読書感想文で褒められた思い出話

テレビ番組で、夏休みの自由研究の進め方について特集していた。
疑問を見つけ、本やネットで調べ、仮説を立てて、実験・観察し、結果について考察する…。
自由研究が苦手だった子ども時代の私に、この番組を見せてあげたい。
今思い返すと「星座について図書館で本を読み、ノートにまとめました」は研究ではない気がする。 
「本で調べた星座が本当に見えるか、星空観測に出かけた結果をノートにまとめました」なら研究と呼べたかな。

その番組では、出演者のひとりが「自由研究で1位を取ったことがあり、嬉しかった」と話していた。
自由研究について褒められた経験はないけれど、読書感想文で褒められた思い出が蘇ってきたので、記そうと思う。

中学時代、いしいしんじさんの「ぶらんこ乗り」という小説を題材に読書感想文を書いた。
選んだ理由は、この本に影響を受けて作られたポルノグラフィティの楽曲があり、ファンとしては読んでおきたいと思ったからである。
動機が好きなもの由来だと、筆も乗る。熱量高く、過去最速で書き上げた。


それを2学期の始業式に提出し、しばらく経ったある日。
国語の先生から呼び止められ、読書感想文について褒められた。
もう10年以上前の話なので、どのように褒められたかまでは覚えていない。しかし、読書感想文で褒められた経験がなかった私は、内心とても喜んだ。
何かの賞を取った訳ではないけれど、先生の元に集まった多くの読書感想文から、私の作品を見つけてくれたことが嬉しかったのだ。

そして、中学を卒業してから数年後の夏。
アルバイト先で、偶然その先生とお会いした。
担任のクラスに在籍したことはなかったのに、私の顔を見るとすぐに名前を呼んでくれた。
近況を報告し終えると、先生は次のように話し始めた。


勤務先の学校で、最近いしいしんじさんの「ぶらんこ乗り」を見つけたこと。
そして、私という生徒を思い出したばかりだったので驚いたこと。

中学時代に褒めてもらえただけで嬉しかったのに、本をきっかけに先生が思い出してくれたと知り、じんわりと心が温かくなった。
この経験は、文章を書くのが好きになったきっかけのひとつだ。


先生とはそれからお会いしていない。
またどこかでめぐり逢えたら、先生のおかげで今も文章を書くのが好きだと伝えたいな、と思う。

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