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写真で辿る旅行記 vol.3 イスラエル 2010年

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#写真で辿る旅行記

男友達3人で決めた卒業旅行のテーマは「新婚旅行で絶対に行かない場所」というもの。そこからの細かな流れは覚えていないが、最終的にエジプト〜イスラエルを陸路で旅することに決めた。

エジプトからイスラエルに陸路で入る場合、シナイ半島のアカバ湾にあるエジプトのターバという街からイスラエルのエイラートに入国する。エイラートは縦長なイスラエルの一番南に位置しているから、死海やエルサレムに向かう場合はそこから北上することになる。

バスから見える景色の大半は荒凉とした岩と砂ばかりの風景。3大宗教の聖地がこの先にあるという実感があまり湧かないまま、エルサレムが近づいてきた。

城壁に囲まれたエルサレムの旧市街は4つの地区に分かれている。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、アルメニア人地区だ。この4つの地区は地図で見るよりも実際に歩くとその違いがよく分かる。

ユダヤ教の黒い衣装を纏った人が多いのがユダヤ教地区、土産物屋の店先に十字架が並ぶのがキリスト教地区、物量豊かなバザール風の店が立ち並ぶのがイスラム教地区、白と赤色が組み合わさった可愛らしい服を着た子供がいるのがアルメニア人地区。

全く文化の違う人々が、この城壁に囲まれた狭い土地に隣り合わせで暮らしているという事実は、10年経った今でもエルサレムの特色の一つとして強く記憶に残っている。

一方でいまだに後悔していることもある。なぜ訪れる前にエルサレムの歴史や文化に関してもっと勉強しておかなかったのか。美術館で見る宗教画や、本の中にエルサレムが出てくるたびに、自分はそこに行ったことがあるという満足感と、この知識を持って実在の街を眺めてみたかったという後悔が同時にやってくる。

目に見えるものは同じでも、そこに千年を超えて積み重ねられてきた歴史の地層を読み取れるかどうかの違いは大きい。

さて、エルサレムの見どころの一つに、ヴィア・ドロローサという道がある。ヴィア・ドロローサは、イエス・キリストが自ら十字架を背負ってゴルゴダの丘まで歩いた道。石畳の道が行き着く先は、ゴルゴダの丘の上に建てられた聖墳墓協会ということになる。

私もキリストが歩いたと言われる道のりを辿ったのだが、歩きながら、まだ普及し始めたころのiPhoneでその最初から最後までを撮影していた。当時は海外旅行に全く不慣れで、かつスマホで動画を撮るという行為がまだ市民権を得ていなかったので、動画を撮っていることがばれると怒られると思い、体の前にiPhoneを抱えるようにして撮った。

記憶は時間とともにその細部が失われていくけれど、動画は自分が見た光景をそのまま再現してくれる。今でもたまにこの動画を見ては、当時の興奮した気持ちを思い出すことがある。動画を撮っておいて本当に良かったと思う。

この写真は、ヴィア・ドロローサと合流する無数の道の中の一つを、ヴィア・ドロローサから見て撮った写真だ。石畳の細い道、急な坂、宗教的な衣装を着た女性、薄暗い光、というエルサレムの印象をバランスの取れた構図で撮影できている、とても好きな写真。これを見るたびに、もう一度ここを訪れる機会はあるのだろうかと考える。

写真で辿る旅行記 vol.3 イスラエル 2010年

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