現代むかしばなし〜お家に帰ろう、ねんねん寝返りでまた明日〜
それはそれは…
すこし前の出来事だったそうな。
あるところにパパとママ、そっちゃんが
暮しておりました。
パパはお仕事へ、
ママは洗濯機をまわしにいきました。
ママが洗濯をしていると、
玄関の扉をバタンと閉め、
ガチャと鍵をかける音が
聞こえてきました。
そっちゃんはおかしいな⁈と
そんなことを思いました。
いつもは、
「いってきま〜す。」
「いってらっしゃ〜い。」
パパとママのこの挨拶がなかったからです。
その日はそっちゃんは…
ママと2人で過ごしました。
パパの帰りを待っていましたが、
パパはなかなか帰ってきません。
そっちゃんはとうとう寝てしまいました。
次の朝、そっちゃんが目を覚ますと、
いつも隣に居るパパの姿が見えません。
パパが居なくなってしまった…
そっちゃんは不安になり、
大きな声で泣いてしまいました。
ママはそっちゃんには何も言いません。
ますますそっちゃんの不安は募ります。
すると…ママが、
大きな段ボールを持ってきました。
隣の部屋で段ボールを広げて、
ゴソゴソと何かをしています。
そっちゃんは、
何をしているのか?
隣の部屋を覗きたい!そう思いましたが、
まだ扉を開けることも歩くことも出来ません。
そっちゃんは、
どこかにママはお引越しをするのか⁈
パパは…?
ますます不安が募りました。
隣の部屋から戻ってきたママは
神妙な面持ちでソファーに座りました。
そっちゃんは声を出すことも泣くことも
出来ませんでした。
ただそんなママの横顔を
ずっと見つめていました。
すると…
突然!玄関から扉が開く音が
聞こえてきました。
パパが帰ってきたのです。
そっちゃんは大喜びでした。
パパはとても申し訳なさそうな顔を
しており、
ママも少し気まづそうな表情していました。
そして…ママは、
『部屋がほしかったらつくればいい!』
そう言って、
パパを隣の部屋へ案内しました。
そこにはパパの部屋が出来ていました。
部屋の隅に段ボールで仕切られた、
パパがギリギリ座れる
慎ましい小さな空間でした。
パパはそっちゃんにも、
「ゴメンね…」と謝ってくれました。
パパはプライベート空間が
欲しかったのです。
ただそれだけでしたが、
ママはそんなことを言うパパを
責め立てたのです。
そしてパパはそっちゃんに、
こっそりと教えてくれました。
ママは生理というホルモンバランスで
猛獣化するから気を付けろよ!と。
それ以来…
パパはママの家事をお手伝いをし、
そっちゃんと遊ぶ時間も、
たくさん持つようになりました。
そっちゃんは、
大きくなっても部屋がほしいとは、
言わないようにしようと思いました。
段ボールで仕切られたお部屋では、
とても心許ないからです。
コロコロ寝返りをして
寝返り先にあるテッシュを
いっぱい口に詰める、
寝返り先にある物を
倒したり、なげとばし部屋を散らかす。
そんな元気いっぱいのそっちゃんは、
果たして良い子なのか…⁈
答えは否じゃ!!
「坊や、いい子やネンネしな〜」
ママの怒りに触れないのは、
いかにも、今も昔も変わりなく
これに限るのじゃ〜
そして、そして…
パパ、ママ、そっちゃんの家族3人は
とあるところの狭いアパートで
今も仲良く暮しているとさ。
めでたし、めでたし。
おしまい。
そっちゃんでした。
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