見出し画像

もっと消極的に生きてもいいのに

 フリーの編集者といえば、みな社交的なイメージです。業界の友人との幅広い付き合いがあって、友人同士で楽しんで仕事をする。だから、友達作りに消極的な僕なんかがフリーランスになったら、恐ろしいことになるだろうなあと思っていました。

 でも、現実はそうではありませんでした。まだまだフリーランスになって3カ月、これからの道を模索している最中ではありますが、仕事のためにつながりはもちろん必要ながらも、それだけじゃないんだろうと感じておる次第でした。

 そんな中、デザイナー新井リオさんの記事を見て、なるほどなあと感じたのです。“『営業しない』営業方法”というのがまさに今の時代に合っているなと。

独学5年目フリーランスデザイナーの、『営業しない』営業方法3つ

 フリーランスとなれば、当然つながりを増やして自分を売り込まなければ使ってくれません。これまでの時代なら「営業=足で稼ぐ」が当たり前でした。つながりを増やすために積極的にいろんなところへ出向き、アピールをする。でも、時代は変わりました。SNSをはじめとするインターネットによって、自宅にいながら誰もがつながれる時代になったのです。

 じゃあフリーランスが何をすればいいかというと、僕はこういう人間だ、という作品、コンテンツを作る。他にはない自分だけの強みを見つけて、その足跡を残し続ける。地道だけれど、これなら消極的な僕にもできるなと思いました。モノ作りを積極的にすれば、人付き合いも生き方も、べつに消極的でいいんじゃないかと思ったのです。

 もちろん、作品なりコンテンツ自体を作ってみないことには何も始まりません。最近、オンラインサロンなるものが流行っています。別にこれを否定も肯定もしませんが、そこに属することで何かできるようになるとか、ましてや所属していることをアピールしていても何も始まりませんよね。大学を否定するような動きも見受けられますが、これには驚きました。大学は学びたいことがある人にとって、最高峰の教えを乞うて、研究までできる、最高の教育の場です。少なくとも僕は勉強をして大学院にまで行ったことを誇りに思っています。大学に行かなくても、オンラインサロンに通えば何者かになれる、という考えは間違っている。これこそ積極性の履き違えだと感じています。積極的になるべきは所属でも関係作りでもありません。コンテンツ作りなのです。

 実際にブログだけで生きているブロガーさんも大勢いますし、自分が作ったアクセサリーを販売して生計を立てている職人さんもたくさんいます。もちろん、いつの時代もそんな地道に頑張る人々はたくさんいました。でも、SNSの台頭によって、これまで以上のそんな人たちの素晴らしさにスポットが当たり、誰もがそんな素直な人生に触れられるようになったのです。そして、そんなモノ作りに憧れる人も増えるようになりました。

 こうして、市場はもっともっとミニマイズされてゆき、その分小さな市場が増える。これまでになかった職種ができて、みんながそこそこ稼いで、楽しく生きていく。バブル崩壊以後の合理化の反動を受けた、そんな穏やかな時代が来ています。

 そもそも、仕事という概念自体が変わったように思います。一昔前の「仕事」といえば、とにかく積極的に努力をアピールして、成果を上げて、給料を上げて、いい暮らしをするためにあるもの。目的のための手段だったはずです。でも、これからは自分がやりたいこと、自分の得意なことを見つけて、地道に続けることが仕事につながるんです。つまり、仕事が目的でも手段でもなく「生きること=働くこと」になる。仕事と生活の関係が“目的と手段”から“イコール関係”に変わった(むしろ、戻った?)のではないかと。

 だから、別に無理にアピールしなくてもいい。世の中に対して(もしくはソーシャルに対して)積極的に生きなくてもいい。肩書きも所属だってどうでもいい。消極的でもいいから、自分にしかないコンテンツを泥臭く作ることができるよう、ただただ愚直に邁進することが大事なんだろうなと思うわけです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?