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ホリスティックな調剤薬局を実際に立ち上げてみて

皆さん、こんにちは!
ホリスティック薬剤師の佐々木貴美です。

今回は2019年6月〜2020年4月まで、私が立ち上げから関わり、薬局長を勤めた「コロリエ薬局」の開局・閉局を振り返りつつ、実際にやってみて感じたことをお話したいと思います。

統合医療やホリスティックヘルスなどへの関心が高まってきてはいるものの、まだまだ現状の薬局業界は西洋医学中心の調剤薬局・ドラッグストアが主流で、漢方薬局(漢方相談のみ、もしくは漢方相談+調剤薬局)が一部という、二極化されている印象を受けます。

ただ、「対処療法」が中心の西洋医学がもちろん必要な時もあれば、体質改善・自然治癒力を高めることで病気を予防したり、現在治療中の病気の回復を早めたり、現在の治療のサポート・薬による副作用の軽減をしたり、日常のQOLを高めたり、健康寿命を伸ばしていくには、予防医学・自然療法・東洋医学的なアプローチも大事だと思うんです。

『西洋医学だけでなく、自然療法や東洋医学、予防医学も柔軟に取り入れていて、今まで西洋医学しか知らなかった方にも「こういう選択肢もありますよ」という視野を広げるきっかけになったり、そしてできれば環境にも配慮したオーガニック・サスティナブルな観点も取り入れた、そんなホリスティックな薬局をいつか作りたい!』

そんな想いで調剤薬局で働く傍ら、自然療法・東洋医学・代替療法・予防医学や企業・ビジネスについても学んできましたが、当時は私も若かったのもあるとは思いますが、色々な方から「そんなことは難しい」「絶対出来ないよ」「なんで安定した仕事あるのに、リスク犯す必要があるの?」などと厳しい声を頂きました。
(当時付き合っていた薬学生の頃からの彼氏にすら、「お前は一体何を頑張っているのか分からないし、身になってるの?」「やったところで収益性あるの?」などと結構バカにされていました。笑)

そんな中、2018年の秋頃にたまたまInstagramをきっかけに、表参道・代官山・横浜で自然派の美容室を経営する方と出会い、似たような価値観を持ち、お互いホリスティックな薬局をいつか作りたいという共通点があったことで意気投合し、新事業として一緒に薬局を立ち上げる機会を頂きました。

前職の有休消化期間を利用して、インスピレーションを得るために実際にフランス・パリの薬局巡りをして、ヨーロッパにあるような自然派の薬局をイメージに、内装もアンティークでフレンチシックな雰囲気で、漢方や健康食品・サプリメント、オーガニック食品・コスメ・生理用品、メディカルハーブ、メディカルグレードのアロマなどを取り扱いながらも、リラクゼーションサロンも併設し、OTC医薬品販売&処方箋調剤も行う調剤薬局をなんとか無事にオープン。

処方箋入力・調剤、漢方相談・調剤、お客様・電話対応はもちろんのこと、コンセプト・パンフレット作りから商品セレクト、薬局開局に関わる書類の準備、SNSの世界観作り、オンラインショップ開設、セミナー開催などなど・・・。
1人でやらなきゃいけないことが沢山あり、正直大変ではありましたが、本当に人間力・仕事力が鍛えられましたし、友人の応援やInstagram経由でコンセプトに共感して下さった方々(特に医療従事者・セラピスト・美容関係の方が多かったです)がわざわざ県外・海外からも足を運んで頂き、貴重な経験や沢山の出会い・思い出もできて、そういった方々の存在が私の頑張る原動力になっていたのは間違いないと思います。

ただ、雇われ薬局長という立場で、自分でできる限りのことは全てやり尽くしたと言っても過言ではないくらい頑張ったものの、自分ではどうにも出来ない困難も多くありました。

まずは、誰かと一緒にビジネスをする難しさ

「何をやるか」よりも「誰とやるか」というのは本当に大切で、信頼関係次第で出来上がるもののクオリティも大きく変わってくると思います。
特に異業種の方と一緒にビジネスを始める場合は、それぞれの分野を理解し合い、多少ぶつかり合ったとしても、しっかりと意思疎通・軌道修正・歩み寄りをしていくことが必須ですが、私自身の未熟さもあったかとは思いますが、そこが上手くできず、コミュニケーション不足からすれ違いも多く、私自身が「死にたい」と思うくらい精神的に病んでしまい、この状態でお客様に良いサービスを提供し続けるのは難しいと判断し、最終的には閉局という選択をしました。

次に、薬局開設に伴う条件・資金面でのハードルの高さ

仕入れに関しては、一般的に医療用医薬品は7掛け、漢方薬・健康食品は5〜6掛けなので、そもそもの利益率も異なる上に、調剤薬局をやるとなると必要な機械・システムが多いだけでなく、近年の薬局業界では、M&Aや高齢化・経営悪化に伴う閉局も多いため、医薬品卸と新規取引を始めるのが難しくなっています

分包機やレセコンシステムは医薬品卸経由で用意する必要があるため、取引ができなければ、必然的に薬局をオープンできないため、事前のコネクションは必須です。

数年前に大手の薬局チェーンで調剤報酬の付け替えが問題視されたこともあり、今後は薬剤師が経営者もしくは役員でなければ、新規薬局開業は難しくなる見込みです。

実際にコロリエ薬局を立ち上げる際にも、非薬剤師の美容室オーナーではリース会社の審査が通らず、ただの従業員ではありますが、薬剤師の私が連帯保証人にならないと審査が下りませんでした。
(今まで両親から「もし誰かに連帯保証人になれと言われても、絶対になるなよ!」と言われて育ってきたので、正直すごく不安になったし、一応現状としては債務を抱えているわけではありませんが、未だにこれに関しては両親にも言えていません。笑)

医薬品・調剤器具・薬局開局に必要な備品・商品購入、システム・機械導入、人件費などで、おおよその目安にはなりますが調剤薬局の場合、1人薬剤師の規模で約1000〜2000万円。複数のスタッフを抱えてだと約3000万円〜5000万円くらいは初期費用がかかると言われているので、資金繰りも大変です。
(漢方薬局の場合はレセコンシステム導入がかからず、医薬品購入の掛け率も調剤薬局に比べると抑えられるため、初期費用は約500万円〜1000万円くらい。)

最後に、色々な分野に手を出す故に、「どこに重きを置くか」を明確にしないと、中途半端になってしまうこと。

「ホリスティック」を掲げているように、選択肢が多いことは良いことでもありますが、事業の中心軸がはっきりしていないと、どんなに良い事業を行ったり、どんなに素晴らしいビジョンを掲げていたとしても、収益が上がりにくく、全てが中途半端になってしまうという難しさを実感しました。
当たり前のことではありますが、事業をやるからには収益もちゃんと上げなければ、結局はお客様にも迷惑をかけてしまうことになるので、「理想と現実のバランスをいかに両立するか」が今後の課題だなと痛感しています。

20代のうちに経験した大きなチャレンジ・失敗を生かして、自己資金も貯めつつ、まずは自分自身の人間力・実績・ブランディング・認知度を高めるために日々研鑽を重ねて、35歳くらいまでには理想とするホリスティックな薬局を開業して、1人でも多くの方を本質的な健康・美しさ・幸せへと導くお手伝いができればなと思っています!

これから薬局の開業にご興味のある方に、何か少しでもヒントになれば幸いです。


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