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暴走族の爆音で毎年思い出すこと

初夏のジメジメした雰囲気。
この季節はとてもうるさい。
夜に鳴り響く轟音。
何台ものバイクが国道を走る。

「ブーンブブ、ブーンブブー」
「ボワッ」
「ボゴォワァー」

またこの季節がやってきた…
この音を聞くたび、数十年前のことが頭をよぎる。

ボクは中学生だった。
まだまだ幼くて、何も知らないガキンチョ。

しかし大人になった今も答えは見出せない。

そもそも答えなんてあるのだろうか?

記憶のほつれを辿ってみよう。


中学時代の「とある同級生」


ボクは国道から離れたところに住んでいた。
初夏になると暴走族がバイク音をかき鳴らす。

「ブーブーン、ブ、ブーン」
「ブーン、ブブブーン」

当時は窓を全開にして寝ていたので、とてもうるさかったのを今でも覚えている。

ボクが通っていた中学校は少し荒れていた。
ヤンキー全盛の時代ではなかったが、それに憧れを抱いた人がたくさんいた気がする。
1つ上の学年が酷かった。
卒業式には、バイクが運動場を駆け巡り、パトカーも来ていた。
そんな中学校。

ボクの同級生は、その暴走族に入っていたらしい。

あまり学校へ来ることもなかったし、ボク自身その子に興味がなかった。
関わる接点自体がないに等しい。

だから「こと」が起こった時も、あまり現実味がなかった。

暴走行為の逝く先


いつものように暴走族が爆音を鳴らしながら駆ける。

「あ~、うるさいなぁ」

ボクはいつものことにいら立ちを覚えた。

多くの人は同じことを思っていたに違いない。
夜中の暴走行為は迷惑以外の何物でもない。
近所迷惑も甚だしい。

なかなか眠ることができなかった。

翌朝ボクはいつものように友達と遊んでいた。
その時である。
友達の母親が、

「○○くん、亡くなったんやって。たかきくん、知っとる?今からお通夜行くんやけど一緒に行く?」

頭がボーっとして、言っている意味がわからなかった。

そそくさと準備をする、友達の母親。
わけわからなくて、友達と戸惑っているボク。

あわあわしていると、いつの間にかお通夜である○○くんの家に着いていた。

そこには泣き崩れる○○くんの母親。
祭壇にはあまり接点のなかった○○君の遺影。
その前にある棺には○○くんの遺体が。

そこから先はあまり覚えていない。

迷惑行為の逝く先


ボクと同じように暴走行為に嫌気がさしていた人がいたらしい。
その人が、バイクに乗っていた(軽トラに乗っていた?)○○君をひっぺ返した。
○○君は頭を打ち、亡くなったとのこと。

この人が殺人罪に問われたかどうかは定かではない。
当時のボクはそんなこと確認しようと思ってもいなかった。

ただ「こと」が起こってからも暴走行為は収まらなかった。

○○くんは無駄死にだったのだろうか?
殺してしまった人はどんな気持ちだったんだろうか?
その人は悪いのだろうか?
もしかしたら、自分もやっていたんじゃないだろうか?

色んな思いが頭を駆け巡ったのを覚えている。
というか、暴走族の音を聞くたびに思い出す。

あれは何だったんだろう?

いまだに出ない答え。正解はない…


たぶん一生答えは出ないと思う。

暴走行為をした○○くんは悪い。
○○くんを殺した人も悪い。

どちらが正解かは自分の立ち位置で変わってくると思う。

ボクの立ち位置としては、殺した人側に近いのかもしれない。
けど完全にそうかというとそうでもない。
○○くんのことも、少しではあるが知っている。

だから答えが出ない。
一生答えは出ない。

しかし思い出は消えることはない。

ジメジメとして、蛙が泣き始めるころにいつも思い出す。
バイクの音で思い出す。

答えの出ない、苦い思い出。

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