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府中市のふるさと納税の返礼品は「プリズンツアー」

前回と同じく8月13日の東京新聞で面白い記事があった。またまた東京新聞のWeb記事は見つからなかったので、読売の類似記事を。

ふるさと納税の返礼品競争の過激化が問題視されていますし、認定NPO法人を運営している立場として、認定NPO法人は、返礼品は禁止されているのに、ふるさと納税はOKで、もはやふるさと納税は商品であり、市場競争の延長戦だと感じることがしばしばある中で、このプリズンツアーはとてもよい返礼品だなと思いました。

NPOでもクラウドファンディングの返礼品に現場見学等はあるので、よく考えれば珍しい発想ではないのかもしれないけど、ふるさと納税の中ではとても珍しい企画。とりわけ、刑務所という一般の人があまりなじみのない場所に行けるというのは、その地域や、社会を理解する上でとても役に立つし、これぞ、寄付と返礼品としてとても良いマッチなのではと思いました。

私も、機会があって少年鑑別所に見学に行かせていただいたことがありますし、普段児童養護施設や自立援助ホームというなかなか一般の方が入ることができない場所によく出入りしている立場として、それらの場所に行くと、人の生活・暮らしが垣間見えて、そこにいる人たちのことを想像せずにはいられなかったりします。残念ながら、こういった施設や場所って、そこにいる一人ひとりの顔や生活への想像よりも、固体とか社会の中の機能として認識してしまうところがあると思うけれど、それだとどこか他人事というか、自分とは関係ない話になってしまうと思う。

自分や自分の家族にいつ起きてもおかしくないし、すでに起きているかもしれないし、それくらい日々の生活や暮らしの延長線上にあって、だからこそ、みんなでその場を育てたり、理解したりしていくことはとても大事だし、ひいては自分のためにもなるということが、見学等によって温度感をもって伝わる。

一方で、そこにいる人たちにとっては、自分たちは見世物じゃないという感覚もあることを忘れてはいけません。例えば、私たちがよく訪れる児童養護施設にいる子どもたちと話しているときに「自分は選んでここにきていないのに、大人は好きな時に来て好きな時に帰る。自分たちは見世物じゃない」といった声を聞いたことがあります。人の家に「見学させてください」とは失礼すぎて言わないと思いますが、私たちNPOにも「現場を見学させてほしい」という依頼はよくあります。もちろん、公益的な事業なので、プライベートな家と同じように比較するべきではありませんが、そこにいたくているわけではない生活している人たちの気持ちを忘れてはいけません。

今回の府中市のプリズンツアーがどこまでそういった点を配慮したかはわかりませんが、その施設ごとの役割、そこにいる人たちの経緯等によって、企画の在り方、見学の在り方はもちろん変わるんだろうと思います。

いずれにせよ、今のふるさと納税の在り方の違和感がある中で、市場競争の延長戦上のものではなく、ひとりひとりが当事者意識をもって、地域で起きていることに関心をもって、ぬくもりを感じて、自分事化していくためのふるさと納税であってほしいなと思いました。

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