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”自分の身は自分で守る時代”に問われる「生き抜く力」

少し前の日経新聞に、「金融機関、働き方多様化」という記事が出ていました。みずほFGの週休3~4日制を筆頭に、金融機関が働き方の多様化に乗り出しているという内容です。

企業の人件費を抑える動きが進んでいる

この記事は、「働き方の選択肢が広がってきた」という文脈で書かれていますが、会社が人件費を抑えるための動きが進んでいるという見方もできます。記事の中には、こんな表現がありました。

増えた休日を生かし、資格学校や大学院、ビジネススクールで知識やスキルを磨くことを想定している。利用にあたっては土日に加え、毎週決まった曜日を休みとする。給与は週休3日だと従来の8割、週休4日の場合には6割まで減る。
関係者は「閉じた社内での競争原理でなく、広く学びの機会を得て社内外で通用するスキルを磨いてほしい」と話す。これまでは本腰を入れて社外で学ぼうとすればやむなく休職を選ぶこともあり、キャリアの形成で不利になると二の足を踏む場合も少なくなかった。

これはもはや、「自分の身は自分で守るように」というサインであるとも捉えられるでしょう。会社が「自由な働き方」や「業務外の学び時間」を柔軟に認める代わり、各個人は自分のキャリアや生活を守る責任を自ら負うという動きは、さらに進んでいくと思われます。

会社にぶじ勤めあげさえすれば、必要な収入が確保できるという楽観的な見込みは持ちづらくなりました。昇格・昇給によって給与を上げていくことは、そう簡単ではなくなります。

となると、企業の人件費抑制トレンドがどんどん進むと同時に、副業・兼業という概念が当たり前になってくるでしょう。労働を時間で区切るということには、もう限界が来ているのではないでしょうか。続いて予想されるのは、「残業」という概念がなくなってきて、いわゆる残業代に給与収入を頼るという考え方でやってきた人にとっては大打撃になり・・・という展開。
「自分の身は自分で守る時代」に突入します。

どうやって自分の身を守るか?

自分の身は自分で守るために、具体的にどうしたらよいか?パッと浮かぶのは「副業」や「パラレルワーク」という選択肢です。副業や兼業によって、いま自分が勤めている会社以外に収入の場を持つことはこれから身近なものになっていくでしょう。これまでは副業を認めないスタンスを取っていた会社も、人件費を抑えるかわりに、背に腹は変えられず、「必要な収入は外で稼いで下さい」という方向に変わってくることは容易に想定されます。

自分の身を自分で守る時代になってくると、いわゆる「プロジェクト的な働き方ができるどうか」が重要になってきます。「プロジェクト的な働き方ができる」というのは、ある特定の状況(そこにはお客様がいて、目的やミッションがある)で、人に価値を認められる貢献ができるということ。そして、自分の居場所を自分で作れるかどうか。そういった世界観です。

似た議論として、「メンバーシップ型雇用」「ジョブ型雇用」という言葉があります。よく言われるのは、従来型の日本企業はメンバーシップ型雇用だったのが、これからはジョブ型に移行していくのでは、という話です。

メンバーシップ型雇用の世界観だと、居場所は既に会社によって用意されています。その場合、組織の不文律や暗黙の了解に対してどうキャッチアップしていくかが求められてきます。組織の「ルール」を理解すれば、あとはそのルールに沿った形で評価されていきます。

一方、ジョブ型雇用の世界では、つど、自分で居場所を作る必要があります。「ルール」を手探りで模索していったり、場合によってはルールを作る側に回ることもあります。そこで求められる「生き抜く力」を高めるために、ふだんからできることとして、どのようなことがあるのでしょうか。

大半の方は、いきなり「副業」や「パラレルワーク」を始めようとしても、準備が整っていないということがあるかと思います。そこで、まずは小さなステップからできることを考えてみましょう。

「生き抜く力」を高めるためにできること

自分の身を自分で守るための「生き抜く力」を高めるためにできる小さなステップとして、いくつかピックアップしてみました。

●アウェイの場に飛び込む
●自分なりに場を主宰する
●世の中に向けて情報を発信する
●ふだんとは違う情報をインプットする
●ふだんとは違う人と交流する
●新しくプロジェクトを始める

これらに共通するのは、「コンフォートゾーンを抜け出す」ということです。「コンフォートゾーン」について、Wikipediaから定義を引用してみます。

コンフォートゾーン(英語:Comfort zone)とは、「快適な空間」を意味する語である。心理学などでは、ストレスや不安が無く、限りなく落ち着いた精神状態でいられる場所を指す。

落ち着いた精神状態でいられる場所を抜け出すには、それなりのストレスがかかります。たった一人でコンフォートゾーンを抜け出す挑戦をしようとしても、なかなか心もとないということがあるかもしれません。そこで、私が鍵になると思うのは、3段階からなる「人のつながり」です。

3段階からなる「人のつながり」を意識する

3段階からなる「人のつながり」というのは、
●日常のコミュニティ
●非日常のコミュニティ
●弱い紐帯
です。

①日常のコミュニティ

職場やいつもの仕事仲間、プライベートだったら家族・親しい友人、そういた、気心が知れていて安心できる間柄というのが「日常のコミュニティ」です。このベースがあることで、多少リスクをとったチャレンジをしても、戻ってこられる場所が確保されます。安心できる日常の人間関係があるからこそ、リスクを取れるのです。

②非日常のコミュニティ

趣味・習い事の仲間、SNSでいつもやり取りしている友人関係や、新しいプロジェクトで一緒になったメンバーなどとのつながりが「非日常のコミュニティ」です。非日常のコミュニティでは、日常の自分とは「違った顔(ペルソナ)」を作ることができるので、このコミュニティにおいて、コンフォートゾーンを抜け出すような新しい挑戦をしていくのがよいでしょう。

③弱い紐帯

アメリカ合衆国の社会学者であるマーク・グラノヴェッターは、「弱い紐帯の強み」という有名な研究を残しています。もともとは、ホワイトカラー労働者が現在の職を得た方法を調べたところ、よく知っている人より、どちらかといえば繋がりの薄い人から聞いた情報を元にしていたという研究なのですが、「単なる知り合い」ぐらいのつながりから大事な情報価値が生まれるというのは面白い示唆です。現実の生活では、「知人の知り合いで紹介してもらった人」や「SNSのフォロワー」「同じセミナーに参加した人」などがこれにあたるでしょう。

さて、3段階からなる「人のつながり」について書きましたが、自分の身を自分で守る「生き抜く力」を高めていくには、
日常のコミュニティで安心できる基盤を作り、
非日常のコミュニティで新しい挑戦をし、
弱い紐帯を常に拡げ、非日常のコミュニティの入口を探す
のような構造を作っておくことで、「コンフォートゾーンを抜け出す」ことが日常化されます。

コンフォートゾーンを抜け出すことが日常化されてくれば、筋力トレーニングで筋繊維が強くなっていくかのごとく、タフネスが増していきます。

自分の身を自分で守るために、3段階の人のつながりを意識しながら、「生き抜く力」を高めていきましょう。

#日経COMEMO #NIKKEI

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