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原口元気に乗せられてドイツ語の試験に申し込んでしまった【後編】

サッカー日本代表がW杯最終予選ベトナム戦を戦った日の朝、僕は個人的なもうひとつの戦いのため東京都内は青山一丁目に赴きました。ドイツ文化会館ことGoethe Institute(ゲーテ・インスティトゥート)が主催するドイツ語の検定試験、Goethe-Zertifikatを受けるためです。
ちょうど前回のサッカー日本代表シリーズが行われた1月下旬、同MFの原口元気選手に煽られる形でうっかり申し込んでしまってから、あっという間に40日が経って試験当日を迎えてしまいました。(詳しくは下記リンクをご参照)

試験は6段階のレベルに分かれていて、僕が今回受けたのは最も基礎的なレベルにあたるA1です。

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https://www.goethe.de/ins/jp/ja/sta/tok/prf.html

またテストの具体的内容は模擬問題として公開されており、出題範囲に必要な単語リストも例文付きで同じく公開されています。その意味では親切な試験ですね。


4日間の試験対策

僕は今回ほぼ何も身についていない状態からのスタートでしたので、この模擬問題と単語リストの存在はどちらも非常に大きかったです。特に単語リストは対策用教材としてフル活用させてもらって、逆にこれが無かったら更に悲惨なことになっていました。全部で何単語あったのかは数えていないので分かりませんが、とりあえずA1に関しては、AからZの頭文字ごとに整理された単語と例文を中心に、合計25ページ分くらいありました。ドイツ語のみで書かれているので、辞書や翻訳ソフトの助けが必要になります。

恥ずかしながら本格的に対策に取り組んだのが試験前の4日間だけになってしまったので(試験5日前にW杯出場を決めたオーストラリア戦で奮闘する原口選手達の姿を見てようやく目が覚めた)、とにかくこのリストに掲載された単語と例文を片っ端から確認していく作業に勉強時間のほとんどを費やしました。具体的には紙の辞書も並行して使いつつ、Deep Lに例文をコピペして英訳で内容を確認して頭に入れていくという方法です。辞書は三省堂の『クラウン独和辞典』を使っています。重要単語は見出しが赤色になっていたりと、個人的には使いやすくて気に入っています。

実際の作業の様子はこんな感じです。

不規則動詞は辞書で活用を確認
名詞は性(男性・女性・中性)ごとに色分け

途中おやつの力も借りながら出来る範囲で頑張りました。僕はこういう時、最初のAからひたすら順番に進めていくのは心が折れてダメなので、適当に後ろに飛んだり真ん中に飛んだりして気分を変えながら、何とかやる気を維持して進めていきます。とはいえさすがに4日間で全てを確認するのは不可能で、結果的に全単語チェックできた頭文字は全部で12文字だけに留まってしまいました(A-F,H-J,T,U,Z)。なので本番、未確認だった単語を中心に分からないものも少なからずあり「やっぱちゃんと準備せな難しいわ」という当たり前のことを再確認しました。ただ、試験は終わりましたが、せっかく途中まで真剣に取り組んだこの単語リストはこのまま続きを完成させて、しっかり全単語・全例文を自分のものにしていくつもりです。そもそも必須の基本単語しか載っていない訳ですから、これに関しては試験に関係なくマスターしないと話になりません。

実際に試験を終えて(筆記試験)

で、肝心の本番についてですが、まず結果の話をすると「受かったか落ちたかマジで分からん」というのが率直な実感です。もともと準備も足りず「絶対落ちる」と思っていたので、正直「どっちか分からん」まで持って来れただけで個人的には満足しています。(合否発表は試験日の4週間後)

試験自体は最初に筆記試験が行われ、リスニング→リーディング→ライティングの順番に実施されます。時間はそれぞれ20-25分ずつです。Webで公開されている問題形式にかなり近かったので、単語リストと併せてちゃんと模擬問題で対策して臨んだ人であれば、おそらく普通に解ける内容になっています。ちゃんと専用の対策問題集も出ていますので、これをやれば大丈夫です。

実は僕も原口選手に乗せられて試験に申し込んだ翌日、代表のチームメイトである遠藤航選手に同じくうまいこと乗せられて、彼がZoomの画面越しに見守る中、勢いでこの問題集を購入していました。

なので一応僕も開いてみてはいたんですが、1ページ目の一番最初のセクション、食べ物&飲み物の単語を調べて覚える所でいきなり心が折れてしまい、結局そのまま本番を迎えてしまいました。その次に開いたのは試験前日、一応当日リュックに入れて行こうと思って手に取った時だったんですが、改めてパラパラと全体を眺めてみたらめちゃくちゃ良くできた問題集でした。試験は終わってしまいましたが、今なら僕も使いこなせそうです。

ちなみにこの遠藤選手とのやり取りの中でもう一冊、ドイツ語のショートストーリー集を一緒に購入していました。(KIndle版だと299円!)

こちらも実は試験対策に使おうと思って一度開いてやってみたのですが、結局1話目で途切れてしまい、その後まだ開いていません。

ちなみに原口選手はその後同じ本を買って、既に僕より先に進んでいます。
僕も今回の試験を機にようやくドイツ語が頭に入ってくるようになったので、これから頑張って追いつきたいと思います。

実際に試験を終えて(口頭試験)

というわけで試験の内容に話を戻すと、筆記試験の後、少しの待ち時間を置いて口頭試験が行われました。これも完全に公式サイトで公開されている通りの内容でした。

この口頭試験に関しては、試験前夜にYouTubeで発見した以下の動画をバーっと確認しつつ、各動画に紐付いたブログ記事に載っている例文を参照して対策と準備を行いました。

この動画とブログのお陰で、本番はわりとリラックスして自然体で臨めました。これを見るまではいっそ逃げ出したいくらい口頭試験は絶望的だと思っていたことを考えると、チャンネル&ブログ運営者のNanaさんに感謝です。

ドイツ語試験挑戦で得た2つの大きな変化

こうして改めて振り返ると実にグダグダな挑戦記で申し訳なくなってきますが、それでも今回の挑戦を機に2つの点で、僕の人生に大きな変化が起こりました。

①急にドイツ語以外のレッスンを受け始めたこと

実は1月下旬にドイツ語のレッスンに申し込んだ後、僕が最初に取った行動が「ドイツ語以外のレッスンを次々に受け始めること」でした。具体的には元々既にやっていた韓国語に加えて、英語とスペイン語とイタリア語のレッスンを受け始めました。このうち英語とスペイン語は元々話せるのを維持・成長させるためですが、イタリア語は完全に初心者です。

普通に考えると奇怪な行動なのですが、自分で分析してほぼ確信しているのは、今回思いがけずドイツ語試験への申し込みを実行したことで、少なくとも語学学習という領域において、「新しい挑戦」そのものへの心理的ハードルが一気に下がったということです。その結果、実は前からやってみたかったけど一歩を踏み出せずにいた各言語のレッスンを、自分の中での優先順位が高かった順に始めてしまったのだと思います。お陰でドイツ語そっちのけでイタリア語やら他の言語やらのレッスンにハマって原口先生からはツッコミを受けましたが、個人的には非常に充実感がありました。きっかけをくれた原口選手には感謝の一言です。(最終的にはドイツ語のレッスンも受け始めました)

②ドイツ語の「壁」を突破し習慣化できた

もちろんドイツ語そのものに関しても成果はあります。今回の試験で一度精神的に追い込まれたことをきっかけに、ドイツ語習得に対してずっと感じていたメンタル的な「壁」(限界・無力感)を遂に打ち破ることができました。今回、本腰入れて試験対策に向かったのは直前の4日間のみでしたが、それ以前にもドイツ語に向き合おうとして自分なりに勉強してみたことは既に何度かありました。文法テキストを開いたりドリルをやってみたり、ポッドキャストを聴いたりドイツ語の歌を聴いたり、あるいはドイツ語の映画を観てみたり、一応そういう一般的なアプローチ自体は何度も試みていたんです。ただ、毎回どうしても壁にぶつかって早々に挫折していました。例えば文法上の決まりの多さに辟易したりする中で、自分が最終的にこの言語を習得できている姿を全くイメージできなかったのです。語学ってメンタルが非常に重要なので、ここで弱気になってしまうと学習効率まで一気に下がってしまいます。結果、僕はドイツ語に対して残念ながら苦手意識を育ててしまっていました。

しかし今回、日本がW杯出場を決めたオーストラリア戦で奮闘・活躍する自分の生徒達の姿に刺激され(しかもこの日出場していた3名全員がドイツのチーム所属)、このままただ諦めて試験に落ちるのだけは何が何でも避けたいという強烈な動機に繋がって、ようやくドイツ語に対してメンタル的に覚醒することができました。そこからの4日間はこれまでになく集中してドイツ語に向き合うことができ、その中で遂にドイツ語の仕組みやリズムが自分の中にインストールされる感覚を得るところまで到達できました。別の言い方をすると「この道を歩き続ければ最後まで行ける」と確信できる瞬間が訪れた、とでも言えばいいでしょうか。あるいは遂にドイツ語が「向こう側」から「こちら側」に移った、という表現でもしっくりきます。いずれにせよ経験しないことには実感しにくい話ではありますが、ともかくここを突破できると、一気に見える世界が変わってくるのです。

その結果、試験を終えてから本日に至るまで、そのまま途切れることなくドイツ語の学習を続けられています。遂に習慣化できたのです。この点で、試験の合否より遥かに価値のある結果を既に得られたことになるので、その意味で僕は今回の挑戦に非常に満足しています。

重ね重ね、なかなか重い腰を上げられない僕をけしかけてくれた原口選手には感謝してもしきれません。

というわけで無謀な挑戦ではありましたが、結果的に自分にとって大きな意味のある前向きな変化を2つも実現できました。

ひょんなきっかけでドイツ語の試験に申し込んだ結果として、韓国語・イタリア語・英語・スペイン語、そしてドイツ語のレッスンを楽しく並行させながら、継続して自分自身でも学びと勉強を続けられています。

月並みな言い方ですが、「とりあえず挑戦してみる」ことの大切さを再認識させられました。今回のことに限らず、引き続き何事に対しても挑戦のハードルを下げて、とにかく色々やってみる2022年にしていこうと思います。

それではまた。


【追記(2023年5月1日)】
 2023年3月1日発売の拙著『東大8年生 自分時間の歩き方』にも、原口選手とのエピソードを収録しています。他にもサッカーや語学、異文化や海外にご興味のある方には楽しんでいただける内容の1冊です。ぜひ!


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