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保育園児のめまい〜BPVとBPPVの違い

3歳の女の子が「目が回る」と言い、あまり動かなくなった。脳のCTでは異常ないので、耳の病気でしょうか。小児科の先生からの相談でした。内耳の病気は、眼振が観察されるので、赤外線CCDカメラを装着します。「目を開けてください。」「頭を倒します。」いろいろ指示して眼球の動きを確認します。大人はね。

めまいがする3歳の子に、目を開けてくださいと言っても、開かないだろうなあ。僕は、内心、検査なんてできないよと思いましたが、「いいですよ。耳鼻科に来てください。3歳なら小児良性発作性めまいですよ。」と快諾しました。小児科の若い先生は、この病気を知らないだろうなあと思いつつも。

女の子は看護師さんと耳鼻科に来ました。「お母さんは、入院の荷物取りに戻って不在です。」しまった。患児でなくて、僕はお母さんに会いたかったんだよ。ま、せっかくだから3歳の子供に、CCDゴーグルを装着、号泣。そりゃそうだ。でもちょっと目を開けてくれて、自発眼振がないことは分かった。ついでに、ごく稀な先天性真珠腫の内耳進展がないことを、中耳ファイバーで確認。耳下腺を触ってシコリもないこと確かめて、ささっと診察終わり。「お母さんがいるタイミングで、往診に行きますね。」入院して、すぐ、何もしないのに女の子は元気になりました。

お母さんから話を聞きました。夏休みが終わり、保育園が始まって2日経ちました。環境が変わって、女の子はとても疲れていたそうです。兄との喧嘩も増えて、ストレスが溜まってそうでした。

母親が片頭痛もちで診断がつく

お母さんは頭痛もちですか?
「ええ、そうです。天気悪い時、気圧が低い時に頭痛するので天気病です。生理前も頭痛します。痛み止めよく飲みます。病院に行っていないので、片頭痛とは言われていません。」
おばあちゃんも頭痛もちですか?
「そうですね。私よりは軽いかな。でもよく頭が痛いと言っていました。」
片頭痛は、家族で多発します。女系の家族に多いです。

小児科で、脳の検査で異常がなければ、子供の片頭痛だと思います。診断基準では
、同じようなめまいを5回くりかえさないと診断してはいけません。今後も、ストレスが加わった時に、同じめまい症状がでれば、この病気です。意識消失や、痙攣したら、それはもっと大きな病気です。

国際的にも知られた子供のめまいは片頭痛

国際頭痛分類では、片頭痛に関連する「周期性症候群」に挙げられます。ストレスが加わると、周期的に、お腹が痛くなる子、嘔吐する子、めまいする子に分けられます。昔は「周期性嘔吐症」と言われていて、学芸会の前に極度のストレスで吐いてしまう子がいましたよね。

症状と診断のまとめ

子供は、大人と違って頭痛を訴えません。子供の頃って、片頭痛の症状が、頭痛にならないで、吐き気やめまいになるのです。祖母と母親についで、女の子も年頃になると片頭痛になるのでしょう。母親には、次のように分かりやすく説明しました。子供の片頭痛でしょう。大きな病気でないと思います。ひどい片頭痛の大人では、めまいを伴うことがあります。子供だから、頭痛を感じずに、めまいを感じたのでしょうね。

小児科の若い先生、耳鼻科の部長から「良性うんたらかんたら発作性めまい」でしょう。と言われたものだから、カルテに「子供の良性発作性頭位めまい症と思われる」と記載しました。それって、耳石が外れて半規管の中で動く病気ですよ。中年以降に多い疾患で、子供では発症しません。学生時代に耳鼻科の講義で勉強した疾患だから、誤解しましたね。

子供:(小児)良性発作性めまい症、略してBPV。子供の片頭痛、ストレスが原因です。日本語では(小児)入れることが多いです。
大人:良性発作性頭位めまい症、略してBPPV。耳石が剥がれます。頭位で眼振が変化します。頭部外傷や老化、骨粗鬆症が原因です。病名に「頭位positional」が入るので、BPPVとPが2回だぶる。

病名はすごく似ているけど、小児科の先生はBPPVと間違っちゃだめ。子供にBPPVが生じるとしたら、頭部外傷で耳石がころっと外れたとき。理論的には考えられるけど、見たことない。大人の病気だから。

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