ブラピ+新幹線アクション+伊坂幸太郎★ 映画『ブレット・トレイン』の暴走っぷり!
日本のマンガや小説原作のハリウッド映画化は、基本、不安がつきもの。
だって大体、大コケするでしょ。
スカーレット・ヨハンソンの『ゴースト・イン・ザ・シェル』とかね。
でも『ブレット・トレイン』は大丈夫。
伊坂幸太郎原作『マリアビートル』のハリウッド映画版だけど、面白い!
長編小説の映像化だし、演じるのはブラッド・ピット始め外国人俳優。
原作とは多少ストーリーも人物周りも変更されて当たり前。
そんなことはどうでもいい。
問題は、伊坂ワールドの面白みが壊れていないかだ。
大丈夫。伊坂幸太郎ファンはこの点を安心してほしい。
原作そのままという意味じゃなく、世界観が壊れていないということだ。
伊坂幸太郎って誰よ!?って人は、何もかも無視して観て大丈夫!
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では『ブレット・トレイン』の面白さをまとめて紹介していこう!
1) 新幹線、閉じた空間でのアクションサスペンス★
伊坂ワールドといえば、「狭い世界の中の事件」的なイメージだ。
閉じた空間では、サスペンス独特の緊張感が高まりやすい。
『ブレット・トレイン』は、新幹線の狭い空間で、次から次へと派手なバイオレンスアクションが展開する。
映画のキャッチコピーは……
「殺し屋しか、乗ってこねえ。」
もうひとつ、
「最悪が止まらねぇ。」
まさにそのものだ。
新幹線に搭乗する、レディバグ(ブラッド・ピット)を狙う怪しいやつら。
本当の敵は誰なのか? 一体何が起きているのか?
ノンストップなバイオレンスアクションだが、不思議に飽きない。疲れない。
閉ざされた中で緊張感が持続するからだ。
そして少しずつ謎が収束される流れも、うまーく挿入されているからだ。
2) やがてひとつに繋がる真実★
新幹線の中、あっちでバトル、こっちでバトル、いっけん無関係に見える殺し屋たちのバトル合戦。
それらの散りばめられた謎が、ラストに向かってすーっと1本に繋がっていく。この爽快感こそ、伊坂原作の真骨頂だ。
同じく伊坂原作の映画『フィッシュストーリー』でも、中村義洋監督が独特の映像表現で世界観を表していた。
こちらもバラバラの要素が1本化していく盛り上がりが素晴らしい。
『ブレット・トレイン』も然り。
原作のポイントを汲み取って脚色し、映像ならではの世界観を作り出している。
ネタバレになるので書けないが、ラストにかけては伊坂幸太郎ワールド全開だ。
駆け抜ける爽快感、収束感の気持ちよさに興奮がとまらない。
伊坂原作を知らない人も、そんなこと関係なくスカーッと見終えることができる映画なのである。
3) 日本の懐メロと、80年代ヤクザ任侠モノ感覚!
予算のかかった豪華製作ながら、ジョークっぽいチープ感もまた魅力。
懐かしの日本の楽曲がコミカルに使われていたり、任侠もののヤクザ社会がアメコミよろしく登場する。
製作スタッフが日本を勘違いしてる?
いや、わざとだ。
この確信犯的センスは侮れない。
例えば駅で待ち受けている日本のヤクザは、リーゼントに黒サングラスのチンピラ揃い。
アメリカ人の描く時代のズレ感かと思いきや、セリフで「80年代かよ」とツッコんでいる!
これ、わかって面白がって作っているのだ。このセンスがめちゃめちゃ楽しい。
豪華な超A級大作なのに、B級映画のチープな味付け満載である。
そして壮絶アクションのクライマックスで流れる音楽は、まさかの麻倉未稀の「ヒーロー」!
『スクール☆ウォーズ』(1984)を思い浮かべる世代にとって、この曲で暴れているのがブラピという、不思議な映像。
なんともチープ、いや逆にこの上ない豪華さがたまらない。
他にもカルメン・マキの「時には母のない子のように」、坂本九の「上を向いて歩こう」なんかが、ブラピのアクションを彩っている!
豪華キャスト・豪華映像とのアンバランスな面白さ。
こんな組みあわせ、どう転んだって二度と見られるもんじゃないでしょ。
4) 暴走新幹線の壮絶アクション★
日本人にとって新幹線は絶対的存在ではないだろうか。
超速、静謐、スマート、安全、美麗。
この誇りとでも言うべき精神的拠り所を、笑い飛ばしたり壊しまくったりはちょっとしがたい。
多分、実写の日本人監督であればね。
でもデヴィッド・リーチ監督の手にかかると、奇妙なお笑い列車にもなり、歯止めのきかない暴走列車にも化けてしまう。
車内ではキャラクターのモモもんが着ぐるみで踊っているし、新幹線パーサー(車内販売員)はコスプレイヤーみたいな金髪日本人。
そんな新幹線車内も見物だが、とにかく暴走っぷりが凄まじい。
新幹線が宙を飛んで爆破される!
外へ放り出された男が、超人的に暴走中の車両の屋根を伝い、フロントガラスを素手で割って侵入する!
おまけに日本らしく新幹線内のルールに従い、マナーを守りながらの殺し合い!
ジョークたっぷりながらキレのあるバイオレンスアクションは、『デッド・プール2』のデヴィッド・リーチ監督ならではだ。
リアリティなんかクソくらえ。
ハチャメチャ楽しい。
とにかくスカッと笑い飛ばせる。
こんな感じで映画『ブレット・トレイン』を楽しんだ。
真田広之の殺陣もカッコイイ。
この映画を観たら、ハリウッドが描く日本っていうのを観たくなる。
例えば、『キル・ビル』。
『ブラック・レイン』辺りで久しぶりに痺れてみるのも悪くないかな。