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2020.12.31(木)この奇妙な一年の最後に

昨夜NHKでコロナ禍の1年を振り返るドキュメンタリー【世界同時ドキュメント 私たちの闘い「自撮り映像でつづる危機の記録】を見た。見えない恐怖に身構えていた春の日の感覚がありありと蘇る。同時に、あの頃の感覚や記憶がすっかり薄らいでいることにも気づく。

2020年の活動を記録しておく。今年が過去になる前に。

2020年1月。30周年も無事終わり、事務所も移転し引っ越し。じっくり準備して今後のことを考えていた。何本かのライブの予定以外は完全に白紙の状態から2020年を始められたことは、今思えば幸運だったのかもしれない。

2月14日・今年初のワンマン@三軒茶屋・グレープフルーツムーン。中国で大流行し、日本でもクルーズ船で爆発した「新型コロナウイルス」という感染症が、国内に広まらないようにと思っていた頃。全員にマスクを配ったりしつつ、なんとか普通に開催。

2月22日・原田郁子+高野寛@吉祥寺キチム。国内でも感染者が増え始めていた頃。座席の配置をいつもより少し離してみたりしたがまだどこか現実味も薄く、「そのうち普通にライブができなくなったりするのかな?」なんて郁子ちゃんと話していた。

2月26日・首相から2週間のイベント自粛要請。「ライブハウスでクラスター」の文字が見出しに踊り、「ライブ」がやり玉に挙がる。音楽関係者に衝撃と動揺が走る。僕の3月以降のライブ予定もすべて白紙に。思わずこんな記事を書いた。【ネット配信を使っての「無観客ライブ」も、増えていくかもしれません】などと書いてある。

3月1日から日記も始めた。12月26日まで、一日も欠かさなかった。

3月24日・「新生音楽(シンライブ)」配信。上記記事を読んで連絡をくださったGrapher's Groupの石原さんのアイデアで、ただライブを配信するだけではなく、配信ならではの映像・音響表現を盛り込んだコンテンツを作ろうという挑戦。画期的ないい内容になった。初めての無観客配信は、曲間の静寂を持て余した(笑)

4月1日・bandcampで「STAY」Hiroshi Takano with Michael Kaneko 配信。origami PRODUCTIONSがアーティスト救済策として始めたorigami Home Sessions のMichael Kanekoさんのトラックに、作ったばかりの新曲を載せて3日間で完成させたトラック。思い立ったその日に配信できるbandcampの即時性と使いやすさが気に入って、以後定期的に配信を続けることに。

「STAY」Hiroshi Takano with Michael Kaneko
作詞・作曲:高野寛

きっといつか 次のステージで 
歌ったり 踊ったり 泣いたりしようぜ
このまま STAY STAY STAY 
今だけは SAY SAY GOOD NIGHT

4月12日・「新生音楽(シンライブ)」vol.2:MUSIC AT HOME配信。感染が世界に拡大し、大都市が次々とロックダウン。4月7日には7都道府県対象の緊急事態宣言が発令された。前回のようにスタジオに大勢のスタッフが集中する配信は不可能となる。何度もミーティングを重ねて、ミュージシャンが自宅で撮った映像をリレー形式でつなぐ配信イベントとして開催。レディガガなどが参加した「One World: Together at Home」より1週間早かった。

4月23日・OTOTOYのライブハウス救済企画に賛同して弾き語りアルバム「歌とギター」を配信。

5月8日・同企画よりライブアルバム「Live at kichimu」も配信スタート。2月22日のライブ音源より。

5月31日・「新生音楽(シンライブ)」vol.3: “交感・not alone” 配信。延長された緊急事態宣言がちょうど解かれたその日の配信となった。

6月26日・配信イベント「TUFF. TOKYO」に参加@代官山・晴れたら空に豆まいて。完全無観客ではなく、10人ほどのオーディエンスも交えて。それでも拍手があることがこんなにありがたいことだと感じたことは、今までなかった。

7月3日・bandcamp fridayに合わせて4アイテムを配信リリース。ライブの本格的な再開はまだ叶わず、夏以降はbandcampでの配信リリースを活動の主軸にすることに。

8月7日、bandcampで学生時代のデモ音源を発表(全40曲)

8月8日・対談イベント「夢の中で会えるでしょう season.2」第一回・ゲスト曽我部恵一 開催。7月末から再び感染が拡大する中、チケットを払い戻して無観客配信イベントに変更することを決めたのは1週間前だった。春頃は「気温と湿度が上がるとコロナは沈静化する」っていう説もあったけど、残念ながらそうはならず。真夏のマスクは辛かった...

9月4日、bandcampで「The End of Summer E​.​P.」発表。

9月5日・山形ビエンナーレ初日に配信で参加。作品と展示の全てがオンライン開催というのも今年ならでは。芸術監督・稲葉俊郎さんとの対談も。

10月2日・「はれるや 2020 / 僕ら、バラバラ」配信。

10月17日・コロナ後初の「無配信」ワンマンライブ@京都紫明会館。

11月1日・ライブ盤「TOKYO City Folklore」リリース。

11月6日・「Isolation / The river」配信。

11月20日・30人限定+配信ライブ@グレープフルーツムーン。2月以来のグレープフルーツムーンは、配信対応の会場に進化していた。そして僕自身もいつしか配信ライブに順応していることに気づく。

12月4日・「サナギの世界 / The World of pupa E​.​P.」配信。ずっと音楽配信を続けてきて到達できた境地。

サナギの世界
作詞・作曲:高野寛

僕の身体は 今は動かない
目を凝らしても 何も見えない
空は青空 今はわからない
焦っても無駄だ 時期を待つだけだ

もうすぐ生まれ変わる もうすぐ空も飛べる
今はサナギの世界 誰もがまだ見ぬ正解
眠りの中で

僕ら 心は 元に戻らない
何かに憑かれてたことに 気づかずに
今日を遮る 最後の闇の中で
君が側にいる ぬくもりをたよりに

もうすぐ生まれ変わる もうすぐ空も飛べる
今はサナギの世界 生きよう まだ見ぬ世界
ここはサナギの世界 誰もが夜明けを待っている
眠りの中で

12月11日・対談イベント「夢の中で会えるでしょう season.2」第二回・ゲスト宮沢和史 開催。11月末からの感染拡大の中、今回も配信限定で。とても充実した内容になって、反響も大きかった。

12月17日・SIGMA対談イベント「音楽と写真で紡ぐ確かな未来」に参加。コロナ禍の単調な日々の中、写真を撮る楽しさに目覚めた1年の最後に「新しいカメラ」を歌う。

とにかくよく働いた! そして、多くの方々に助けられた一年だった。

【世界同時ドキュメント 私たちの闘い「自撮り映像でつづる危機の記録】では、2020年は「戦後最大の危機」と表現されていた。世界中の誰もがこの変化に振り回された一年。病院のお世話にならないように気をつけて、ゆっくりやすみましょう。そして、ずっと働き続けてくれている医療従事者に、何度でも感謝。

良いお年を!

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