《書評》 『音大崩壊』(2022)
筆者の大内孝夫さんは、『「音大卒」は武器になる』(2015) で、一躍有名になった。音大や音楽教室をはじめ音楽業界では、いまや「時の人」である。
果たして、音大は崩壊するのか?
それとも、筆者が本書で提案する「音楽教育を救うたった2つのアプローチ」に従えば、日本の音大を救うことができるのだろうか?
評者は、現時点において、日本の音大の未来に対してきわめて悲観的である。ふたつの「音大」で学長を務めた経験からいっても、大内さんのいう「たった2つのアプローチ」だけでは、日本の「音大を救う」ことは到底できない、と私は考えている。
『音大崩壊』
衝撃的なタイトルである。
『音大崩壊~音楽教育を救うたった2つのアプローチ~』(2022)は、大内孝夫さんの音大・音楽関連としては9冊目の著書である。
大内さんは、①『「音大卒」は武器になる』(2015)で華々しくデビューしたのち、続編となる②『「音大卒」の戦い方』(2015)、③『「音大卒=武器」にした元メガバンク支店長が贈る! 大学就職課発!! 目からウロコの就活術』(2016)を続々と出版。
全国の音大生の就職を力強くサポートする就職部長として脚光を浴びた。
さらに、音楽指導者(レスナー)向けとして、④『「音楽教室の経営」塾1 【導入編】 教えるのは誰のために?』(2017)、⑤『「音楽教室の経営」塾2 【実践入門編】 たった2つのキーワード』(2017)を出版。
社会人向けには、⑥『人生100年時代“最強の習い事” そうだ! 音楽教室に行こう』(2018)を出版。
子育て真っ最中の若い親たちに向けては、⑦『AI時代最強の子育て戦略 「ピアノ習ってます」は武器になる』(2021)を出版した。
最初の著書はマンガにもなった。⑧『音大出てどうするの?~マンガ『「音大卒」は武器になる』』(2021)。
まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いである。大内さんは、2020年に名古屋芸術大学の教授となった。
音大と音楽教室に関するこのような著作はこれまであまりなかったこともあって、すでに一つの産業として成立している。そして、大内さんのほぼ独占市場状態となっている。
理由は明白だ。
この業界には「ビジネス書」がなかったのだ。いわゆるニッチ(隙間)に完全にはまったのである。
さて、大内さんの最新作である『音大崩壊』の内容を紹介したい。
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