです。より知名度のある大学に進学する、潰しの利く学部に入る、上京するために首都圏の大学に行くなど、いろいろな大学選びの観点がある中で、自分の好きにフォーカスして大学選びをしてきた人はとても幸せな人だと私個人は考えます。大学って探究の場ですからね。けれど、同じように就職先を「好きだから」という理由だけで選ぶのはやや弱い。特に人気のある業界や企業を志す時には厳しい。だって皆大抵同じようなものだから。

3.「好き」のその先へ

「好き」「興味がある」だけでは弱いならどうすればいいのか?−「なぜ興味があるのか?」「どういったところが好きなのか?」などをひたすら深掘りです!この作業は、抽象度を上げる視座を上げるともいえます。観光業界に興味があるのはホスピタリティへの関心が高いからかもしれません。ならば、観光業界以外でもホスピタリティを発揮できる仕事はないでしょうか。こんな感じで、実はその特定業界でなくてもいいという結論に達するかもしれません。同じ要素をもつ業界なら他にもいくつか見つかるかもしれません。それならそれでしめたもの!就活の幅が広がります。

もっとも本当に好きなことに理屈なんてないんですよね…心が自然と反応してしまうからこそ好きなんですから(あなたが好き!理由は○○と△△と□□だからです。なんて言われたら覚めるわ)また、必ずしも好きなことを仕事にする必要はないともいえます。趣味に留めておくからこそ思う存分楽しめるでしょうし、好きなことが仕事の息抜きになることもあるでしょう。どこかで一旦、好きを仕事にすべきかどうか立ち止まって考えてみるのもいいと思います。

4.「私は何者なのか」を考える

「好き」から就職先を考えるというのも1つのルートですが、もしそこで行き詰まったら(行き詰まらなくても)、次にやってほしいのは「自分のことを知る」という作業。要は「自己分析」というやつです。これについては就活を始めれば早々に遭遇するワードですし、就活するなら自己分析しなきゃいけないんでしょ?ということで着手している人もいるはず。でも、何故自己分析をやるのか分からないまま取り組んでいるという学生さんも多いみたいです。それ故、就活サイトの自己分析ツールに取り組んで「私に向いている職業は○○です」「あなたの性格は△△です」という結果をもらっても、実際それをどう企業選びに活かせばいいのか分からず途方に暮れている人もいるようです。あくまでWEB上の自己分析は参考程度に捉えてほしいと思います。くれぐれもそれをやったら自己分析はもう万全だなんて思わないでくださいね。

「自己分析」とは、過去を振り返って、自分の得意・不得意、強み・弱みなど、自分のことを棚卸しすること。例えばモチベーショングラフや書籍などを活用して、過去の自分を徹底的に分析して、どんな時にどんなパフォーマンスをしてきたのか、どんな時にモチベーションが落ちたのか、それは何故なのか、どんな価値観を持っているのか等、どんどんを掘り下げていくことです。作業としては地味だし、やったことが無いとなかなか進まなくて大変さもあるでしょう。でもこれはかなりいい機会なんです!自分のことを改めて振り返るなんて、こんなことでもない限りやらないし。それに自己分析は就活だけでなく、社会人になっても定期的に行ったほうがいいともいわれています。初めての自己分析、まずはやってみましょう。必ず役に立ちます。

ちなみに、誰もが好きなことを起点に就活を始めるとは限りませんよね。その場合は、初めから自己分析に取り組んでいいんです。「好き」に囚われすぎない分、スムーズに取り組めるのではと思います。

5.就活はマッチング

なぜ自己分析が必要なのかというと、就活はマッチングだからです。合格したら入れる学校とはちょっと違います。受験ならある一定の学力に達してお金を払えば、入学して好きなことが学べます。方や、就職では企業側がお金を払ってくれます。お金を払って入る学校、お金をもらって働く会社、大きな違いがあるんです。ここをまず肝に銘じておくべし。

企業は自社で活躍してくれる人材を見極めて採用します。そのためには、選考を通して応募者が我が社に合っているのかどうかひたすら吟味していきます。それはとても複合的で、受験の時のような学力一択で選別されていた時とは異なります。そして、応募する学生もいかに自分がその企業に合っているのかをアピールする必要があるんです。ただ単に好きなんです!とアピールされても、合っている人材なのかは分からない。その会社の商品が好きという理由なら、極論ずっとその会社のファンで居続けてもらってもいいくらいです。企業は何よりも「活躍してくれる人材」を欲しています。だってわざわざその人に何年にも渡ってお金を払い続けるんですから。となると、自己分析をして自分というものを理解した上で、その企業でどのように活躍できる人材なのかをいかに伝えられるかということが重要になるのです。

6.業界を絞るか否か

就活を始めたての学生さんの場合、志望している業界や業種は?と尋ねると結構トンチンカンな回答が返ってきたりします。大体それで就活の進み具合が分かったりします(失礼!)。でもそんなことは気にすることありません!そこからいろいろ調べて知っていけばいいだけ。

問題は、業界を絞るべきか絞らざるべきかという話。そもそも業界の全体像を知らなければ絞ることもできません。では、全体像を知ったからといって業界を絞れるのかというと、結構これも難関なのです。結局絞るための判断基準がなければ、単なる好き嫌いや馴染みの有る無しになってしまうから。なので、まずは業界地図などで業界に関する勉強をしてみましょう。ただ、すぐに絞る必要はないと考えます。少し広めにいくつかの業界をあたりながら徐々に絞っていく、まずはそんなイメージを持つといいと思います。

その真逆で、完全に一つの業界に絞って就活を始めるケースがあります。それは前半で述べた「好き」に基づく仕事選びの場合によく起きます。私自身がそのような就活をした身なので偉そうなことは言えないのですが…新卒市場で就活をするなら、ピンポイントで業界を絞ることには慎重になった方がいいと考えます。選択肢が狭まるからというのもあるのですが、やはり他の業界を一切知らないままその業界のみを志すとなると、それ相応のスキルや経験、マインドが求められるので。

もちろん、専門職(プロフェッショナル)を志すなら別です。アナウンサー、ライター、教師、税理士、弁護士などなど。けれど、多くの新卒マーケットでは専門職ではなく、総合職ないし営業職、事務職など、ある程度幅を持たせた職種の募集が出ています。もし専門職として社会人の一歩を踏み出したいなら、就活のやり方も変わってきます。

新卒採用という場面は、どちらかというと社会人経験の無い人を会社のさまざまな部署や場面で活躍できるように育てていくためのものなのです。言い方はアレですが、ある程度会社の色に染まれるくらいの人の方が就活市場で戦うには向いているんです。だからこそ業界を絞りきってしまうと不利になりがちという訳です。

ただし、私は決して全ての学生がそうなるべきとは思っていません。結局、学生の中にも就活市場が合う人と合わない人がいます。世の中にほんとに多種多様な仕事や会社がある中で、一部の企業が新卒採用を行っています。業界も分類され、限られた中から選ばなければならず、総合職で入ってある程度どの職種でも働けますという人でなければ採用されないというフィールドなんです。もちろん最近はジョブ型雇用も増えてきて、社会も変化しているんですけどね。とはいえ即刻、新卒でどんな職種にでも就ける世界線はまだやってこない

それでもやはり特定職種を新卒入社を志望するという選択もあります。もはやそれは「生き方」であり、ポリシーです。それを選んだなら、潔くオーソドックスな就活を手放すのもあり。茨の道かもしれませんが、選んではいけないというルールはありません。結果的にそっちを選んだ私も、なんだかんだここまで生きてこられたのでなんとかなるとは思っています。結局はあなた次第、突き放しているように聞こえるかもしれませんが、これも私からの最大限のエール。

7.将来像を考える意味

自分自身の強みやキャラクターを深掘りして、業界や職種を選ぶ際の参考にすると同時に、将来像からファーストキャリアを選ぶというのも一案です。将来どんな仕事をしたいのか、働き方をしていたいのか、どこに住んでどんな暮らし方をしたいのかによっては、最初に選ぶキャリアが決まるというケースもあります。例えば、将来は場所に囚われない働き方ができるようなスキルを身につけたいとか、変化の激しい世の中で30年後も必ず生き残っている仕事に就きたいというのもありです。

ただ、実際のところ、将来像を明確に描ける人ばかりではありません。たしかに社会人経験がないのに将来を描くなんて至難の業だったりします。そのため実質的には、マネージャーとしてチームをまとめる仕事がしたいといった将来像になることも多いのですが、もしも明確な将来の夢があるのであれば、それを実現するための第一歩としてどのようなスキルや経験を獲得すべきか、そういう観点で就活を進めてみるのもオススメです。

8.いわゆる「就活の軸」というものについて

人材業界に足を踏み入れた時、「就活の軸」「就活軸」というワードを初めて知りました。もちろん自身の就活から20年経過しているせいもあります。転職なら「転職軸」と言ったりするので、人材業界ではフツーなのかもしれませんが、全く別の業界にいた身としてはとても新鮮でした。

学生の皆さんも、就活を始めると「就活の軸」というものを据えて就活をするらしいということ知るようになると思います。もちろんネットで調べればいろいろ事例が出てきますし、私も参考にします。面接でダイレクトに「あなたの就活の軸は何ですか」と聞かれることもあるようです。

ただ、未だに私自身、なんとも雲を掴むようなものだなと感じています。これこそ模範的な答えが提示しにくいものだと思うから。仕事選びで譲れないポイントとか、会社選びの判断基準だとか、言葉を変えて説明は出来るのですが。何というか、結局「あなたが人生で大切にしているものは何ですか」という質問くらい壮大なものだと感じてしまうんです。だって、仕事のことを考えることはプライベートも含め自分の生き方を考えることだと思っているので。このあたりはもっともっと業界の先輩に聞いてみたいところです。もしかしたら二十歳の学生が考える「就活の軸」はそれほど大袈裟なものではないのかもしれません。四十路の私が考えるから、あまりにいろんな要素が絡み合って「そんな簡単に言えるかい!」ってツッコミを入れてしまうのかもしれません。誰か教えて、って感じです。すみません。

9.就活の大海原へ

ここまでのセッティングが完了したら、いよいよ説明会、エントリーシート(履歴書)の提出、選考(面接)などをたくさんこなしていく段階になります。忙しいはずです。同日に説明会が複数入ることもあるはずです。履歴書を書く時間が取れずに、なかなかエントリーできないなんてこともあると思います。そんな日々を過ごしながら、就活初期に据えた「就活の軸」が変わったり、新たな自分の強み・弱みが分かってきたり、業界が定まってきたりするはずです。走りながら考えるモードに入ることでしょう。

とはいえ、なんだかんだ私自身がこのプロセスを経ていませんので、あくまで支援者としての立場でしか助言できませんが、少しでも役に立てていただければ幸いです!もし実態と異なる点などあれば教えてください。なんせ私は実際にエントリーシートを出すことも面接を受けることもできないので。

10.最後に

ここまでいろいろ書いてきましたが、就活で内定を取ることがすべてだとは全く思っておりませんので、それだけはお伝えしておきます。一般的な就活もせず、転職を3回経験して、独立し個人事業主もやっていて、パラレルワーカーとして現在5社関わっている身として、仕事なんて雇用形態、職種、業種どんな組み合わせも全然あり!と思っている方の人間です。

浪人留年すればそれだけで採用を渋られたり、障害があれば就業のハードルが一気に上がったりする就活市場なんて、何のハードルもなく生きてきた人が有利なフィールドとさえ思っています(炎上しそう)。

でも、人生は多様で、個人も多様です。働き方も多様であるべきです。10代でつまづいても這い上がる人生だっていいじゃないですか。大学卒業後、世界を放浪して戻ってきた方が圧倒的に人間力はついているはずです。それでもなおこの社会は画一的に物事を進めたがるので、新卒ストレートで入社する人材を欲する。多様だとハンドリングが難しいからでしょう。もちろんそのような会社ばかりではありません。だからこそ今が日本社会の過渡期だと信じたいと思っています。

就活を何から始めたらいいのか分からないという学生さんへ。
さあ、ここからです!一社会人として、皆さんが社会に出てきてくれることを楽しみにしています。応援しています。



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