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好きの搾取から考える一般社会での指導・コーチングの手段

以前「好きの搾取」に関して,現場コーチングの最前線にいると思われる教員の部活動顧問を挙げてみました.これは教育現場という「ある意味」特殊な場合ですが,今回はこの事例を一般社会での会社・仕事に当てはめてみましょう.

例えば,学生時代の研究室で卒論の作成時に教わったエクセルの技術を会社で使いこなしているAさん.何かあるたびに使い方を聞かれたり,どの関数を使えばいいか質問されたりということがあります.また,人と話すことが好きで,誰とでも仲良くなったりコミュニケーションを取ることができる営業のBさん.ことあるごとに,後輩などから,どう話をもっていけばいいかとか,会話の糸口や営業のポイントを散々聞かれることがあります.もちろん,AさんもBさんも会社という組織の一員であり,先輩社員として,会社の同僚や後輩に様々なことを教えることもあると思います.しかしながら,自分で調べることもせず,また自分で努力や工夫もせず,何かわからないことやどうすればいいか考えられない場合にすぐに頼られることもあるのではないでしょうか.このような事例も意味が少し違うかもしれませんが,「好きの搾取」のようなものと考えられます.

私自身も,大学院生時代〜教員という流れで,すぐに質問する後輩や学生などを見て・対応してきました.もちろん,わからなければ質問することは大変重要です.しかしながら,ネットなどで調べればすぐに分かることや,経験や学習などを積まないとわからないことを何でもすぐに聞いてくる人が少なからずいました.優しい人であれば,すぐに何でも教えることもするでしょう.ただ,それをしてしまうとその人のためにならなかったり,自分の仕事や時間を搾取されてしまうわけです.そこで,コーチングの視点から,そのような場合にどうすれば良いかを考えてみたいと思います.

コーチングはただ教える(受動的)だけでなく,気づかせることや考えさせる(能動的)ことが必要となります.そのためのポイントとして,以下の3つが挙げられます.

1.質問内容を明確にする
2.自分自身の活動したことを明確にする
3.そこから具体的にどの部分が不明点なのか検討する

これを最初にしっかりとやることにより,その後の労力や時間を減らしていけるはずです.その内容を具体的に考えてみましょう.

1.質問内容を明確にする

「何がどのようにわからないのかを明らかにする」ことによって,どこの部分までわかっていて,どの部分がわからないのかが把握できます.例えばエクセルの方法でもそこまでは知ってるよというところから教えられても,教える側も教わる側も時間や労力の無駄になります.そして,質問した側も聞いている立場上「そこの部分は知ってるよ」とはなかなか言えません(言う人もいますが).わからない部分がわかれば,そこからの方法などを指導したり教えることができますので,お互いの時間や労力を減らせるわけです.

2.自分自身の活動したことを明確にする

「どこまで自分自身(対象者)でやったのか(調べたのか)」ですが,自分で何も調べもせずやりもせず聞いてくる場合があります.ネットで調べれば聞かなくてもいいことや,少し実践してみれば把握できることを,すぐに聞いてこられても困るわけですね.ですので,わからないことに対してどのような対処・アプローチをしたの?と聞くことが必要ですし,その内容が間違っていた場合は違う方法を提供できるわけです.自分がやってできなくて聞いてみた結果,自分のやったことと同じ内容の話を聞かされても意味がありませんよね.そのような場合,自分のちょっとしたミスや勘違い(例えばエクセルの数式の細かいミスなど)でできていなかったということもあり得ます.また,調べればすぐに分かることでも,「ネットで調べてみればわかる」とだけ言うのではなく,「こういうキーワードで調べたり,このサイト見てみるとわかると思いよ」という感じで指摘してあげると,対象者も気分をあまり害せず自分自身で対応できると思います.

3.そこから具体的にどの部分が不明点なのか検討する

上記の内容と少しカブる部分もありますが,1,2の手順を踏めば,調べた結果どこまでがわかりどこからがわからないのかが明確になります.そこで具体的に自分自身の知識や経験などを提供していくことで,対象者に対しての指導・教育・知識の伝授ができるようになると考えます.

書き出してみると簡単な/当たり前なことのように思えますが,意外と実践でできていないことが多い内容だと思われます.わからなければ聞くという受動的な状態から,わからなければまずは調べてみて問題点を明確にして(能動的)から聞くというプロセスを作っていくことが,上司や先輩としての役割・コーチングになると思います.自分自身の「好き」や「知識・経験・技術・時間」を搾取されるのではなく,うまく提供できるようにするコーチング(?)テクニックの一つになるのではないでしょうか.