僕が「ビックデータ」を安易に信用しない理由
「ビッグデータが!」とか「データドリブンな!」とか「最終的にデータマネタイズできるはず!」とか言い出してる企画現場に居合わせている時、僕はだいたい心の中で眉をひそめています。
まだアレは2000年ヒトケタ代の頃。まだ「ビックデータ」というバズワードが発生してなかった頃のお話です。
当時某不動産メディアのWebチームに所属していたのですが、当時担当役員(非常に頭がキレる方)だった方が、「ユーザの不動産サーチデータ=需要、不動産会社の物件掲載データ=供給、ではないか。業界最大手(当時)の我々がこのデータを使った仕組みが構築できれば、データマネタイズができる!」と仰っしゃりました。
当時の高松青年は「おぉなんかスゴそう!」と共感し、では宜しく頼むよと賃貸不動産におけるビックデータ活用プロジェクトを仰せつかりました。
当時はこなれたBIツールがあまりなく、外資系のかなりバタ臭いデータ処理ソフトウェアを活用し、なんとかシステム開発を進めました。
開発過程はザクっとハショりますが、システム完成も間近。データスクリーニングレビューの時です。発表者から堂々と以下の発表がなされます。
「データによると、二子玉川エリアは3LDK以上のニーズが高いです!」
「データによると、自由が丘エリアはデザイナーズワンルームの需要が高いですが、供給が追いついていません!」
「データによると、代々木上原エリアは通常郊外エリア比較150%の家賃設定です!」
・・・・・・ぞわぞわぞわ(血の気が引く音)・・・・・・
知っとるがな!
不動産業従事者でなくても、東京に数年住んだらわかるわ!
的なデータしか出てこないというホラーな結果となりました。
もちろんスクリーニングのやり方次第ではレア情報も出せましたが、信憑性・規模・費用対効果からすると微々たる小ネタの枠を出ませんでした…。
結論、超大失敗SI案件として自分史に深く刻まれております。
ビックデータ活用を否定している訳ではありません。
近年はデータ収集・活用環境も格段に向上し、パワフルな成果が出るケースも多く登場していると思います。
ただ見失ってはならない事は、入り口は「機械にやらせる仕事」ということです。人間がやってきた単純作業を自動化し、ロボ君がビシビシ高速反復作業をやる、というのが基本です。それは「RPA(Robotic Process Automation)」というジャンルであり、AIでプロ棋士を負かせたり、小説書かせたりする、CA(Cognitive Automation)領域とは別の話です。
一般的に「ビッグデータ×AI」と市場で言われているところのイメージは、データーとAIの連携によりロボットが自ら成長し、人間同様の業務を任せられる夢みたいなシステム!というところですが、現状ではまだ発展途上の技術であり、正確性や導入コストの面でまだまだ課題があります。
つまり、ビックデーター×AIの実用範囲は、現時点では限定的で、ましてや万能ではありません。機械が膨大な情報を処理し、傾向を導いたところで、人間が持っているクオリアを超えないというケースは多いのです。(特に今回の賃貸ビックデーターがわかりやすい例)
更に本質を言ってしまえば、「ビッグデータ」とか「AI」とかよりも優先順位の高いマーケティング課題は絶対に存在しているはずです。そっちから片付けましょう。
引き続き、俺ら今風なグロースやってます!感を醸し出したいだけの「ビックデータ」とか「IA」を連呼するアサハカな企画会議には警笛を鳴らし続けたいと思います。
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