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【インクルーシブ・リーダーシップ】そもそも、インクルーシブ・リーダーシップとは何か?

記念すべき第一回目の投稿は、駆け出し研究者である自分が注目している、「インクルーシブ・リーダーシップ」とは何か?について扱います。

インクルーシブ・リーダーシップとは

一言でいえば、多様な従業員が「インクルージョン」されるためのリーダーシップ、です。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と、セットで語られることの多い「インクルージョン(Inclusion)」ですが、中学英語で学ぶ「Include」(含める)の名詞形です。つまり、多様な従業員が、組織に含められている(包摂されている)状態と言えます。

実務家としての肌感覚にすぎませんが、日本においては、D&Iでも「ダイバーシティ」を強く推進する一方、「インクルージョン」については、言葉としてはよく聞くものの、どのように実現するのか、実現した状態はどのようなものか、といった点には、あまり焦点が当たっていないように思います。そうすると、従業員の多様性は増すものの、インクルージョンされずに活躍できない、辞めてしまう、ということもあるかもしれません。

こうした「インクルージョン」を促進するリーダーシップとして注目を集めつつあるのが、「インクルーシブ・リーダーシップ(IL)」です。

最近では、リーダーシップの世界的な教科書として名高い、Northouse(2021)の「Leadership」第9版から、1つの章として「Inclusive Leadership」が乗るほどまでに注目度は高まっています。


インクルーシブ・リーダーシップの定義


ILは出てきたばかりの萌芽的概念と言われ、研究者の中で合意された定義がまだない、という状態です。研究の中には、Leader Inclusivenessとか、Leader Inclusionとか、色々な呼ばれ方をすることも多いのですが、特に違いもなく使用されている状態です。
初期の代表的な研究である、心理的安全性で有名なハーバード大のEmy Edmondson教授らは、Leader Inclusivenessを以下のように定義します。

他者の貢献や挑戦を奨励し、承認を示すリーダーの言動

Nembhard & Edmondson (2006)

また、インクルーシブ・リーダーシップの指標を作成し、現在定量研究でよく使われるのが、Carmeli et al.,(2010)の定義です。Carmeliらは、ILを3次元でとらえました。

  1. 開放性(Openness):リーダーが、フォロワーの意見やアイディアに対してオープンであること

  2. 近接性(Accesible):リーダーが、フォロワーにとって話しかけやすく、相談しやすいこと

  3. 有効性(Available):リーダーが、フォロワーにとって役に立つ存在で、力になってくれること

こうしたリーダーシップを通じて、フォロワーが組織において帰属意識を感じ、自分のユニークさが活かされ、「インクルージョン」が実現される、とCarmeliらは説明しています。

また、日本でも少しずつ研究が増えてきました。詳しくは、武蔵大学・森永教授の書かれたこちらのブログが参考になります(自分もこちらのサイトで色々勉強しております)。


インクルーシブ・リーダーシップは何に効くのか

上述の通り、多様な従業員の「インクルージョン」を促進することで、多様性が力になり、成果につながる、とされます。それ以外にも、これまでの研究では、心理的安全性を高める、メンバー間での対話を促す、ワークエンゲージメントを高める、他者への援助行動を促す、職場の垣根を超えた行動が生じる、などといった影響が確認されています。

特に、最近耳にすることの多い心理的安全性は、ILとさまざまな効果を媒介することも知られています。例えば、ILが心理的安全性を高め、その結果、他者への援助行動が促進される、といった感じです。

ここで紹介した、ILが効く要素は、どれも多様性が増した職場においては有効なように感じます。労働力人口が減少の一途をたどる一方、外国人、女性、シニアがもっと活躍できる組織が求められる中で、そうした人材が「インクルージョン」、帰属意識を感じて、自分の独自性が活かされる、という認知を持つために、ILが果たす役割はますます大きくなるはずです。

このNoteでは、インクルーシブ・リーダーシップというテーマを中心に、駆け出し研究者である自分が調査し、学んだことをお裾分けしていきます。

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【参考文献】

  • Carmeli, A., Reiter-Palmon, R., & Ziv, E. (2010). Inclusive leadership and employee involvement in creative tasks in the workplace: The mediating role of psychological safety. Creativity Research Journal, 22(3), 250-260.

  • Nembhard, I. M., & Edmondson, A. C. (2006). Making it safe: The effects of leader inclusiveness and professional status on psychological safety and improvement efforts in health care teams. Journal of Organizational Behavior: The International Journal of Industrial, Occupational and Organizational Psychology and Behavior, 27(7), 941-966.

  • Northouse, P. G. (2021). Leadership: Theory and practice. Sage publications.


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