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【エッセイ】 ユーロ元年のパリの思い出話

 これは平成14年の正月ころ、パリで買ったB5程度の観光土産。

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 ありがちな話と言われたらその通りなのだが、あの時は、ちょうどユーロに切り替わる年だった。
 12月年末から行って、正月明けたらフランがユーロになっていて、あちこちで便乗値上げがあったのを目の当たりにした(悪意ではなくユーロの端数が面倒だったのだろう)

 平成14年の新年、パリ。


 フランスで買ったものは他にもある。
 これもそうだ、イースターエッグ立て。

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 ルーブル美術館で買った特大ポスターは、丸めても機内で収納に苦労した(今となっては笑い話だが)。
 空港で一目惚れして、よく分からないまま残金すべて注ぎ込んだ薔薇は、後で調べたら、DAUM社のパートドヴェールというシリーズらしかった。

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 インターネットが発達して、リモートでどこへでも行けるというが(それはそれとして素晴らしいが)、土地と人の気配というものはそんなものだけではないと思う。

 少なくとも、ありふれたこの、エッフェル塔の観光土産のちゃちな印刷の紙を見るたびに、一度だけ行った、あの年の、あの時代の、あの瞬間のパリを思い出す。

 エッフェル塔の下で列に並んでいた時の、銃を持った重装備の警備兵、引き摺られる黒人青年(不法移民だと誰かが英語で囁いていた)。

 大晦日の夜に街を歩いて、エッフェル塔の下で、花火と爆竹と共に、白人も黒人も私も皆馬鹿騒ぎで新年を迎えたその瞬間を、それでもいつも思い出す。

 あれはフランスがユーロに切り替わった、その年のことだった。

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