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ベテルギウス消滅から考える、年代間ギャップを逆手に取って組織の強みに変える方法

"今見えている星は、実は昔の姿であって、もう消滅してしまっているものもあるんだよ"

最近よく子どもが小学館の図鑑のDVDを見ているのだが、そこでドラえもんが放った驚きの一言である。

有名なところで言うと、冬の星座で有名なオリオン座。その中の左上で最も輝き目立っているベテルギウスという星はもう存在していない可能性があるのだという。

地球とベテルギウスの距離は642光年。つまり、光の速さでも642年かかる場所にあるので、今私達が見せられているのは642年前の姿だということ。

したがって、この642年の間に消滅しているとすると、時間的なラグが生じ、その人の目に見えているものと実際のものにギャップを生むという現象が起こるという、なんとも不思議な話である。

これは、物理的な距離がそうさせているわけであるが、これに似たような話は、少しばかり形を変えて、我々地上でのビジネスでも耳にすることがある。

例えば、人材育成の場面。50代の社長と入社したての20代の若手がそれぞれ持つ理想の人材像には、時間的なラグが生じており、おそらく高確率でギャップが生じていることだろう。

今回は、その辺りの時間的なラグによるギャップとその解決法をテーマに、少し考えを巡らせてみたいと思う。

■社長と若手の仕事観には、時間的なラグがある

先ほど50代の社長と入社したての20代の若手の例を出したので、その対比で話を進めてみたいと思う。

若手の仕事ぶりについての社長の一言である。

"俺が昔、新入社員だった頃は、与えられた仕事はイヤと言わず、それこそ毎日終電まで一生懸命取り組んでいたよ。ところが最近の若いのは、できませんの一言ですぐ片付けがちで、怒るとすぐ辞めてしまう。根性がないのだろうか。"

どことなく、聞いたことが"ありそうな"一言ではないだろうか。

その可否はさておき、50代の社長の20代の若手の間にギャップが生じているのは間違いないだろう。

社長自身が若手の頃見ていた当時の仕事観を、今の若手が今見ている仕事観に当てはめると、30年の時間的なラグが生じるとも言える。

教育現場でも近いことはあるかもしれない。

部活で、水を飲むなと言われた時代を生きてきた人がいる一方で、水は飲めと言われた時代もある。

子育てでも、自分の頃の学習法が、多様化した現代に通用するかと言われれば、必ずしもそうだとは言えないだろう。

なお、ベテルギウスの例と異なるのは、それが物理的な距離の話ではなく、心理的な距離の問題なのだというところである。

■時間的ラグが生んでしまう弊害

そんな時間的なラグは、しばしば、それも水面下の見えにくいところで、問題を引き起こす。

例えば、終身雇用を前提としているか否かは、それを良きと取るか悪しと取るかに年代別で大きな差があるため、結果として仕事観に大きなギャップを生む可能性を秘めているように思う。

ここを見誤って、最高齢が自身の仕事観で、しかも最前線で若手の採用を進めてしまうと、大きなギャップを生んでしまう可能性が高い。

また、分業制にもかかわらず、「俺の時代は、言われなくても上司の仕事を進んでこなしていた」等といった理論を振りかざしてしまう場合についても、同様の事態を引き起こしてしまう。

結局の話、50代が持つ仕事観を、今の20代にそのまま当てはめて上手くいくはずがないという話である。

それは、30年前のラジカセを、当時良かったから今使えと言っているようなもので、現代の状況変化を加味していないからこそ起きてしまうギャップであり、わかり合えない根本的な原因なのだと思う。

■現代への当てはめを、両側から。

では、どうすればいいのか、という問いである。

当然ながら、ギャップを生む社長側が悪いとか、そんな単純な話ではないはずである。

要は、50代の社長の持つ理想像を、今の20代にそのまま当てはめてしまうからこそ、上手くいかないのだという話である。

つまり、お互いが、時間的なラグを修正した上で、現代へと当てはめれば良いわけである。

年長側は、何十年かけて積み重ねたものに価値やノウハウが詰まっていることは間違いないので、それを体系化して整理し、時間的なラグを修正しながら現代に当てはめて伝えること。

若手側は、そこまでの過程での知見や考え方等はおおいに参考にした上で、それらを拝借し、時間的なラグを修正しながら現代に当てはめて実践すること。

その年代差があまりにあるということであれば、中間地点を作れば良い。中間層(ミドル)の出番である。

これらは物理的ではなく心理的な距離だからこそ、解消できるギャップである。

なお、具体的を一つだけ挙げるならば、ダイキン工業㈱の例が良いと思われる。

ダイキン工業㈱では、熟練工の技術を、現代にも残せるように、ITの力を使ってシステム構築を図り、技能伝承を行っているのだと言う。

つまり、過去の技術をそのまま伝えるのではなく、現代でも使えるように現代版にアレンジした上で伝えようとしているということである。

年代差があっても、共に進むべき大きな方向性は一致しているはずである。

ここを上手く現代に当てはめらたなら、年代差はマイナスではなく、寧ろプラスに代わるはずで、ギャップを乗り越えられれば数段強い組織になると思う。

■おわりに

たまたまの例で20代と50代を挙げたが、35歳である私自身はそのちょうど間だということに気が付いた。ミドルもミドルだったわけである。

仕事柄、ほぼ年上と接する機会に恵まれているが、顧問先の社長と若手新入社員の間に立つ年代になってきたということである。

世代間ギャップと言えば聞こえは悪いかもしれないが、上手く取り入れている会社組織もあるわけで、それこそ星のように消滅しては新しいものが生まれるという健全な新陳代謝もあるはずである。

満月が続いていて夜空を見挙げる機会も増えてきたここ数日だが、そんな思いを馳せて星を見てみるのも悪くないかもしれないと思わされたそんなお話でした。

それでは良き週末を!



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