小説 男岩鬼になりたくて9

決起集会ってさっきのはなんだったの? 嫌な予感がしながら俺はバッテリー組として、同部屋でもあるエース大矢のとこへ行くことになった。
「よーし! 今夜は新しい門出ということで乾杯しよう」
 大矢が陽気な声で話すときは、きまって何かが起きる。
「さあさあ、大江! まずは駆けつけ3杯といこうか!」
 並々と入っているグラスを渡される。
「ん? なんですか、これ?」
「なんですかやないやろ。ウチナーンチュなら誰でも知っている島や」
「島って、泡盛ですか?」
「そうや。つべこべ言わんと、飲まんかい」 
 大矢が威勢良く言う。一気、一気、一気と手拍子が鳴る。大学生の新歓コンパノリで、どう見ても断れない状況。軽く会釈をし、グラスに口元をつける。冷えた液体が咽喉に流れ込みと、胸の辺りがカーッと熱く火照ってきた。拍手が起こり、気がついたらまた並々とグラスに注がれていた。続けざまに飲み干した。
「おまえ、いけるじゃねえかよ」
 大矢は蛇のような目で睨んでいる。挑発的な目だ。返杯できないのが悔しいが、これはこれで負けられない。幸い、中学校の頃から祝い事があれば飲んでいたせいか、酒は大丈夫な身体だ。間髪入れずに最後の3杯目をグイッと飲み干した。さすがに身体の芯がジンジンと熱い。
「ほれ、最後の3杯目だ!」
 今、3杯飲んだけど……そうきたんか。
「はい、最後の3杯目いただきます」
 あえて声を発し、3杯目だということを強調するため大矢の目をじっと見据えながら、4杯目をジワリジワリと飲み干した。
「おおおおおお〜」
ウザい観衆の声が耳にまとわりつきながら、俺はグラスを片手に奴から目を逸らさなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?