天の河にて魚座（ビスケス）を釣る

今宵はダークマターが凪いでいる。

こんな夜は天の河の星流穏やかで、煌めく魚座がよく釣れるのだ。

二日月の竿抱え、サンドイッチを籠に入れ一人釣りへと出かけよう。

向こう岸には織姫様が。陽気に一つ投げキッス。釣果を見せてあげるから。　

彗星の長い糸たらし、気長に釣りを始めよう。

過ぎる時間に釣れるのは、蟹座（キャンサー）ばかりは情けなく。

太公望じゃああるまいし。あくびを一つ噛み殺し、サンドイッチを頬張ろう。

突然しなる竿先に。大物の気配感じ、ついに来たかとほくそ笑む。

エイヤぁと気合一発。竿上げて、その瞬間に見たものは。

星を散らして跳ね上がる、巨大な姿　鯨座（ケートス）だ。

とんだ外道がかかったと、慌ててみたがもう遅く。

天の河に引きずり込まれ、ボクの躰は星塗れ。

鯨座（ケートス）深く河に潜ってしまい、星の波紋を残すだけ。

釣り竿を返しておくれと、呟いてみても仕方なく。

もう帰ろうかと肩すくめ、周囲を見ると鯨座（ケートス）の。

跳ねた土産の魚座（ビスケス）が、ピチピチ踊る。

一匹魚座（ビスケス）つかまえて、今宵は家に帰ろう。

水瓶座（アクエリアス）に水を張り。アクアリウム仕立てたら。

魚座（ビスケス）蟹座（キャンサー）水に入れ。今日の思い出観賞するのだ。

今宵はダークマターが凪いでいた。

by taka