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「新たなる”〇〇”に出会った」の災難。

駅のホームで電車を待っていると私のすぐ横に”ぴたり”と若い女性が並んできた。
年齢は20代前半くらいであろうか。
スーツ姿で長い黒髪を後ろで束ね、とても清楚そうな女性であった。

”ぴたり”と書くとまるで密着しているかのような表現だが、本当にお互いの服が付きそうなほどの”ぴたり感”だった。

通勤時間帯ではあるものの、いつも利用しているこの駅は急行が止まらないので、特に混雑をしているというわけではない。
普段から人もまばらだ。
なので、なぜこの若い女性がこんなにも私と距離を詰めてくるのか、最初はまったくの謎であった。

しかし、すぐに勘づいた。

「あ、私のことが好きなんだな」と。

そういうことには鋭いのですぐにわかってしまった。
好きな人には近づきたいというのは人間の性。
しょうがないことだ。

確かに私は178㎝の高身長に加え、スラリと伸びたキリンのように長い脚、”和製・シュワルツェネッガー”と呼ばれるほどの筋肉質な肉体、そして、ゆるキャラのようなユーモアに溢れた顔、まったくセットしていないボロボロの髪型、枯れた大地のようにカサカサとした肌、水質汚染によって死んだような魚の目・・・等々、生憎どれを取っても女性から惚れられる要素しか持ち合わせていない男である。

神はとんでもない罪な男を作り出してしまったものだ。


「かー、参った参った参ったなあー」
「まあ、でもあれよ、全然あれだけども、あれだけども」

などと色恋沙汰の妄想を膨らませていると、「もうすぐ電車が来ます」という駅構内アナウンスが流れた。

その瞬間だった。

その女性は、「あっ!」と何かを思いついたかのようにバックから手帳とペンを急いで取り出すと、そこに何かを書き出したのだ。

私は思った。

「これは、連絡先だな」と。
そういうことには鋭いのですぐにわかってしまった。
好きな人と常に連絡を取り合いたいというのは人間の性。
しょうがないことだ。

渡されたら、ちゃんと「ありがとう」って笑顔で言おう・・・。
そういえば、女性の前で笑うのは久しぶりだな・・・。
いや、女性と喋るのも久しぶりだな・・・ふへへへ。

そう思っていたのだが、そんな淡い予感は的中することなく電車が到着すると女性は何事もなかったかのように車両の端の方までそそくさと去って行ってしまった。

一体なんだったのだろう?

車内で一人悶々と色々な思考を巡らせた結果、「もしや、あの手帳に見えたものは”デスノート”だったのではないだろうか」という、ひとつの結論に辿り着いた。

彼女が「あっ!」と何かを思いついたようにしていたのは、きっとその瞬間に死神と”目の取引”でもしたのだろう。
死神と目の取引をすると”自らの寿命の半分と引き換えに相手の名前と寿命がわかってしまう”というデスノート界では最強の装備品だ。

きっと、その目を通じ私の名前を知ると「廻るファック、廻るファック!廻るドブくせぇ!廻る超キモイ!」とひたすらそのノートに書きこんでいたのではないだろうか。

「そうか、あれはデスノートだったんだ・・・」

そう考えると、なぜか心臓がドキドキしてきて、冬空だというのに電車の中で一人だけ異様に汗をかいてしまった。
心臓発作・・・その言葉が脳裏をよぎった瞬間であった。


その後、どうにか今日は死なずに過ごせたようだが、デスノートは死の時間も操れると聞くので、まだ安心はできないだろう。

もしも、これから私と音信が途絶えるようなことがあれば、「新たなキラが現れた、それは若い女性だ」ということをこのnoteを読んだ方には、是非とも世間に公表をしていただきたい。


では、よろしく頼む。



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