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【パーソナリティ】経営陣のどのようなパーソナリティやリーダーシップが組織成果につながるのか?(Colbert et al., 2014)

CEOと経営チーム、それぞれのパーソナリティやリーダーシップが、組織成果にどう影響するのかを調べた論文です。興味深い内容でした。

Colbert, A. E., Barrick, M. R., & Bradley, B. H. (2014). Personality and leadership composition in top management teams: Implications for organizational effectiveness. Personnel psychology, 67(2), 351-387.

どんな論文?

この論文は、経営陣のパーソナリティやリーダーシップと、CEO のパーソナリティやリーダーシップの影響を比較し、どちらがどれほど組織の有効性と関連しているかどうかを検証したものです。

組織に対するCEOの影響は言わずもがなですが、経営陣の影響について論じられている研究はあまり目にしていなかったので、新鮮でした。
(なかなかデータが取りにくいのだろうと想像します)

研究モデルは以下図の通りです。

P355

結果ですが、まずパーソナリティの側面として、経営陣の「良心的(Consentiousness)」という特性が、CEOの「良心的」という特性と同様、組織業績の遅行指標と関連していることが発見されました。

「良心的」という特性は、粘り強く、規律正しく、達成志向の強い人物の特徴を示すもの、という説明がなされています。

続いて、リーダーシップの側面です。組織に対するフォロワーのコミットメントは、CEOと経営陣、双方の「変革型リーダーシップ」と関連していることが示されました。さらに、コミットメントには経営陣の方が大きく影響していたとのこと。興味深い発見事実です。

こうした結果から、著者らは、組織の有効性はCEOだけでなく、経営陣のような支配的なリーダーの集まりによっても影響を受けることが示唆され、これは「上層部理論」の視点とも一致している、とのこと。

「上層部理論(Upper echelons theory)」とは、上層部の視点は、企業の CEO と 経営メンバーの経験、価値観、パーソナリティが、彼らの環境に対する相互理解を形成し、 それが戦略的選択と組織の有効性に影響を与えるというもの(Hambrick, 2007)のようです。

(初めて目にしました・・・そんな理論あるのですね。企業の中にいると、当たり前な気もしますが、それを明示的に示すのが研究、なのかもしれません。)

著者らの問題意識

著者らの問題意識は、過去の経営チームに関する研究では、主に人口統計学的な変数ばかりが扱われてきたことにありました。例えば、チームサイズ、年齢、学歴、性別、在籍期間、などなど・・・

また、CEOを個人レベルの変数、CEOを含む経営メンバーをチームレベルの変数とするような、マルチレベルでの研究はなされていなかったとのこと。過去の研究では、リーダーの個人レベルでは、パーソナリティ、特に外向性、良心性、情緒的安定性、経験に対する開放性が、変革型リーダーの行動に関連していることが判明しているようです。

このように、経営陣の研究におけるパーソナリティとリーダーシップの調査や、チームレベルでの研究のなさに着眼し、外向性、良心性、情緒的安定性、開放性の平均レベルが高い経営チームは、変革型リーダーシップも高い、と想定しました。


調査対象

本調査のデータにも触れておきます。米国の94の信用組合の最高経営責任者(CEO)、副社長、その他の上級幹部(経営メンバー)、およびこれらの幹部の直属の部下から提供されたものです。

また、信用組合を監督する連邦機関である全米信用組合管理局(National Credit Union Administration)から、組織のパフォーマンス指標を収集した模様。

経営メンバーの規模は4~14名で、平均規模は6.4名(SD=1.9)であった。調査対象となった94人のCEOのうち、93人(98.9%)が回答した。CEOの平均年齢は48.2歳(SD = 15.2)であった。経営メンバーになってからの年数は平均16.0年(SD=8.9)。78.5%が男性とのこと。

結構大きなデータセットですが、これは別の研究でも使用された大掛かりな調査の一部の変数を用いたようです。(そういうのもありなんですね、、、)


結果の補足

今回の結果は、チームレベルの変数が、従業員のコミットメントに影響を与えるということから、組織成果創出のプロセスにおいてグループダイナミクスが果たす重要な役割を強調しています。互いに効果的に意思疎通を図り、努力を調整することができる、変革型リーダーで構成される経営チームにすることは、会社の成果創出において重要、ということが示唆されます。

ほかにも、組織成果に関しては、CEOの変革型リーダーシップ > 経営チームの変革型リーダーシップなのに、従業員のコミットメントについては、経営チームの変革型リーダーシップの方が影響が大でした。
これは、CEOより経営チーム全体の方が、従業員に近いからという理由と著者らは考察しています。

そして、経営チームの変革型リーダーシップには、「良心的」という特性が効いていたことから、組織のトップリーダーの昇進や後継者計画を決定する際には、良心的で、高いレベルの変革的リーダーシップを発揮する人物を選ぶよう、あらゆる努力を払うべき、という提案を行っています。


感じたこと

リーダーシップに影響を与える要因として、「良心的」という特性が示されたのは、前回の研究とも似ている研究結果でした。

パーソナリティがリーダーシップに影響を与える、というのは、言い方を変えると、リーダーの特性によって、リーダーシップの発揮度合いが変わる、ということです。

こうした研究結果は、誰をリーダーに選ぶのか、という選抜の参考として活用できそうです。今回の研究は、チームレベルの変数を扱っているので、チーム内の相互作用を高めることでも、リーダーシップの発揮度合いが変わりうることを示しました。

こうした、個人だけでなく、チームの影響が重要と言うのは、現場感覚と通ずる部分もあり、関心が高い分野です。チームの有効性という観点でも、論文読み込みを続けようと思います。




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